
絶対高さ制限は、第一種・第二種低層住居専用地域および田園住居地域に適用される最も基本的な高さ制限です。この制限は建築物の高さを10m以下または12m以下に制限するもので、都市計画で定められた数値が適用されます。
世田谷区の例では、第一種低層住居専用地域では原則として10m以下、第二種低層住居専用地域では12m以下の高さ制限が設けられています。この制限により、低層住宅の住環境が保護され、周辺との調和が図られています。
絶対高さ制限の特徴。
興味深いことに、この制限は建築物の安全性だけでなく、街並みの景観保護にも重要な役割を果たしています。低層住宅地域の落ち着いた住環境を維持するため、突出した高さの建築物を抑制する効果があります。
道路斜線制限は、前面道路の採光・通風を確保し、道路両側の建物の日照環境を保護するための制限です。前面道路の反対側境界線から敷地に向かって一定の勾配で引かれる斜線内に建物を収める必要があります。
用途地域別の道路斜線制限。
道路斜線制限の計算では、高さの起点が前面道路の道路中心の高さとなり、1/8以下の屋上部分は12mを限度として高さから除外されます。建物が前面道路の境界線から後退して建てられる場合、後退距離分だけ斜線制限が緩和される仕組みになっています。
制限を受ける範囲は容積率によって決まり、200%以下では20m、200%超300%以下では25m、300%超では30mの範囲で制限が適用されます。角地の場合は、それぞれの道路から斜線制限を受けるため、より複雑な計算が必要になります。
隣地斜線制限は、隣地の日照・通風・採光を確保するための制限で、第一種・第二種中高層住居専用地域以上の用途地域に適用されます。隣地境界線に20mの垂直線を引き、その上端から1:1.25の斜線内に建物を収める必要があります。
商業・工業系用途地域では、31mの垂直線を引き、その上端から1:2.5の斜線内という、より緩やかな制限が適用されます。高さの起点は地盤面で、1/8以下の屋上部分は12mを限度として高さから除外されます。
北側斜線制限は、建物北側の土地の日照を確保するための制限で、第一種・第二種低層住居専用地域と第一種・第二種中高層住居専用地域に適用されます。
北側斜線制限の詳細。
北側斜線制限の特徴として、道路斜線制限や隣地斜線制限と異なり、階段室や昇降機械室などの屋上部分も制限を受ける点があります。これは北側の日照確保がより重要視されているためです。
日影規制は、3階建て以上の建物が冬至日に生じる日影を一定時間内に抑える規制です。中高層建築物によって周辺の居住環境を保護することを目的としており、各自治体の条例で対象地域が指定されています。
日影規制の測定方法は独特で、冬至日の真太陽時による日影を基準とします。測定面は平均地盤面から1.5m(第一種・第二種低層住居専用地域等)または4m(その他の地域)の高さに設定されます。
規制の内容。
実務では、日影規制により建物の配置や形状が大きく制約される場合があります。特に北側に低層住宅がある場合、建物の北側部分を大幅にセットバックする必要が生じることもあります。
近年、コンピューターシミュレーションによる日影計算が一般的になり、設計段階での詳細な検討が可能になっています。ただし、隣地の将来的な開発計画も考慮した慎重な計画が求められます。
天空率は、建築基準法の斜線制限を緩和する制度として平成15年に導入されました。ある点から天空を見上げたとき、建物により隠れる部分を除いた天空が見える割合を指します。
天空率による緩和の仕組み。
この制度により、従来の斜線制限では実現困難だった建築計画が可能になる場合があります。特に都市部の狭小敷地や変形敷地において、より効率的な建築計画が立案できます。
世田谷区では、絶対高さ制限における特例制度も設けられています。敷地内緑化や壁面後退距離の確保など、市街地環境の向上に資する建築物に対して高さの緩和を認める「規制と誘導」の仕組みです。
特例制度の種類。
これらの特例制度を活用することで、地域の環境向上に貢献しながら、より柔軟な建築計画が可能になります。ただし、各自治体によって制度の詳細が異なるため、事前の確認が不可欠です。
建築基準法における高さ制限の詳細な解説
https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201
世田谷区の建築物高さ制限に関する具体的な運用基準
https://www.city.setagaya.lg.jp/documents/3853/8363-1.pdf
建築物の高さ算定方法に関する技術的解説
https://kansa.bvjc.com/column/2025/250307.html