供託手続 宅建業者必見営業保証金完全ガイド

供託手続 宅建業者必見営業保証金完全ガイド

宅建業を始める際に必要な供託手続きから営業保証金の詳細まで、知っておくべき重要なポイントを徹底解説。あなたは正しい手続きを理解していますか?

供託手続宅建業者向け完全ガイド

宅建業者の供託手続き完全ガイド
📋
営業保証金の基本手続き

本店1000万円、支店500万円の供託から届出まで

🏢
保証協会加入時の手続き

弁済業務保証金分担金の納付から開業まで

⚠️
手続きの注意点

見落としがちなポイントと対策方法

供託所での営業保証金基本手続き

宅建業を開始するために最も重要な手続きが営業保証金の供託です。供託所は一般的に法務局・地方法務局となり、宅建業者は事業開始前に必ず本店最寄りの供託所で手続きを行う必要があります。

 

営業保証金の金額体系

  • 主たる事務所(本店):1,000万円
  • その他の事務所(支店・営業所等):500万円×事務所数

例えば、本店に加えて支店が3つある場合、合計2,500万円もの大きな金額を供託しなければなりません。この金額は国土交通大臣免許や都道府県知事免許に関係なく一律で適用されます。

 

具体的な手続きの流れ

  1. 開業申請の実施:都道府県知事から免許通知が届いた後、本店最寄りの供託所で開業申請を行います
  2. 営業保証金の納付:開業申請完了後、同じ供託所で営業保証金を納付します
  3. 供託書の写しの提出:免許通知日から3ヶ月以内に、事務所所在地の都道府県知事に供託書の写しを提出します

営業保証金は現金だけでなく、国債証券や地方債証券などの有価証券でも納付可能です。ただし、有価証券の場合は額面金額に対して一定の割合で評価されるため、事前に供託所で確認することが重要です。

 

支店を後から増設する場合も、営業開始前に必ず500万円を追加供託する必要があります。この手続きを怠ると営業することができないため、事業拡大時は十分な資金計画が必要です。

 

保証協会加入時の弁済業務保証金手続き

営業保証金の代わりに保証協会に加入する選択肢があります。この方法では大幅に少ない金額で営業を開始できるため、多くの宅建業者が選択しています。

 

弁済業務保証金分担金の金額

  • 本店:60万円
  • 支店:30万円×事務所数

営業保証金と比較すると、本店だけであれば1,000万円から60万円と約94%もの削減が可能です。ただし、補償金額は営業保証金を供託した場合と同額の上限1,000万円を受け取ることができるため、安心です。

 

主要な保証協会

加入手続きの詳細な流れ

  1. 保証協会の選択:上記4つの主要協会から一つを選択します
  2. 入会資格審査:選択した協会による審査が実施されます
  3. 弁済業務保証金分担金の納付:審査通過後、協会に分担金を納付します
  4. 協会による供託:協会が業者からの分担金をまとめて法務局に供託します

保証協会経由の手続きでは、個別に法務局で手続きする必要がなく、協会が代行してくれるメリットがあります。また、協会では業界情報の提供や研修なども実施しているため、事業運営面でのサポートも期待できます。

 

ただし、保証協会を退会する場合は営業保証金の直接供託に切り替える必要があり、その際は3ヶ月以内に1,000万円を準備しなければならない点に注意が必要です。

 

営業保証金還付請求の詳細手続き

営業保証金は宅建業者と取引した一般消費者が損害を受けた場合に、債権の弁済を受けるために使用されます。還付請求が発生した場合の手続きは複雑で、宅建業者側にも重要な義務が発生します。

 

還付請求時の手続きフロー

  1. 取引者による還付請求:宅建業者と取引した者が供託所に還付請求を行います
  2. 供託所による審査:供託所が請求内容を審査し、適正であれば還付を実行します
  3. 免許権者への通知:供託所が免許権者に「○○万円を還付しました。○○万円分の営業保証金が不足しています」と通知します
  4. 宅建業者への通知:免許権者が宅建業者に不足分の供託を指示します
  5. 不足額の供託:宅建業者は通知から2週間以内に不足分を供託しなければなりません
  6. 供託完了の届出:供託後2週間以内に免許権者に届出を行います

