登記所と法務局の違いとは?不動産業の知識

登記所と法務局の違いとは?不動産業の知識

登記所と法務局は同じ機関でしょうか?不動産業に従事する人なら知っておきたい登記に関する基礎知識や役割、手続きの流れなど詳しく解説します。あなたはその違いを正確に理解していますか?

登記所と法務局の違い

登記所と法務局の基本理解
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基本的な定義

登記所と法務局は実質的に同じ機関であり、法律上の呼び名の違いです

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機能と役割

不動産登記、商業登記など重要な民事行政事務を担当

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組織構造

全国8ブロックに法務局、その下に42か所の地方法務局が配置

登記所の法的定義と法務局との関係性

登記所と法務局の違いについて結論から申し上げると、両者は実質的に同じ機関です。不動産登記法や商業登記法において、法務局・地方法務局・その支局および出張所のことを、法律上「登記所」と呼んでいるだけなのです。
法務局は法務省の地方組織の一つであり、登記事務以外にも様々な業務を取り扱っています。具体的には以下のような事務を行っています:
・不動産登記、商業・法人登記、債権譲渡登記、電子認証、成年後見登記
・戸籍事務、供託事務、国籍事務、公証事務
司法書士・土地家屋調査士の指導や試験に関する事務
・国民の基本的人権を擁護する人権擁護事務
・国に関係する訴訟活動を行う訟務事務
これらの多様な業務を行う法務局のうち、登記事務を担当する部分を指して「登記所」と呼ぶというのが正確な理解です。

登記所としての法務局の組織構造と管轄

法務局の組織は全国を8ブロックに分けて構成されており、各ブロックを統括する機関として「法務局」が設置されています。具体的には以下の8つの法務局があります:
📍 全国8か所の法務局
・東京法務局
・大阪法務局
・名古屋法務局
・広島法務局
・福岡法務局
・仙台法務局
・札幌法務局
・高松法務局
これらの法務局の下に、都道府県を単位とする地域を所轄する「地方法務局」が42か所設置されています。さらに出先機関として、支局が286か所、出張所が321か所存在しています(平成17年1月1日現在)。
管轄による業務の違いも重要なポイントです。
・法務局、地方法務局および支局:登記、戸籍、国籍、供託、訟務、人権擁護の事務を実施
・出張所:主に登記の事務を実施
不動産登記については管轄地域が厳格に決められており、対象不動産の所在地を管轄する登記所でのみ手続きが可能です。管轄外の登記所では不動産登記に対応していないため、事前の確認が必要です。

登記所における登記手続きの流れと実務

登記所での登記手続きは、国が管理する登記簿に権利関係等を登録することにより、権利や財産を守るとともに、取引の安全や円滑化を図る重要な制度です。
主要な登記手続きの例
・不動産の所有者変更(所有権の移転登記)
・住宅ローン完済(抵当権の抹消登記)
・会社役員変更(役員の変更登記
・新築住宅の登記(建物の表題登記)
・土地の分割(分筆の登記)
・会社設立(会社設立の登記)
登記所の内部には、登記事務を行う公務員である「登記官」が配置されており、申請された登記を審査し、登記の書入れを行っています。登記官にも階層があり、課長に相当する統括登記官や、法務局の幹部である主席登記官などの組織構造が存在します。
登記手続きの審査プロセスは厳格で、申請内容に不備がある場合には登記所から連絡があります。法務局は事前審査には応じてくれないため、申請書類は完璧な状態で提出する必要があります。

登記所と法務局の呼び方による実務上の注意点

不動産業務において顧客とのやりとりでは、登記所と法務局の使い分けに注意が必要です。法務局の建物には「○○法務局○○出張所」と表記されているため、顧客を混乱させないためにも、登記簿謄本の取得などを案内する際は「法務局」という呼び名を使用することが推奨されます。
登記所という名称の建物は実際には存在せず、「法務局を登記所と呼んでいるだけ」というのが実態です。この点を理解しておくことで、顧客への説明がより分かりやすくなります。
商業登記の特殊事情として、法務局のマンパワーの問題等から、大規模庁が一括して管轄し、事務の集中が図られています。そのため、小さな出張所では商業登記の取り扱いがないケースが多く、事前の確認が重要です。
供託業務についても、ある程度の規模がある法務局のみで取り扱っており、すべての出張所で対応しているわけではありません。一方で、不動産登記については、ほぼすべての法務局、支局、出張所で取り扱いが可能です。

登記所の現代的役割とデジタル化への対応

現代の登記所は、従来の紙ベースの手続きから電子化への移行を進めています。オンライン申請システムの導入により、一部の登記手続きは電子的に行うことが可能になりました。

 

デジタル化のメリット
・申請手続きの迅速化
・書類作成の効率化
・遠隔地からの申請対応
・手数料の軽減(一部手続き)
しかし、すべての手続きが電子化されているわけではなく、重要な登記については依然として書面での申請が必要な場合があります。不動産業に従事する方は、各登記手続きの申請方法について最新の情報を確認することが重要です。

 

登記所のシステム障害対応も重要な課題となっており、業務継続のための対策が検討されています。現代の登記業務は電子システムに大きく依存しているため、システム障害時の対応策は登記所の重要な課題となっています。
また、筆界特定制度など、新しい制度も登記所の業務範囲に加わっており、土地の境界に関する紛争解決にも重要な役割を果たしています。この制度により、管轄登記所における専門的な境界確定手続きが可能になりました。
不動産業従事者としては、これらの新しい制度や電子化の動向を把握し、顧客への適切な情報提供ができるよう準備しておくことが求められます。登記所と法務局が同じ機関であることを理解した上で、それぞれの機能や最新の制度変更について継続的に学習することが、プロフェッショナルとしての価値向上につながります。