航空機抵当法とは何か

航空機抵当法とは何か

航空機に抵当権を設定するための法律として制定された航空機抵当法の全貌を解説します。どのような特徴と効力を持つ法律なのでしょうか?

航空機抵当法の概要と特徴

航空機抵当法の概要
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法的位置づけ

航空機に関する動産信用の増進により、航空の発達を図る特別法

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対象航空機

航空法に基づき登録された飛行機と回転翼航空機が対象

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担保制度

占有を移転せずに航空機を担保として利用できる制度

航空機抵当法の制定背景と目的

航空機抵当法(昭和28年法律第66号)は、航空機に関する動産信用の増進により、航空の発達を図ることを目的として制定された法律です 。この法律は1953年(昭和28年)7月20日に公布され、同年10月1日から施行されています。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%88%AA%E7%A9%BA%E6%A9%9F%E6%8A%B5%E5%BD%93%E6%B3%95

 

制定の背景には、戦後の航空産業復興期において、高額な航空機の調達に際して金融機関からの資金調達を容易にする必要があったことが挙げられます。航空機は動産でありながら高額であり、従来の動産担保では占有移転が必要でしたが、航空機の性質上占有移転は現実的ではありませんでした 。
参考)https://www.weblio.jp/content/%E8%88%AA%E7%A9%BA%E6%A9%9F%E6%8A%B5%E5%BD%93%E6%B3%95

 

この法律により、航空機を占有を移転することなく抵当権の目的とすることが可能となり、航空事業者の資金調達環境が大幅に改善されました。これは航空機の特殊性を考慮した画期的な制度として評価されています 。
参考)https://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk1_000034.html

 

航空機抵当法による抵当権設定の仕組み

航空機抵当法に基づく抵当権設定は、民法の抵当権とは異なる特別な手続きが定められています。抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移さないで債務の担保に供した航空機について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受けることができます 。
参考)https://hourei.net/law/328AC0000000066

 

抵当権の対象となる航空機は、航空法第2章の規定による登録を受けた飛行機及び回転翼航空機に限定されています。これらの航空機のみが抵当権の目的とすることができ、グライダーや気球などは対象外となります 。
抵当権の効力は、抵当航空機に付加して一体となっている物にも及びます。ただし、設定行為に別段の定めがある場合や、詐害行為取消請求ができる場合は除外されます 。

航空機抵当権の登録手続きと対抗要件

航空機抵当権の得喪及び変更は、航空法に規定する航空機登録原簿に国土交通大臣が行う登録を受けなければ、第三者に対抗することができません 。この登録制度により、抵当権の公示機能が確保されています。
参考)https://lawzilla.jp/law/328AC0000000066?n=ln5.1amp;mode=only

 

登録申請は、登録権利者(債権者)と登録義務者(所有者)の共同申請により行われます。申請には抵当権設定契約書の原本と写し、印鑑証明書委任状などの書類が必要です 。登録免許税は債権金額の1000分の3が課税され、標準処理期間は受理後7日間となっています 。
参考)https://www.mlit.go.jp/common/001396169.pdf

 

登録された抵当権は、航空機登録原簿に記載され、これにより第三者に対する対抗力が付与されます。登録制度により、航空機の権利関係が明確化され、取引の安全性が確保されています 。
参考)https://www.mlit.go.jp/koku/15_bf_000726.html

 

航空機抵当法と民法抵当権との違い

航空機抵当法は民法の抵当権制度をベースとしながらも、航空機の特殊性を考慮した独自の規定を設けています。最も大きな違いは、動産である航空機に対して占有を移転することなく抵当権を設定できる点です 。
参考)https://kotobank.jp/word/%E8%88%AA%E7%A9%BA%E6%A9%9F%E6%8A%B5%E5%BD%93-1313325

 

物上代位については、抵当航空機の売却、賃貸、滅失又は毀損によって抵当権設定者が受けるべき金銭その他の物に対しても抵当権を行使できます。ただし、その払渡又は引渡前に差押をしなければならないという要件があります 。
また、航空機の特殊性から、航空法第8条第1項第3号に該当して抹消登録がなされる場合の特別な規定があります。国土交通大臣は抵当権者に通知義務があり、抵当権者は通知を受けた日から3ヶ月以内に権利実行の手続きを行うことができます 。

航空機抵当法の実務的活用と注意点

航空機抵当法は航空機ファイナンスの分野で重要な役割を果たしています。航空機リースや航空機購入資金の調達において、この法律に基づく抵当権設定が広く活用されています。特に高額な商用航空機の調達では、金融機関の融資条件として抵当権設定が求められることが一般的です 。
参考)http://www.seno-sah.com/write_pdf/write0004.pdf

 

実務上の注意点として、抵当権は飛行機と回転翼航空機にのみ設定可能で、その他の航空機(グライダー、気球等)は対象外である点があります。また、質権設定は航空機抵当法第23条により禁止されているため、担保設定は抵当権によらなければなりません 。
根抵当権の設定も可能であり、継続的な取引関係における包括的な担保として活用されています。ただし、根抵当権の場合は極度額の設定や債権の範囲の明確化など、通常の抵当権とは異なる注意点があります 。
航空機抵当法は、航空産業の発展と安全な取引環境の構築において欠かせない法制度として機能しており、今後も航空機関連の金融取引において重要な役割を担い続けることが予想されます。