
整備法136条第1項は、新商業登記法の規定が施行日前に生じた事項にも適用されることを明確にしています 。この規定により、会社法の施行日である平成18年5月1日以前に発生した登記事項についても、原則として新商業登記法の規定が適用されることになりました 。
参考)https://ebisudo-office.com/joubun/kaishaseibihou136/
ただし、同条ただし書きにより、旧商業登記法の規定によって生じた効力は妨げられません 。これは法的安定性を確保するための重要な配慮であり、既存の権利関係に混乱を生じさせないための措置です。
この適用原則は、会社法制の大幅な変更に伴う登記制度の移行を円滑に進めるために不可欠な規定として位置づけられています。
整備法136条第2項では、施行日前にした旧商業登記法の規定による処分、手続その他の行為について、新商業登記法の相当規定によってしたものとみなすという重要な規定が設けられています 。
これにより、例えば施行日前に旧商業登記法に基づいて行われた登記申請や登記官の処分は、自動的に新商業登記法の対応する規定に基づく行為として扱われることになります 。
参考)https://www.moj.go.jp/content/001384976.pdf
この規定は、法改正による手続の断絶を防ぎ、継続的な登記事務の運営を可能にする効果を持っています。実務上は、登記申請者や登記所にとって手続の連続性を保証する重要な意味を持ちます。
整備法136条第3項は、施行日前にされた登記の申請に係る登記に関する手続について、なお従前の例によることを定めています 。これは、既に申請手続が開始されている登記については、旧法の規定に従って処理を完了させるという趣旨です。
同条第4項では、施行日前に登記すべき事項が生じた場合における登記の申請書に添付すべき資料についても、なお従前の例によることが規定されています 。
これらの規定により、法改正の境界時期における登記手続の混乱を防止し、申請者にとって予測可能性を確保しています。実際の登記実務では、申請受付から登記完了まで一定の期間を要するため、このような経過措置は極めて重要な意義を持ちます。
整備法136条第5項は、法律の施行の際現に登記所に備えられている旧商業登記法の規定による各種登記簿について、新商業登記法の規定による登記簿とみなす旨を定めています 。
具体的には、株式会社登記簿、合名会社登記簿、合資会社登記簿が、それぞれ新商業登記法第6条第5号から第7号までに規定する対応する登記簿とみなされます 。
この規定により、既存の登記簿がそのまま新法の下でも有効な公示手段として機能し続けることが保証されています。登記所における実務的な連続性も確保され、登記制度の根幹である公示機能に断絶が生じることを防いでいます。
整備法136条第16項は、特例有限会社に関する職権登記について規定した条項として、実務上極めて重要な意味を持っています 。この規定により、会社法施行に伴い、有限会社から特例有限会社への移行に必要な登記が、登記官の職権によって自動的に行われることになりました。
参考)https://www.nagoyasogo-touki.com/touki-column/limited_liability_company/
職権登記の内容には、株式の譲渡制限に関する規定の登記や、発行可能株式総数及び発行済株式の総数の登記などが含まれます 。例えば、資本の総額300万円、出資1口の金額1000円の有限会社は、発行可能株式総数3000株、発行済株式の総数3000株として自動的に登記されます 。
参考)https://www.takada-office.biz/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/%E4%BC%9A-%E7%A4%BE-%E6%B3%95-%E3%82%88%E3%81%8F%E3%81%82%E3%82%8B%E7%9B%B8%E8%AB%87/
この職権登記により、特例有限会社は申請手続を行うことなく、新制度に適応した登記内容を保持することができ、実務上の負担軽減と制度移行の円滑化が図られています。
履歴事項証明書には「平成17年法律第87号第136条の規定により平成18年5月1日登記」と記載されることで、職権登記による変更であることが明示されています 。
参考)https://www.ashizaki-shihou.jp/16842844139830