

熱貫流率(U値)は、室内外の温度差が1K(ケルビン)のとき、1時間で1㎡の面積を通過する熱量をW(ワット)で表した数値です。値が小さいほど断熱性能に優れており、省エネルギー性能が高いことを示しています。計算式は「U値=1÷熱抵抗値」となり、建材の厚さや熱伝導率から算出されます。
参考)https://standard-project.net/smarthouse/insulation/heat_transmission_coefficient.html
熱貫流率の測定は、JIS R 3106に基づいて実施され、壁の両側の温度差を1℃とした場合の熱移動量を基準としています。複合構造の場合は、各材料の熱抵抗値を合計して逆数を取ることで求められます。この数値は建築物省エネ法の省エネ基準において重要な役割を果たしています。
参考)https://www.asahiglassplaza.net/gp-pro/knowledge/vol4.html
住宅の主要部位における標準的な熱貫流率は以下の通りです:
参考)https://manabou.homeskun.com/syouene/syouenehou/h28kijun-uchi/
屋根・天井部位
外壁部位
床部位
これらの数値は、モデル住宅法を用いた省エネ基準の計算において使用される代表的な値です。実際の設計では、断熱材の種類や厚さ、施工方法により数値が変動します。
参考)https://www.isover.co.jp/sites/mac3.isover.co.jp/files/migration-files/bui_hayamihyo.pdf
主要な断熱材の熱貫流率を厚さ別に整理すると以下のようになります:
| 断熱材の種類 | 熱伝導率(W/mK) | 50mm厚時のU値 | 100mm厚時のU値 |
|---|---|---|---|
| グラスウール | 0.036~0.05 | 0.72~1.0 | 0.36~0.5 |
| ロックウール | 0.038 | 0.76 | 0.38 |
| ポリスチレンフォーム | 0.028~0.043 | 0.56~0.86 | 0.28~0.43 |
| ウレタンフォーム | 0.021~0.026 | 0.42~0.52 | 0.21~0.26 |
| セルローズファイバー | 0.04 | 0.8 | 0.4 |
ウレタンフォームは最も低い熱貫流率を示し、同じ厚さでより高い断熱性能を実現できます。標準的な住宅では、外壁部分の熱貫流率を0.5~0.6程度に設定することが一般的で、ロックウールなら55mm程度の厚さが必要となります。
窓ガラスの種類による熱貫流率の違いは以下の通りです:
参考)https://shinku-glass.jp/contents/knowledge/heat-transmission/
単板ガラス
複層ガラス
高性能ガラス
Low-E膜をコーティングした複層ガラスは、特殊な金属膜により赤外線をカットし、通常の複層ガラスより高い断熱性を実現します。アルゴンガスなどの断熱ガスを中空層に封入することで、さらなる性能向上が可能です。
参考)https://www.asahiglassplaza.net/category/lowe_double/
建築物省エネ法では、全国を8つの地域区分に分けて外皮平均熱貫流率UA値の基準値を設定しています:
参考)https://www.eneboss.com/heattransmission.html
| 地域区分 | 代表都市 | UA値基準(W/㎡・K) |
|---|---|---|
| 1・2地域 | 札幌等 | 0.46 |
| 3地域 | 盛岡等 | 0.56 |
| 4地域 | 内陸地域 | 0.75 |
| 5~7地域 | 関東以南 | 0.87 |
| 8地域 | 沖縄等 | 基準値なし |
北に行くほど基準が厳しくなり、数値が小さいほど高い省エネ性能が求められます。関東地方でも外皮平均熱貫流率0.87の住宅では、暖房なしで朝方の室内温度が10度以下まで下がる可能性があります。断熱に本格的に取り組む施工店では、地域区分5以上でもUA値0.5未満を目標とする場合があります。
実質熱貫流率の計算では、平均熱貫流率に熱橋係数を乗じて求めますが、木造の場合は熱橋係数が1.00のため、平均熱貫流率がそのまま実質熱貫流率となります。計算には面積比率法を用いることが一般的で、一般部と熱橋部の面積比率を考慮した加重平均により部位の熱貫流率を算出します。
参考)https://ene-cal.com/blog/648