景観地区一覧と指定状況の全国調査

景観地区一覧と指定状況の全国調査

全国各地に指定されている景観地区の一覧と、その制度の仕組みや特徴について詳しく解説します。景観法に基づく地区指定の現状を知りたい方へ。

景観地区の一覧と指定状況

全国の景観地区概要
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指定地区数

全国で61地区が指定(2024年現在)

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都道府県別

沖縄県が最多の9地区、京都府が8地区

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指定面積

宮崎県が面積で全国最大規模

景観地区の指定地区一覧(地域別)

全国の景観地区は、令和7年3月31日時点で57地区(33市区町村)が指定されています。地域別の主要な指定地区は以下の通りです。
参考)https://www.mlit.go.jp/toshi/townscape/toshi_townscape_tk_000029.html

 

北海道・東北地域

  • 北海道:ヒラフ高原景観地区(倶知安町)、ニセコアンヌプリ・モイワ山山麓地区景観地区(ニセコ町)、富良野市で1地区
  • 岩手県:大慈寺地区(盛岡市)、平泉町景観地区(平泉町)、陸前高田市で1地区
  • 宮城県:定禅寺通景観地区、宮城野通景観地区(いずれも仙台市)

関東地域

  • 東京都:一之江境川親水公園沿線景観地区、古川親水公園沿線景観地区(江戸川区)など計5地区

    参考)https://kentokun-urbanlife.com/understand-landscape-districts/

     

  • 神奈川県:江の島地区、湘南C-X地区(藤沢市)、鎌倉景観地区、北鎌倉景観地区(鎌倉市)

中部地域

  • 静岡県:沼津市アーケード街美観地区(沼津市)、熱海市東海岸町景観地区(熱海市)
  • 岐阜県:グリーンランド柄山景観地区、テクノプラザ景観地区(各務原市)
  • 三重県:内宮おはらい町地区(伊勢市)

近畿地域
京都府が全国で2番目に多い8地区を指定しており、山ろく型美観地区、山並み背景型美観地区、岸辺型美観地区、旧市街地型美観地区、歴史遺産型美観地区、沿道型美観地区、市街地型美観形成地区、沿道型美観形成地区を設定しています。
兵庫県では芦屋市で芦屋景観地区、芦屋川南特別景観地区の2地区が指定されているほか、西宮市で1地区が指定されています。

景観地区指定の制度概要と要件

景観地区は景観法第61条に基づき、市街地の良好な景観の形成を図るために市町村が都市計画として決定する地域地区です。指定には都市計画区域または準都市計画区域内であることが要件となります。
参考)https://iqrafudosan.com/channel/landscape-district

 

景観地区の主な特徴は以下の通りです。

  • 強制力のある規制:市町村が強制力を持って建築物の形態や規模を規制でき、従わない場合は工事停止、是正命令、罰則が科せられます
  • 形態意匠制限の必須設定:建築物の形態意匠の制限を必ず定めることが義務付けられています

    参考)http://okugaikoukokusi.com/category1/entry25.html

     

  • 都市計画手続き:都市計画決定手続きを経て指定されます

景観地区で定められる規制内容は、必須事項と選択事項に分かれます。形態意匠の制限は必須事項として全ての景観地区で設定されますが、建築物の高さの最高・最低限度や敷地面積の最低限度などは選択的に定められます。

準景観地区との制度的な違いと特色

準景観地区は都市計画区域・準都市計画区域外の景観計画区域において、景観の保全を図るために指定される区域です。現在、準景観地区は全国で9地区(7市町)が指定されています。
参考)https://www.mizuho-re.co.jp/knowledge/dictionary/wordlist/print/?n=2397

 

主な指定地区は以下の通りです。

  • 岩手県平泉町:平泉町準景観地区
  • 和歌山県高野町:町石道周辺準景観地区、小辺路周辺準景観地区、他1地区
  • 福岡県宗像市:1地区

景観地区と準景観地区の主な違いは適用区域にあります。景観地区は都市計画区域内のみに指定可能ですが、準景観地区は都市計画区域外でも指定できるため、山間部や農村部などでも良好な景観保全が可能になります。
参考)https://www.howz-yamaken.co.jp/blog/20240116/

 

景観地区指定による規制内容と運用実態

景観地区内で建築等を行う場合、市町村長の認定を受ける必要があります。認定制度は届出制度よりも厳格で、事前に適合性を確認する仕組みとなっています。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%99%AF%E8%A6%B3%E5%9C%B0%E5%8C%BA

 

具体的な規制内容の例として、以下のような制限が設けられています。
建築物の形態意匠制限

  • 鎌倉市の景観地区では、周囲の建築物や街並み、自然との調和を重視した形態意匠基準を設定
  • 伊勢市内宮おはらい町地区では、伊勢神宮の門前町としての歴史的街並みを保持する規制

高さ制限や配置制限
景観地区では形態意匠制限以外にも、地区の特性に応じて建築物の最高・最低限度、壁面の位置、敷地面積の最低限度などを定めることができます。
参考)https://www.city.kiryu.lg.jp/shisei/machi/1018368/keikan/1007362.html

 

各市町村は地区の特性や景観に合わせて独自の規定を設けており、宿場町や城下町では和風建築に限定したり、自然豊かなエリアでは緑化率を規定するなど、地域固有の景観形成を図っています。

景観地区指定の全国的動向と今後の展望

景観地区の指定状況を都道府県別に見ると、沖縄県が9地区で最多、続いて京都府の8地区、東京都の5地区となっています。指定面積では宮崎県が最大で、えびの市での大規模指定が特徴的です。
景観地区制度の活用が進んでいる背景には、従来の美観地区制度との違いがあります。美観地区が既存の良好な景観の維持を目的としていたのに対し、景観地区では新たな良好な景観の形成を図ることができる点が大きな特徴です。
近年の傾向として、歴史的な街並み保全だけでなく、リゾート地域や新市街地における景観形成にも活用が広がっています。北海道のスキーリゾート地域や沖縄の観光地域での指定が増加しており、観光振興と景観保全を両立させる取り組みが注目されています。

 

景観まちづくりにおいては、住民参加による合意形成が重要な要素となっており、地域の価値観や特性を反映した基準づくりが求められています。今後も地域固有の景観資源を活かした指定が増加していくと予想されます。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/journalcpij/50/3/50_1090/_article/-char/ja/