
自然公園法に基づく特別地域は、優れた自然の風景地を保護するため、その重要度や必要性に応じて細かく区分されています。国立公園、国定公園、都道府県立自然公園内では、特別地域として特別保護地区、第1種特別地域、第2種特別地域、第3種特別地域が指定され、さらに普通地域も含まれます。
参考)https://www.env.go.jp/content/000062513.pdf
特別地域の区分は、風致景観の保護の必要性の度合いに応じて決定されており、それぞれ異なる規制内容が設けられています。これらの地域区分により、建築物の新築や土地の形状変更などの行為について、許可制や届出制といった段階的な規制が行われています。
参考)https://www.kankyo.pref.hyogo.lg.jp/jp/environment/leg_293/leg_294
特別保護地区は、自然公園内で最も厳格な規制が適用される区域で、原生的な自然景観を有する地域や動植物の重要な生息地、特異な地形地質を有する地域に指定されます。この地区では現状維持を原則とし、学術研究など特別な公益性と必然性が認められる場合を除き、ほとんどの開発行為が禁止されています。
参考)https://www.pref.aichi.jp/soshiki/shizen/park-regulation.html
工作物の新築、改築、増築は原則として不可能で、木竹の伐採についても極めて厳しい制限があります。鉱物の掘採や土石の採取、土地の形状変更に関しても、公益性と必然性が認められる例外的な場合を除いて認められません。特別保護地区は国立・国定公園のみに設けられ、都道府県立自然公園には存在しない制度です。
参考)https://www.pref.mie.lg.jp/MIDORI/HP/shizen/06013000405.htm
第1種特別地域は、特別保護地区に準ずる地域として位置づけられ、現在の景観を極力維持する必要のある区域です。この地域では、一般的な建築物の建築はほぼ不可能で、学術研究など特別な用途に限定されています。木竹の伐採については単木択伐法のみが認められ、択伐率は現在蓄積の10%以下、樹齢は標準伐期齢に10年を加えたもの以上という厳格な基準が設けられています。
参考)https://www.env.go.jp/nature/ari_kata/shiryou/031208-4-14.pdf
土地の形状変更についても、植生の復元が困難な地域での行為は認められず、集団的建築物設置のための敷地造成や階段状造成は禁止されています。第1種特別地域では、風景地の保護が最優先され、開発行為は極めて限定的にしか認められていません。
参考)https://www.pref.kyoto.jp/chutan/doboku/documents/kyokakijyun.pdf
第2種特別地域は、良好な自然状態を保持している地域で、農林漁業との調和を図りながら自然景観の保護に努める必要がある区域です。この地域では、第1種特別地域ほど厳格ではないものの、依然として厳しい規制が設けられています。建築物については一定の条件下で許可される場合もありますが、風致景観に著しい影響を与える規模の建築物は制限されます。
参考)https://datefudousan.com/natural-parks-act/
木竹の伐採については原則として択伐法が適用され、第1種特別地域と同様の制限が課せられます。土地の形状変更についても、植生復元の困難性や主要な展望地からの景観への影響を考慮した審査が行われます。第2種特別地域では、農林漁業活動との調整が重要な要素として位置づけられており、地域の産業活動と環境保護のバランスが図られています。
第3種特別地域は、特別地域の中では風致を維持する必要が比較的低い地域で、通常の農林漁業活動については風致の維持に影響を及ぼすおそれが少ない区域です。この地域では、他の特別地域と比較して開発行為の許可基準が緩和されており、風致景観に著しい支障を及ぼさない限り、建築物の建築も可能です。
木竹の伐採については、許可にあたって特に厳格な要件は定められておらず、比較的柔軟な対応がなされています。土地の形状変更についても、大規模な切土・盛土を伴わず、擁壁その他工作物の色彩・形態が周辺の風致景観と著しく不調和でない限り、許可される可能性があります。第3種特別地域では、地域の経済活動と環境保護の両立が重視されており、宅地建物取引業においても重要な検討対象となります。
普通地域は、自然公園の区域のうち特別地域に含まれない区域で、一定の規模以上の工作物の新築、改築、増築等を行う場合には届出が必要となります。この地域では許可制ではなく届出制が適用されるため、特別地域と比較して規制は緩やかですが、全く制限がないわけではありません。
参考)https://iqrafudosan.com/channel/nature-park-law
宅地建物取引業者にとって、普通地域での不動産取引では重要事項説明書への記載が必要であり、買主に対して届出義務があることを説明する必要があります。届出の対象となる行為は、工作物の新築、土地の形状変更、広告物の設置などが含まれ、行為の種類、場所、施行方法等の詳細な情報を環境大臣または都道府県知事に提出する必要があります。普通地域においても、自然公園の風景地としての価値を維持するため、一定の配慮が求められています。
参考)https://www.kankyo.pref.hyogo.lg.jp/download_file/view/24710/21377