専有面積計算の基本から実践まで不動産従事者必見ガイド

専有面積計算の基本から実践まで不動産従事者必見ガイド

専有面積の計算方法には壁芯面積と内法面積の2種類があり、それぞれ異なる測定基準を持ちます。賃貸と売買で使い分けられる計算方法の違いを理解し、正確な面積算出ができていますか?

専有面積の計算方法

専有面積計算の基本知識
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壁芯面積による計算

壁の厚みの中心線から内側を測定する方法で、分譲マンションの広告で主に使用

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内法面積による計算

壁の内側のみを測定する実際の居住スペースで、賃貸物件で一般的

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面積換算の実践

平方メートルから畳数・坪数への変換方法と活用シーン

専有面積の壁芯面積と内法面積の違い

専有面積の計算には「壁芯面積」と「内法面積」という2つの異なる測定方法があります。この違いを正確に理解することは、不動産従事者にとって極めて重要です。

 

壁芯面積(かべしん・へきしん面積)

  • 壁の厚みの中心線から内側を専有面積として計算
  • 壁の厚み半分が面積に含まれるため、実際の居住スペースより広く表示
  • 分譲マンションの広告やパンフレットで主に採用
  • 建設中の物件販売時に使用されることが多い

内法面積(うちのり面積)

  • 壁の内側のみを測定した実際の居住スペース
  • 登記簿謄本に記載される正式な面積
  • 賃貸物件の広告で一般的に使用
  • 実際に使用できる面積と一致するため精度が高い

壁芯面積と内法面積の差は、建物の構造によって大きく変わります。鉄筋コンクリート造のマンションでは壁が厚いため、両者の差が顕著に現れます。木造アパートの場合は壁が薄いため、差は比較的小さくなります。

 

専有面積計算における畳数・坪数換算の実践方法

専有面積を顧客により分かりやすく説明するため、平方メートルから畳数や坪数への換算は日常的に必要となります。

 

畳数への換算計算

  • 基本計算式:専有面積(㎡)÷ 1.62㎡ = 畳数
  • 例:25㎡の場合 → 25 ÷ 1.62 = 約15.4畳
  • 不動産広告では1畳=1.62㎡以上で計算するルールが定められている

坪数への換算計算

  • 基本計算式:専有面積(㎡)÷ 3.31㎡ = 坪数
  • 例:25㎡の場合 → 25 ÷ 3.31 = 約7.6坪
  • 賃貸では坪表記は稀だが、売買では重要な指標

地域による畳サイズの違い

  • 江戸間:880mm × 1,760mm
  • 京間:955mm × 1,910mm
  • 中京間:910mm × 1,820mm

地域によって畳のサイズが異なるため、正確な換算には注意が必要です。特に関西圏では京間が使用されることが多く、関東圏の江戸間より約1.3倍大きくなります。

 

専有面積に含まれる範囲と除外される部分の詳細

専有面積の範囲を正確に把握することは、顧客への説明において重要です。

 

専有面積に含まれる部分

  • リビング・ダイニング・キッチン
  • 寝室・個室
  • 玄関・廊下
  • トイレ・バスルーム・洗面所
  • 収納スペース(クローゼット・押入れ)

専有面積に含まれない部分

意外と知られていない除外部分
ベランダが専有面積に含まれない理由は、緊急時の避難経路として他の住戸からも使用される可能性があるためです。また、ロフトは建築基準法上、天井高が1.4m以下の場合は床面積に算入されません。

 

専有面積計算における構造別の注意点と実務対応

建物構造によって専有面積の計算で注意すべき点が異なります。不動産従事者として、構造別の特徴を理解しておくことが重要です。

 

鉄筋コンクリート造(RC造)

  • 壁厚:150mm~200mm程度
  • 壁芯面積と内法面積の差が大きい
  • 柱型が室内に出る場合があり、実際の使用感に影響
  • 遮音性が高い反面、壁の厚み分居住スペースが狭くなる

鉄骨造(S造)

  • 壁厚:100mm~150mm程度
  • RC造より壁が薄く、居住スペースを広く確保可能
  • 柱が細いため、室内への影響が少ない
  • 軽量鉄骨と重量鉄骨で特徴が異なる

木造

  • 壁厚:90mm~120mm程度
  • 最も壁が薄く、専有面積と実際の居住スペースの差が小さい
  • 在来工法2×4工法で壁厚が異なる
  • 断熱材の厚みによって壁厚が変わる

実務での対応ポイント
顧客に物件を紹介する際は、構造による壁厚の違いを説明し、同じ専有面積でも実際の居住感が異なることを伝えることが重要です。特にRC造の場合は、壁芯面積表記だと実際より広く感じられる可能性があります。

 

専有面積計算の法的根拠と業界基準の最新動向

専有面積の計算方法は、法的根拠と業界の自主規制によって定められています。不動産従事者として、これらの基準を正確に理解しておく必要があります。

 

法的根拠

  • 建築基準法:床面積の定義と計算方法
  • 不動産登記法:登記面積は内法面積で記載
  • 不動産の表示に関する公正競争規約:広告表示のルール

業界基準の詳細
分譲マンションの広告では壁芯面積での表記が義務付けられており、これは「不動産の表示に関する公正競争規約」に基づいています。一方、賃貸物件では明確な規定がないため、内法面積での表記が一般的となっています。

 

最新の動向と注意点
近年、消費者保護の観点から、より実態に近い面積表示が求められる傾向にあります。特に中古マンションでは、登記面積(内法面積)を併記するケースが増えています。

 

実務での活用方法

  • 物件資料作成時は計算方法を明記
  • 顧客への説明時は両方の面積を提示
  • 契約書類では登記面積を基準とする
  • 広告表示では法的要件を遵守

国土交通省の住宅性能表示制度では、より詳細な面積表示が求められており、今後さらに透明性の高い表示方法が普及する可能性があります。

 

住宅性能評価機関による詳細な面積計算基準について
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk4_000017.html
不動産従事者として、これらの基準変更に常に注意を払い、最新の情報を顧客に提供することが求められます。専有面積の正確な計算と適切な説明は、顧客満足度向上と法的リスク回避の両面で重要な要素となっています。