
不同沈下と不等沈下は、どちらも地盤の沈下によって建物が不揃いに沈む現象を指す建築用語です。 不同沈下は「建物が建っている地盤が均一でないために、建物の一部が他の部分よりも速くまたは深く沈下する現象」として定義されます。 一方、不等沈下は「地盤の支持力などの局部的な強度不足に伴って生じる構造物などの不均一な沈下」を意味します。
参考)https://left-h.co.jp/glossary/ha-line/fudouchinka/
両用語は実質的に同じ現象を表現しており、地盤が均等に沈下せず、建物に傾斜が生じる状態を指します。 この現象により、本来水平に建設された建物の一部に荷重が集中し、構造体に無理な負荷がかかることになります。
参考)https://heisei1.jp/fudouchinka/
不同沈下・不等沈下が発生すると、建物には様々な症状が現れます。軽微なものでは扉や窓の開閉がしにくくなり、深刻になると壁やタイルに亀裂が発生し、最終的には雨漏りや排水管の断裂といった重大な被害に発展する可能性があります。
実際の建築実務において、この2つの用語の使用状況には明確な傾向が見られます。建築業界の実務者は「不等沈下」という表記を基本的に使用しているのが現状です。 住宅建設業界では不等沈下という用語が一般的に採用されており、多くの専門書籍や技術資料でもこちらが使用されています。
参考)https://houpark.co.jp/column/221214-fudoutinka/
土木学会のQ&Aによると、「不同沈下」と「不等沈下」は設計図書や文書において混在しており、インターネット検索では同義語であることが確認されています。 しかし、実務現場での使用頻度を比較すると、「不等沈下」の使用が優勢であることが分かります。
参考)https://www.jsce.jp/pro/node/7101
建築用語辞典では「不等沈下は建築物の基礎部分や建物全体が傾いて沈下すること」と定義されており、「不同沈下ともいわれる」と付け加えられています。 このことからも、不等沈下が主要な用語として認識されていることが理解できます。
参考)https://plant.ten-navi.com/dictionary/cat07/5522/
法令における正式な用語としては「不等沈下」が使用されています。消防法では、1,000kL以上の液体危険物タンクを設置する場合において、地盤の計算不等沈下量の許容値を明確に定めており、この法令では一貫して「不等沈下」の表記が使用されています。
参考)https://oilgas-info.jogmec.go.jp/termlist/1001560/1001582.html
直径15m未満のタンクでは5cm、直径15m以上では当該タンクの直径の300分の1という具体的な許容値が設定されています。 また、既存タンクにおいて直径の100分の1以上の不等沈下が発生した場合は、保安検査を受ける義務が課されています。
石油・天然ガス業界においても「不等沈下(ふとうちんか)」として英語表記「uneven settlement」とともに正式に定義されており、法令や技術基準では不等沈下が標準的な表記として採用されています。
不同沈下が発生しやすい地盤の種類には明確な特徴があります。特に軟弱な粘性土(粘土)を含む地盤では、水分含有量の変化により膨張・収縮を繰り返すため、不同沈下が起こりやすくなります。 砂質の土壌も水の流れによって容易に移動するため、不均一な沈下の原因となります。
地盤沈下には「即時沈下」と「圧密沈下」の2種類があります。 即時沈下は砂質系地盤で重量が載った瞬間に発生する現象で、圧密沈下は粘性土地盤で長期間にわたって徐々に進行する現象です。 特に軟弱粘土地盤では、地盤内の水や空気が徐々に排出されることで体積が減少し、それが沈下として現れます。
参考)https://hanteishi.org/post-5760/
池や沼地、田んぼを埋め立てた地盤、切土と盛土の境目がある地盤、瓦礫や廃棄物が埋まっている地盤などは、特に不同沈下が発生しやすい条件となります。 これらの地盤条件では、地盤の支持力に局所的なばらつきが生じ、建物の荷重に対して不均一な応答を示すためです。
不動産取引において不同沈下は重要な瑕疵問題として位置づけられます。建物が不同沈下を起こすと、構造体に致命的な影響を与える可能性があります。本来直交していた構造材が斜めに変形することで、その歪みが壁や床まで伝播し、建物全体の構造安定性が損なわれます。
参考)http://www.nikken-kiso.co.jp/material_05.html
建設後1年程度で扉がぴったりと閉まらなくなる症状は、すでに不同沈下が進行している典型的な兆候です。 このような症状を見逃すと、最終的には建物の倒壊リスクまで高まる可能性があります。特に地震時には、傾斜した建物の耐震性能が著しく低下するため、生命に関わる重大な問題となります。
参考)https://www.jiban.co.jp/tips/kihon/kiso/tisiki01.htm
宅地建物取引業者として、購入予定の土地や建物について事前の地盤調査の重要性を顧客に説明することが必要です。地盤調査により軟弱地盤や不均一な地質条件が判明した場合は、杭基礎や地盤改良工事などの適切な対策工事を提案することで、将来の不同沈下リスクを大幅に軽減できます。 深基礎工法や強固な地盤まで到達する対策工事は、長期的な建物の安全性確保において極めて重要な投資となります。
参考)https://www.vic-ltd.co.jp/knowledge/ground/7205/