
総合保養地域整備法(リゾート法)における特定地域は、良好な自然条件を有する土地を含む相当規模の地域として位置づけられています。 具体的な面積要件は概ね15万ha程度とされ、これは自動車でほぼ1時間圏(概ね50×30km)に相当する広さです。
参考)https://laws.e-gov.go.jp/law/362AC0000000071/
特定地域の指定には、自然的経済的社会的条件からみて一体として総合的な整備を行うことが適当と認められることが必要です。 都道府県知事は、主務大臣が定める基本方針に基づいて基本構想を作成し、総務大臣、農林水産大臣、経済産業大臣、国土交通大臣による同意を得る必要があります。
参考)https://www.cao.go.jp/bunken-suishin/kaigi/doc/teianbukai136sanko-shiryou01_9.pdf
指定された特定地域内には、3,000ha程度の重点整備地区が数ヵ所設定され、これは徒歩でほぼ1時間圏(概ね600×500m)の範囲となっています。 💡 興味深い点として、特定地域は概ね15万ha以下という上限面積が設けられており、無制限な開発を防ぐ仕組みが組み込まれています。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/journalcpij/32/0/32_265/_pdf
リゾート法では、特定地域内において民間事業者による特定民間施設の整備を促進することが重要な柱となっています。 特定民間施設には、スポーツ施設、レクリエーション施設、教養文化施設、集会施設、宿泊施設などが含まれ、これらの総合的な整備により多様な活動ができる環境を提供することを目的としています。
参考)https://www.nli-research.co.jp/files/topics/34456_ext_18_0.pdf
民間事業者が特定民間施設を整備する際には、税制・資金面での国からの優遇措置が講じられます。 また、道路、下水道、河川、公園等の公共施設の整備についても、国及び地方公共団体が促進に努めることとされています。
参考)https://www.homemate-research-theme-park.com/useful/13211_tour_003/
🔍 意外な事実として、特定民間施設の整備は民間活力の導入に重点を置いており、第三セクターを含む民間企業との協力体制が法律で規定されています。 このような官民連携の仕組みは、当時としては画期的な制度設計でした。
1998年3月までのリゾート法に基づく基本構想の承認(同意)は、全国で41道府県(712市町村)・42構想にまで拡大しました。 特定地域の総面積は約660万ha、国土面積の約18%に達し、これは九州と四国を合わせた面積を上回る広大な規模となっています。
参考)https://www.nichibenren.or.jp/document/civil_liberties/year/2004/2004_4.html
現在では、社会経済情勢の変化により、都道府県の実情に合わせた廃止を含めた見直しが進められています。 実際の施設整備状況を見ると、整備予定の特定施設のすべてが供用されている地区は存在せず、供用割合が50%未満の重点整備地区が15地域の108地区(92.3%)を占めている状況です。
参考)https://www.soumu.go.jp/main_content/000250649.pdf
📊 注目すべき点として、当初計画された施設の多くがゴルフ場・スキー場・マリーナにホテルがセットされた画一的な構想であったことが、「金太郎飴」と評される結果につながったとされています。
リゾート法による特定地域制度は、バブル経済崩壊後の社会情勢変化により多くの課題を抱えています。主務大臣協議の廃止が検討されるなど、制度の抜本的な見直しが進められています。
環境保全に関する規制措置の大幅緩和が行われた結果、自然環境への影響が問題視され、日本弁護士連合会からは制度の廃止を求める意見も出されています。 特に、良好な自然条件を有する土地が開発対象となることで、環境破壊のリスクが指摘されてきました。
現在では、持続可能なツーリズムへの転換が求められており、従来の大規模開発型から地域資源を活かした小規模で環境に配慮した観光開発への方向転換が議論されています。 🌱 興味深い変化として、一部の地域では基本構想の廃止や大幅な縮小を行い、より環境に配慮した地域振興策への転換を図る動きが見られています。
宅建業者にとって、リゾート法による特定地域制度の理解は重要な業務知識の一つです。特定地域内での不動産取引では、建築制限や環境規制、都市計画法との関係について正確な情報提供が求められます。
参考)https://www.town.ichinomiya.chiba.jp/machizukuri/207/125.html
特定地域内では、自然公園法や県立自然公園条例に基づく規制が適用される場合があり、建築物の高さ制限や建築面積の制限が設けられることがあります。 例えば、千葉県一宮町では町全域が特定地域に指定されており、大型建築物については別途指導要綱に基づく手続きが必要となっています。
🏢 重要なポイントとして、特定地域内での開発や建築には、通常の建築基準法や都市計画法に加えて、リゾート法特有の規制や手続きが適用される可能性があるため、事前の詳細な調査が不可欠です。また、基本構想の変更や廃止により、将来的な土地利用計画が変更される可能性も考慮する必要があります。
国土交通省の総合保養地域整備法に関する詳細な解説と現在の運用状況について
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