
切土による造成地は、元の地盤を削り取って平坦化したものです。最も重要な特徴は、自然の力で長い年月をかけて圧密・安定化した地盤をそのまま利用できる点です。
切土の主な特徴:
山地や丘陵地の締まった土をそのまま使用するため、地盤の強度が維持されやすく、地震や豪雨による災害への耐性が強いのが大きなメリットです。実際の住宅建設時においても、基礎工事での問題が発生しにくく、長期的な建物の安定性を確保できます。
ただし、切土工事では法面(のりめん)の保護工事が必要になることが多く、工事費用が盛土に比べて高めになる傾向があります。また、削り取った土の処分場確保や、法面の崩落防止対策も重要な検討事項となります。
盛土造成地は、低地や谷間に土砂を運び入れて積み上げることで地盤面を高くした土地です。人工的に作られた地盤であるため、切土と比較して様々なリスクを抱えています。
盛土の主要リスク:
盛土部分は元の地盤と盛土部分の二層構造になるため、その境界がすべりやすくなります。特に締め固めが不十分な場合、細かい隙間に雨水が浸透し、土が締まることで空洞が生じ、建物を支える力が徐々に弱まります。
新しく盛土された地盤は、通常3年から5年程度で沈下や圧縮が落ち着くとされています。しかし、盛土材にコンクリート片や廃棄物、大きな石や木の根などが混入している場合、空洞の形成や腐植の進行により、安定化まで10年近くかかることもあります。この期間中は継続的な地盤監視が必要です。
現地での切土・盛土の判別には、複数の手法を組み合わせることが効果的です。最も確実な方法は各自治体への直接確認ですが、現地調査でも重要な手がかりを得ることができます。
現地調査による見分け方:
対象地が周囲より高い位置に平坦化されていれば盛土、周囲より低ければ切土の可能性が高くなります。特に谷間や低地を埋め立てたような地形では盛土の可能性が高く、山の斜面を削って平らにした地形では切土である確率が上がります。
また、擁壁の形状や材質も重要な判断材料です。切土の場合は自然石やコンクリートブロックの擁壁が多く、盛土の場合は排水機能を持った特殊な擁壁が設置されることが多いです。現地の排水設備の充実度も、盛土地盤への対策として整備されている可能性を示唆します。
最も注意が必要なのは、一つの敷地内に切土部分と盛土部分が混在する境界部分です。この切盛境界線付近は、災害による地盤事故が最も多い場所として知られています。
境界部分の主要問題:
切土部分は安定した地盤である一方、盛土部分は軟らかい人工地盤のため、同一建物でも部分的に沈下量が異なる不同沈下が発生しやすくなります。これにより、建物の傾斜や亀裂、開口部の歪みなどの構造的問題が生じる可能性があります。
境界部分では、基礎工事時に地盤改良工事の範囲や工法の選定が特に重要になります。切土部分では表層改良で十分な場合でも、盛土部分では深層改良や杭基礎が必要になることがあり、工事費用の大幅な増加要因となります。
正確な地盤情報を得るためには、公的機関が提供する調査資料の活用が不可欠です。東日本大震災以降、国土交通省の指示により各自治体の地盤情報整備が進んでいます。
活用可能な公的資料:
大規模盛土造成地マップは、各自治体のウェブサイトで公開されており、盛土面積が3,000㎡以上または盛土高さが5m以上の大規模盛土造成地を確認できます。ただし、このマップに掲載されていない小規模な盛土については、直接自治体に問い合わせる必要があります。
宅地造成工事許可台帳には、造成工事の詳細な記録が保管されており、切土・盛土の範囲や施工方法、使用材料などの情報を確認できます。これらの情報は不動産取引において重要な判断材料となるため、購入検討時には必ず確認することをお勧めします。