
公正証書遺言の作成における基本的な費用構造は、財産価額に応じて段階的に設定されています。不動産業従事者として理解しておくべき重要な料金体系をご説明します。
財産価額別手数料一覧
この手数料計算で注意すべき点は、遺言者の総財産額ではなく、各受益者が取得する財産価額ごとに計算することです。例えば9,000万円の財産を子供3人で分割する場合、1人あたり3,000万円として23,000円×3人分=69,000円の手数料となります。
不動産価額の評価においては、固定資産税評価額や路線価を基準とすることが一般的で、実際の市場価格とは異なる場合があります。これは顧客へ説明する際に重要なポイントです。
公正証書遺言には、基本手数料に加えて「遺言加算」という特別な手数料が設定されています。財産額が1億円までの場合、基本手数料に11,000円が加算されます。
枚数による追加手数料
通常、公正証書遺言は以下の3部が作成されます。
✅ 原本(公証役場保管用)
✅ 正本(遺言執行者用)
✅ 謄本(相続人用)
複雑な不動産の分割や多数の相続人がいる場合、遺言書の枚数が増加し、追加費用が発生することを顧客に事前に伝えることが重要です。
実際の費用例として、5,000万円の不動産を配偶者に相続させる場合。
基本手数料43,000円+遺言加算11,000円=54,000円(謄本費用除く)となります。
高齢者や病気により公証役場への来庁が困難な場合、公証人の出張サービスを利用できます。不動産業従事者が知っておくべき出張費用は以下の通りです。
出張時の費用構成
出張場所は遺言者の自宅、病院、介護施設などが可能で、特に高額な不動産を所有する高齢者にとって重要なサービスです。
証人に関する費用
公正証書遺言には2名の証人が必要で、以下の方は証人になれません。
❌ 未成年者
❌ 推定相続人とその配偶者・直系血族
❌ 受遺者とその配偶者・直系血族
公証役場に証人の手配を依頼する場合、1名あたり3,000円~10,000円程度の謝礼が必要です。司法書士や行政書士などの専門家を証人にする場合は、より高額になることもあります。
不動産業従事者として顧客にアドバイスする際、他の遺言方式との費用対効果を理解することが重要です。
遺言方式別費用比較表
遺言方式 | 作成費用 | 保管費用 | 検認費用 | 安全性 |
---|---|---|---|---|
自筆証書遺言 | 無料 | 3,900円/年 | 800円程度 | ⭐⭐ |
公正証書遺言 | 5~15万円 | 無料 | 不要 | ⭐⭐⭐⭐⭐ |
秘密証書遺言 | 11,000円 | 自己負担 | 800円程度 | ⭐⭐⭐ |
公正証書遺言は初期費用は高額ですが、以下の長期的メリットがあります。
✅ 法的有効性の確実性
✅ 検認手続き不要
✅ 紛失・改ざんリスクなし
✅ 遺言執行の円滑化
特に高額な不動産を扱う場合、相続トラブルによる損失を考慮すると、公正証書遺言の費用対効果は非常に高いといえます。
不動産業従事者が顧客に提案できる、合法的な費用節約方法をご紹介します。ただし、節約のために法的安全性を損なうことは避けるべきです。
効果的な費用節約方法
予備的条項による費用増加の注意
例:「Aに土地を相続させる。Aが先に死亡した場合はBに相続させる」という予備的条項を設けると、同じ土地が2回カウントされ、手数料が倍増します。
司法書士・行政書士活用のメリット
専門家による文案作成費用(2万円~20万円)は別途必要ですが、以下のメリットがあります:
✅ 法的不備の回避
✅ 税務上の最適化
✅ 複雑な不動産分割の整理
✅ 公証役場での手続き代行
実際の事例として、3,000万円の不動産を持つ70歳の方が、司法書士に依頼して公正証書遺言を作成した場合。
この投資により、相続時の争いを防ぎ、円滑な不動産承継が実現できます。
日本公証人連合会の公式手数料表
公正証書遺言の正確な手数料計算に必要な公式情報が掲載されています。
公正証書遺言の詳細な手数料計算例
実際の財産額に応じた手数料計算の具体例が豊富に紹介されています。