
1LDKマンション投資市場は近年大きな変化を遂げています。新型コロナウィルスの感染拡大により在宅ワークが普及し、自宅で過ごす時間が増加したことで、ワンルームでは手狭に感じる入居者が増えています。
特に注目すべきは、テレワークの定着により書斎や作業スペースとしての需要が高まっている点です。リビングダイニングキッチンに加えて独立した一部屋があることで、生活空間と仕事空間を分けることができ、現代のライフスタイルに適合した間取りとして評価されています。
市場データを見ると、1LDKマンションの物件数はワンルームマンションと比較して相対的に少ないのが現状です。これは供給不足を意味し、立地条件の良い場所では競合物件が少ないため、高い入居率を維持しやすいという投資家にとってのメリットにつながっています。
また、人々のライフスタイルの変化も1LDK需要を押し上げています。長期間独身を貫く人や、夫婦二人だけの生活を望む世帯が増加しており、従来のワンルームでは満足できない層が1LDKを選択する傾向が強まっています。
1LDKマンション投資の最大の魅力は、ワンルームマンションを上回る収益性にあります。物件価格は3,500〜5,000万円程度とワンルームの1,500〜2,500万円より高額ですが、賃料も相応に高く設定できるため、一区画あたりの収益性では優位性を発揮します。
利回りの観点では、1LDKマンションはワンルームマンションよりもやや高い水準を維持している物件が多く見られます。これは専有面積が広い分、賃料単価を高く設定できることが主な要因です。
入居期間の長さも収益性に大きく影響します。ワンルームマンションの入居者は主に学生や若い単身者で、就職・転勤・結婚などを機に退去する可能性が高く、入居期間は比較的短期間です。
一方、1LDKマンションの入居者は資金に余裕のある単身者や共働き世帯が中心となり、若者世代と比較して入居期間が長期化する傾向にあります。長期入居により安定した家賃収入を確保でき、退去時の原状回復費用や次の入居者募集にかかる手間とコストを削減できます。
収益性を数値で比較すると、以下のような特徴があります。
1LDKマンション投資には多くのメリットがある一方で、投資家が理解しておくべきリスクと注意点も存在します。
最も重要なリスクの一つが、リフォーム費用の高さです。1LDKマンションはワンルームと比較して専有面積が広いため、フローリングの貼り替えやクロスの貼り替えが必要になる面積も拡大します。原状回復費用や経年劣化による修繕費用が高額になる傾向があり、リフォーム時にすぐに対応できるよう、多めの現金を準備しておく必要があります。
税制面では、短期売買による譲渡所得税の負担が重要な注意点です。不動産を取得から5年以内に売却した場合、短期譲渡所得として約40%の税率が適用されます。一方、5年以上保有した場合の長期譲渡所得の税率は20%程度です。
例えば1,000万円の売却益が生じた場合。
このように、わずか1年の違いで200万円もの差が生じるため、売却タイミングの戦略的な判断が求められます。
また、入居者がいる状態では住宅として売却することができず、オーナーチェンジ物件として投資家にのみ売却可能となります。入居者退去と売却タイミングが合わない場合、居住目的の購買層をターゲットにできないという制約があります。
物件選択の難しさも課題の一つです。1LDKマンションは物件数が少ないため、ワンルームマンションと比較して選択肢が限られ、比較検討が困難な場合があります。
1LDKマンション投資において、出口戦略は投資成功の鍵を握る重要な要素です。特に売却時のターゲット層の広さが、1LDK投資の大きなアドバンテージとなります。
ワンルームマンションの売却時には、買い手は不動産投資を目的とした投資家に限定されます。しかし1LDKマンションの場合、投資目的の投資家に加えて、居住目的で購入を検討する個人もターゲットに含めることができます。
居住目的での購入者は、不動産投資ローンよりも金利の安い住宅ローンを利用できるため、投資目的の購入者よりもローン返済が容易になります。この結果、1LDKマンションの売却価格を高めに設定しても売却できる可能性が高まります。
近年のマンション価格上昇も1LDK投資の追い風となっています。国土交通省の「不動産価格指数」によると、マンション(区分所有)の価格は2010年と比較して1.8倍にまで高騰しています。
地域別の価格上昇率(2010年を100とした場合の2022年4月期)。
都市部でのマンション価格上昇傾向は今後も継続すると予想され、住宅としての需要も相まって、1LDKマンションの売却時にはワンルームマンションよりも高い売却益を期待できる環境が整っています。
売却戦略を成功させるためのポイント。
1LDKマンション投資において、立地選定は投資成功を左右する最も重要な要素の一つです。特に物件数が限られている1LDK市場では、競合分析に基づいた戦略的な立地選択が求められます。
立地条件の良い場所では、ライバルとなる1LDK物件が少ないため客付けしやすいという特徴があります。これは1LDKマンションの供給数がワンルームマンションと比較して少ないことに起因しています。
マンションデベロッパーの視点から見ると、同じ敷地面積でより多くの戸数を確保できるワンルームマンションの方が、坪単価が高く設定でき、総販売戸数も多くなるため利益率が高くなります。この結果、市場には1LDKマンションよりもワンルームマンションが多く供給される傾向にあります。
投資家にとってこの供給不足は、適切な立地を選択できれば競合優位性を確保できることを意味します。特に以下のような立地条件を満たす物件は、高い入居率と安定した収益を期待できます。
競合分析では、同一エリア内の1LDK物件の賃料水準、空室率、築年数、設備仕様などを詳細に調査し、自身の投資物件の競争力を客観的に評価することが重要です。
また、ターゲット層の分析も欠かせません。1LDKマンションの入居者は、単身者、夫婦二人世帯、未就学児のいる三人家族など多様です。エリアの人口構成や世帯構造を分析し、どの層をメインターゲットとするかを明確にした上で、そのニーズに合致した物件を選択することが成功の鍵となります。
立地選定における意外な盲点として、将来的な人口動態の変化があります。現在は需要が高いエリアでも、少子高齢化の進行により将来的に需要が減少する可能性があります。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口などを参考に、長期的な視点での立地評価を行うことが重要です。