
共同根抵当権は、数個の不動産について同一の極度額で不特定の債権を担保する権利です。この制度では、複数の不動産が一つのチームとして機能し、同一の極度額の範囲内で担保責任を果たします。
設定時には以下の条件が必要となります。
例えば、A不動産とB不動産の両方に極度額1,000万円の共同根抵当権を設定した場合、債権者は各不動産の価額に応じて按分配当を受けることになります。これは複数の不動産が協力して一つの債務を担保する「チームプレー型」の仕組みといえるでしょう。
累積根抵当権は、それぞれの不動産について独立した根抵当権を設定し、各不動産の極度額まで優先弁済を受けることができる制度です。民法では、数個の不動産を担保する根抵当権の原則的な扱いとして累積根抵当を採用しています。
累積根抵当権では以下の特徴があります。
具体例として、A不動産に極度額1,000万円、B不動産に極度額2,000万円の根抵当権を設定した場合、債権者は合計3,000万円まで担保価値を積み上げることができます。
登録免許税の違いは実務上重要な選択要因となります。共同根抵当権では一つの極度額に対してのみ課税されるのに対し、累積根抵当権では各不動産の極度額それぞれに課税されます。
共同根抵当権の税額計算
累積根抵当権の税額計算
このように、累積根抵当権は共同根抵当権と比べて登録免許税が高額になるデメリットがあります。特に複数の不動産で高額な極度額を設定する場合、税負担の差は顕著に現れます。
共同根抵当権では、一つの不動産について元本確定事由が発生すると、他のすべての不動産についても自動的に元本が確定するという重要な特徴があります。これは共同根抵当権の「一体性」から生じる効果です。
実務上の注意点として以下があります。
また、共同根抵当権では「共同担保として」の登記が必須であり、この登記を欠くと累積根抵当権として扱われることになります。登記実務では、各不動産の登記記録に明確に共同担保である旨を記載することが求められます。
累積根抵当権は登録免許税が高額になる一方で、担保戦略上の柔軟性に優れています。特に不動産の担保価値や融資条件が異なる場合、累積根抵当権の方が実務に適している場合があります。
戦略的活用場面
例えば、製造業の事業者が工場用地(高額)と倉庫用地(低額)を担保とする場合、それぞれの価値に応じて異なる極度額を設定することで、より効率的な担保活用が可能となります。
また、累積根抵当権では各不動産が独立しているため、一つの不動産で元本確定事由が発生しても、他の不動産の根抵当権には影響しません。これにより、部分的な担保管理や段階的な担保解除といった柔軟な運用が実現できます。
実務では、担保価値の総額、将来の追加融資予定、税負担、管理の複雑さなどを総合的に検討して選択することが重要です。特に継続的な取引関係において長期間の担保設定を予定している場合は、これらの要素を慎重に比較検討する必要があります。