宅建業者が注意すべきポイント
還付が発生した場合、宅建業者は迅速な対応が求められます。特に2週間という期限は法的拘束力があり、遅延すると業務停止処分の対象となる可能性があります。

 

また、還付請求は宅建業者間の取引では適用されず、あくまで一般消費者を保護するための制度である点も重要です。つまり、業者間取引でトラブルが発生しても営業保証金からの弁済は受けられません。

 

廃業時の営業保証金取り戻しについては、債権申出期間の公告を行い、債権の申出がない証明を取得する必要があります。この手続きには相当な時間がかかるため、廃業を検討する際は早めの準備が必要です。

 

宅建業者が見落としがちな供託手続きの落とし穴

供託手続きには多くの宅建業者が見落としがちな重要なポイントがあります。これらを理解していないと、思わぬペナルティを受ける可能性があります。

 

期限管理の落とし穴
最も危険なのが期限の管理不備です。免許通知から供託書の写し提出まで3ヶ月という期限がありますが、この期間を過ぎると免許が失効する可能性があります。特に年末年始や大型連休を挟む場合は、官公庁の営業日を考慮した計画が必要です。

 

支店開設時の手続き漏れ
既存の宅建業者が支店を開設する際、営業開始前の500万円供託を忘れがちです。「既に本店で営業しているから大丈夫」と思い込み、支店での営業を開始してしまうケースが散見されます。これは宅建業法違反となり、業務停止処分の対象となります。

 

有価証券による供託時の評価額誤解
営業保証金を有価証券で納付する場合、額面金額がそのまま評価されるわけではありません。国債であっても一定の割合で評価されるため、必要額を満たすためには額面以上の有価証券が必要になる場合があります。

 

保証協会退会時の準備不足
保証協会を退会して営業保証金による供託に切り替える場合、3ヶ月以内に1,000万円を準備する必要があります。この資金調達に失敗すると営業停止となるため、十分な資金計画が必要です。

 

地方での供託所選択ミス
地方では法務局の支局や出張所が限られるため、「最寄り」の解釈を間違えるケースがあります。事前に管轄する法務局を正確に確認し、アクセス方法も含めて調査しておくことが重要です。

 

これらの落とし穴を避けるために、手続き前には必ず専門家への相談や、同業者との情報交換を行うことをお勧めします。

 

重要事項説明書での供託所説明義務

宅建業者には取引時に供託所等に関する説明義務があります。この説明は重要事項説明とは別の義務であり、多くの業者が詳細を理解していない重要な制度です。

 

説明義務の詳細
説明対象者は売主・買主・貸主・借主・交換の場合はその双方となります。ただし、宅建業者間での取引の場合は説明不要です。説明は契約成立までの間に行う必要がありますが、重要事項説明には含まれていません。

 

説明内容の具体例
保証協会に加入している場合は、保証協会名と供託所の名称・所在地を説明します。保証協会に加入していない場合は、供託所の名称と所在地のみを説明します。

 

説明方法の特徴
この説明には以下の特徴があります。

  • 宅建士でなくても説明可能
  • 場所の制限なし
  • 書面交付は不要(口頭でも可)
  • 重要事項説明書への記載は必要

説明の実務的なポイント
重要事項説明書の1ページ目に記載されることが一般的ですが、お客様に対してその意味を正しく説明できる業者は少ないのが現状です。「万が一のトラブル時に、お客様の損害を補償するためのお金を法務局に預けています」といった分かりやすい説明が求められます。

 

補償内容の正確な説明
保証協会加入業者の場合、分担金は60万円と少額ですが、補償される金額は上限1,000万円であることを正確に説明する必要があります。この点を誤解しているお客様が多いため、丁寧な説明が信頼関係構築につながります。

 

説明義務を怠った場合の直接的なペナルティはありませんが、トラブル発生時にお客様から「説明を受けていない」とクレームを受ける可能性があります。適切な説明は事業者の信頼性向上にも寄与するため、軽視せずに取り組むことが重要です。

 

また、この説明は宅建業法で定められた義務であるため、社内研修等で全スタッフが正確な知識を共有しておくことが望ましいでしょう。