耕作権と永小作権の違い

耕作権と永小作権の違い

不動産に関わる権利として、耕作権と永小作権の違いを理解することは宅建試験対策において重要です。これらの権利は土地の使用目的や法的性質に大きな違いがあり、現在の実務でも異なる取り扱いがされています。耕作権と永小作権の違いとは何でしょうか?

耕作権と永小作権の違い

耕作権と永小作権の違い
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永小作権(物権)

小作料を支払って他人の土地で耕作・牧畜する物権。存続期間は20年以上50年以下で登記可能

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小作権(債権)

賃貸借契約により農地を使用収益する債権的権利。農地法の適用を受ける

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法的性質の違い

物権としての永小作権は排他性を持ち、債権としての小作権は特定の相手方に対する権利

耕作権の意味と物権・債権による分類

耕作権とは、農地の所有者(地主)に小作料(地代)を支払うことによって、その農地で耕作または牧畜できる権利のことです 。民法における耕作権は、物権である「永小作権」と債権である「賃借小作権(小作権)」 に分類されており、この権利関係には大きな違いがあります 。[1][2]
現在のわが国において、永小作権が設定されている農地はほとんど無いことから、相続土地評価において「耕作権」といえば、賃借権である賃借小作権のことを指すことが一般的となっています 。農地法改正により、近年は「小作」という言葉が削除されましたが、改正前は「所有権以外の権原に基づいて、農地を耕作に利用すること」全般を小作と呼んでいました 。
参考)http://www.hayashi-zeimukaikei.jp/article/14068488.html

 

永小作権の物権としての特徴と権利内容

永小作権(えいこさくけん)とは、小作料を支払って他人の土地において耕作又は牧畜をする権利で、民法第270条以下に規定されている物権です 。永小作権は物権であるため排他性を持ち、土地の所有権に準じる強い権利として扱われます 。[5][6][7]
永小作権の存続期間は20年以上50年以下と民法で定められており、設定行為で存続期間を定めなかった場合は30年となります 。永小作人は永小作権を他人に譲渡したり、存続期間内において土地を賃貸することができますが、設定行為で禁止されている場合はこの限りではありません 。
参考)https://www.token.co.jp/estate/useful/archipedia/word.php?jid=00013amp;wid=03668amp;wdid=01

 

永小作権は登記することができ、第三者に対して永小作権を主張するには登記が必要となります 。また、永小作権への抵当権設定も可能であり、住宅ローンなどの担保にすることができます 。
参考)https://www.baikyakuoh.biz/glossary/%E6%B0%B8%E5%B0%8F%E4%BD%9C%E6%A8%A9-2/

 

小作権の債権としての性質と農地法の規制

賃借権としての小作権(賃借小作権)は、民法だけでなく農地法にも規定されており、債権的な権利として位置づけられています 。小作権が設定された場合、農地の権利移動の制限、賃貸借の対抗力、賃貸借の更新、賃貸借の解約等の制限といった効果があります 。[4]
農地法では、小作権を保護するため、小作権を設定・移転するためには原則として市町村の農業委員会または都道府県知事の許可を要するものとし、小作契約が賃貸借である時は、その解除などについても原則として都道府県知事の許可を必要としています 。
農地の権利移動の制限については農地法第3条で規定されており、賃借権やその他の使用・収益を目的とする権利を設定・移転する際は、当事者が農業委員会の許可を受けなければなりません 。
参考)https://lab.iyell.jp/knowledge/realestate/15min-series_agricultural_land_act/

 

永小作権と小作権の実務上の使用頻度の違い

1952年(昭和27年)に農地法が制定されるまでは、地主が小作人に小作地を使用させることが一般的でしたが、同法制定後は永小作権の設定はほとんど無くなりました 。現在では農地を賃貸借する形が一般的となっており、永小作権が設定されている例は少ないとされています 。[14][5][6]
今日の小作関係のほとんどは賃借権の設定による賃借小作権であり、永小作権は昨今、ほとんど利用されていない権利と言われています 。永小作権よりも農地の賃貸借で支障がないことから、永小作権を登記する例はほとんどありません 。
参考)https://hamamatsu-souzokuzei.com/case/case-2460/

 

宅建試験においても永小作権の出題可能性は非常に低く、存続期間の定めが20年以上50年以下(定めなかったときは30年)、小作料の支払い義務があるという点を理解しておく程度で十分とされています 。
参考)https://ss-up.net/yeiko.html

 

耕作権が現代の不動産取引に与える影響

現在の不動産取引において、農地の売買や転用を検討する際は農地法の規制が重要な要因となります 。田や畑など農地を売買・贈与等する場合は、農業委員会や都道府県の許可が必要であり、農地の所有権移転登記を法務局へ申請するには、原則として農地法に基づく許可書を提供しなければなりません 。[18]
農地法第3条許可は、農地や採草放牧地をそのままで売買したり、賃貸したりするなど、権利を移動させる際に必要となる許可です 。一般の個人が将来的に宅地化を考えている農地を購入しようとする場合、耕作目的での取得ではないため、原則として農地法第3条許可は得られません 。
住宅販売事業者が「将来、宅地にできますよ」と安易に案内することは、農地法の趣旨に反する可能性があるため、十分な注意が必要です 。農地の転用についても原則として都道府県知事等の許可が必要であり、転用については農地の所在する市町村の農業委員会に相談する必要があります 。
参考)https://www.maff.go.jp/j/keiei/koukai/nouchi_souzoku.html