
産業財産権は、知的財産権の中でも特許庁が所管する重要な権利群です。特許権、実用新案権、意匠権、商標権の4つから構成され、それぞれが異なる知的創作物を保護しています。これらの権利は特許庁に出願・登録することで発生し、事業者の技術やブランドを守る重要な役割を果たしています。
参考)https://www.jpo.go.jp/system/basic/index.html
特許権は「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」である発明を保護する権利です。発明には物の発明、方法の発明、物を生産する方法の発明の3種類があり、それぞれ独占実施権が認められています。特許権の存続期間は出願から20年で、特許庁での厳格な審査を経て権利が発生します。
参考)https://kobaipo.jp/blog/institution/%E7%89%B9%E8%A8%B1%E3%83%BB%E5%AE%9F%E7%94%A8%E6%96%B0%E6%A1%88%E3%83%BB%E6%84%8F%E5%8C%A0%E3%83%BB%E5%95%86%E6%A8%99-%E4%BD%95%E3%81%8C%E3%81%A9%E3%81%86%E9%81%95%E3%81%86%EF%BC%9F/
特許権は無形の所有権として、他者を排除する強力な権利です。権利者は発明を作る、使う、売る、売ろうとする行為、輸入する行為から他者を排除できます。この独占権により、発明者は技術開発への投資を回収し、さらなる研究開発への資金を確保できるのです。
参考)https://cashmo.jp/blog/2022/01/17/what-are-patent-rights/
実用新案権は「自然法則を利用した技術的思想の創作であり、物品の形状、構造または組み合わせにかかるもの」である考案を保護します。特許権と異なり、高度の技術性は要求されず、方法の発明は保護対象に含まれません。実用新案権の存続期間は出願から10年です。
参考)https://ipagent.jp/model/model-distinguish.html
実用新案権の最大の特徴は、特許庁での実体審査がないことです。方式要件と基礎的要件を満たせば、既に同じ考案が登録されていても登録されてしまいます。そのため権利行使の際は、実用新案技術評価書の提示が必要です。出願時には第1年から第3年分の登録料を一括納付する必要があります。
参考)https://www.kishimoto-pat.jp/utility-model/
意匠権は「物品の形状、模様もしくは色彩またはこれらの結合、建築物の形状または画像であって、視覚を通じて美感を起こさせる意匠」を保護します。令和元年の法改正により、画像や建築物、内装なども保護されるようになりました。意匠権の存続期間は出願から25年で、特許権よりも長期間の保護が可能です。
参考)https://tokyo-startup-law.or.jp/magazine/category05/utility-model-right/
意匠権は工業製品のデザインを保護するもので、量産できる工業製品の美的デザインが対象となります。絵画や彫刻などの芸術的分野や自然物は保護対象外です。視覚を通じるものに限定されており、具体的な意味を持つ「文字」は基本的に保護対象になりません。
参考)https://www.kaipat.com/trademarkc/%E3%80%8E%E5%95%86%E6%A8%99%E6%A8%A9%E3%80%8F%E3%81%A8%E3%80%8E%E6%84%8F%E5%8C%A0%E6%A8%A9%E3%80%8F%E3%81%AE%E9%81%95%E3%81%84%E3%81%A8%E3%81%AF%EF%BD%9C%E7%9F%A5%E7%9A%84%E8%B2%A1%E7%94%A3%E6%A8%A9/
商標権は商品やサービスの「目印」であるブランドを保護する権利です。商標権の存続期間は登録から10年ですが、10年ごとに更新でき、半永久的に権利を維持できます。これは他の産業財産権にはない特徴で、ブランド価値の蓄積という商標の性質に適した制度となっています。
商標権で保護される対象は、商品や看板等に付されるロゴ、ネーミング、キャラクターなどの図形や立体的形状です。具体的な意味を持つ文字を含んでいても、会社やブランドの目印として機能するものであれば商標登録できます。商標権は製品そのもののデザインではなく、事業者を識別する能力のある表示を保護するのです。
参考)https://www.lhpat-tm.com/knowledge/trademark/0049-2.html
特許権と実用新案権は共に技術的アイデアを保護しますが、権利行使の方法に重要な違いがあります。特許権は厳格な審査を経て取得されるため、権利の信頼性が高く、直接的な権利行使が可能です。一方、実用新案権は無審査登録のため、権利行使前に実用新案技術評価書を提示した警告が必要です。
実用新案権の場合、適切な警告なしに権利行使を行い、後に権利が無効となった場合は損害賠償責任を負うリスクがあります。このため実用新案権の活用には、より慎重なアプローチが求められます。特許権と実用新案権の選択は、技術の高度性や緊急性、コストなどを総合的に考慮して決定すべきです。
参考)https://studying.jp/chizai/about-more/model.html