
商標権とは、商品やサービスの目印となる商標を独占的に使用できる権利のことです 。商標法に基づいて特許庁に登録することで発生する権利で、事業者が自社の商品やサービスを他社のものと区別するための重要な知的財産権となります 。
参考)https://toreru.jp/media/trademark/571/
商標の対象となるものは多岐にわたります。文字、図形、記号、立体的形状、色彩、これらの結合したもの、さらに2015年の商標法改正により音商標やホログラム商標なども保護対象に追加されました 。例えば、企業のロゴマーク、商品名、サービス名、店舗名などが該当し、消費者が商品やサービスを選ぶ際の重要な識別標識として機能しています。
参考)https://keiyaku-watch.jp/media/hourei/syohyoken/
商標権は登録主義を採用しており、使用の事実だけでは権利は発生しません 。特許庁への商標登録出願を行い、審査を経て登録されることで初めて商標権が発生します。この権利により、事業者は自社のブランド価値を法的に保護し、模倣品や類似品による混同を防ぐことができるのです 。
参考)https://group.gmo/security/brandsecurity/domain-management/blog/trademark-rights/
商標権の効力は、「専用権」と「禁止権」の2種類に分けられます 。専用権とは、指定商品または指定役務について登録商標を独占的に使用する権利で、商標権者のみがその商標を使用できる排他的な権利です 。これにより、商標権者は安心して自社のブランドを展開することが可能になります。
参考)https://www.businesslawyers.jp/practices/1028
禁止権は、登録商標と類似した商標の使用や、指定商品・役務と類似した商品・サービスについての使用を排除する権利です 。具体的には、指定商品・役務について登録商標に類似する商標の使用、指定商品・役務に類似する商品・役務について登録商標を使用する行為、両方が類似する場合の使用行為を禁止できます 。
参考)https://keiyaku-watch.jp/media/kisochishiki/syohyoken-koryoku/
商標権の効力範囲は、登録された商標と指定商品・役務の同一・類似する範囲に及びます 。ただし、商標権の効力を一律に及ぼすと適切でない場合もあるため、商標法では効力が及ばない範囲も規定されています 。この制度により、商標権者の権利保護と第三者の正当な事業活動のバランスが図られています。
参考)https://www.jpo.go.jp/system/trademark/gaiyo/seidogaiyo/shotoha.html
商標権を取得するには、特許庁への商標登録出願が必要です 。出願から登録までの流れは、まず先行商標調査を行い、他社の商標登録状況を確認します 。この調査により、同一または類似の商標が既に登録されていないかを事前に把握することができます。
参考)https://keiyaku-watch.jp/media/kisochishiki/syohyo-syutsugan/
出願書類の作成では、願書に必要事項を記載します 。記載事項には、出願人の氏名・住所、商標登録を受けようとする商標、指定商品・役務、商品・役務の区分などが含まれます 。商標は権利範囲を定めるものなので、実際の事業活動で使用するブランド表示を慎重に選定することが重要です 。
参考)https://www.vbest-ip.jp/columns/4141/
特許庁での審査では、方式審査(書類の形式や料金の確認)と実体審査(登録可否の判断)が行われます 。審査にパスすると登録査定が送付され、所定の登録料を納付することで商標権が発生します 。出願から登録完了まで約8ヶ月程度の期間が必要で、登録料は1区分・5年間で33,900円となっています 。
参考)https://fareastpatent.com/trademark_topic/advantages-disadvantages-trademark.html
商標権侵害を受けた場合、権利者は複数の対処法を選択できます 。最も直接的な対応は差止請求で、侵害者に対して侵害行為の停止を求めることができます 。差止請求では、侵害行為の停止だけでなく、侵害商品の廃棄や設備の除却なども併せて請求可能です 。
参考)https://bengoshihoken-mikata.jp/archives/17399
損害賠償請求や不当利得返還請求により、侵害行為によって生じた損害の回復を図ることもできます 。さらに、商標権侵害品の輸入が懸念される場合には、税関に輸入差止申立てを行うことで、侵害品が国内市場に流通することを防げます 。
参考)https://keiyaku-watch.jp/media/kisochishiki/syohyoken-shingai/
商標権侵害への対応では、まず侵害の証拠を確保することが重要です 。また、「類似」の判断は専門的な知識が必要なため、弁理士などの専門家に相談することが推奨されます。悪質な侵害行為に対しては刑事告訴も可能で、商標権の保護を多面的に行うことができる制度となっています 。
不動産業界では、会社名やマンション名、施設名などの商標登録が重要な意味を持ちます 。不動産会社が商標登録を受けると、その商標を独占的に使用できるようになり、他人が無断使用した場合には差止請求や損害賠償請求が可能になります 。また、商標登録により「®」マークを付けることができ、社会的信用の向上も期待できます。
参考)https://www.astermarksip.jp/category/estate-trademark.html
ただし、不動産自体は「商品」として扱われないため、建物の売買や管理などの「サービス」として商標登録を行う必要があります 。実務上は第36類の「建物の売買」「土地の売買」などを指定役務として登録することが一般的です 。「六本木ヒルズ」のような有名な事例では、森ビル株式会社が商標権を取得し、第三者による無断使用を防いでいます 。
参考)https://www.noandt.com/static/ja/publications/2018/documents/aresvol43.pdf
マンション名の商標登録についても、建物自体ではなく建物の売買・賃貸借を指定役務とする方法が採られています 。不動産会社が広告宣伝用にロゴ入りノベルティを作成する場合も、商標権侵害のリスクを考慮する必要があり、事前の商標調査が重要となります 。このような特殊性を理解した上で、適切な商標戦略を立てることが不動産業界では求められています。
参考)https://www.branche-ip.jp/2014/01/13/%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%81%AE%E5%90%8D%E5%89%8D%E3%82%92%E5%95%86%E6%A8%99%E7%99%BB%E9%8C%B2%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%82%8B%E3%81%8B%EF%BC%9F%E3%83%BB%E3%83%BB%E3%83%BB%E9%AB%98/