
国土交通省が実施する耐震診断補助金制度は、建築物の耐震化を促進し、地震による被害を軽減することを目的とした重要な施策です。令和7年度においても継続的に実施され、不動産業界にとって活用すべき制度となっています。
耐震対策緊急促進事業は、国土交通省が民間事業者等に対して実施する重点的な支援制度です。この制度では、耐震診断義務付け対象建築物の耐震診断費用に対し、国が2分の1の補助率で支援を行います。
補助対象となる建築物は、昭和56年5月31日以前に建築された建築物で、改正耐震改修促進法により耐震診断が義務付けられた大規模建築物や緊急輸送道路沿道建築物などが該当します。
補助対象経費には以下の項目が含まれています。
国土交通省の制度における耐震診断費用の補助対象限度額は、建築物の延べ面積に基づいて以下の単価で算出されます:
一般建築物の場合
延べ面積区分 | 単価(円/㎡) |
---|---|
1,000㎡以内 | 3,670 |
1,000㎡超2,000㎡以内 | 1,570 |
2,000㎡超 | 1,050 |
戸建て住宅等の場合
指定性能評価機関による評定等に要する費用については、上記限度額に157万円を限度として加算することができます。この仕組みにより、建築物の規模や特性に応じた適切な補助額が設定されています。
国土交通省は地方公共団体との連携により、住宅・建築物安全ストック形成事業を通じた耐震診断支援も実施しています。この制度では、国が3分の1の交付率で地方公共団体を支援し、地方公共団体がさらに建築物所有者への補助制度を整備する仕組みとなっています。
地方公共団体レベルでの具体例として、山県市では建築物耐震診断事業において、昭和56年5月31日以前に着工された木造以外の一戸建て住宅を対象に、限度額13.6万円で3分の2以内の補助率(上限9万円)の制度を設けています。
大阪市では民間戸建住宅等を対象に、令和7年の民間住宅耐震化率95%を目標とした包括的な補助制度を運営しており、耐震診断から改修工事まで段階的な支援を行っています。
国土交通省の補助制度と併用できる税制優遇措置として、固定資産税の減免制度があります。補助金を受けて耐震改修を実施した耐震診断義務付け対象建築物は、固定資産税の減免を受けることができ、総合的な経済的支援が提供されています。
この税制優遇措置は、耐震改修促進税制として位置づけられており、建築物所有者の経済的負担を大幅に軽減する効果があります。不動産業界においては、これらの制度を組み合わせることで、クライアントに対してより魅力的な耐震化提案を行うことが可能となります。
令和7年度からは住宅の耐震改修工事に対する補助金上乗せも検討されており、1戸あたり最大50万円前後の追加支援が予定されています。これは能登半島地震での被害を受けた対策強化の一環として実施される予定です。
国土交通省では令和3年度以降、建築物の耐震化支援制度を大幅に見直しました。従来は交付金と補助金の2つの措置で支援していましたが、令和3年度以降は補助金のみによる支援に統合され、より効率的な制度運用が図られています。
この制度改正により、耐震診断義務付け対象建築物の補強設計に対する支援も変更されました。
この統合により、申請手続きの簡素化と支援の拡充が同時に実現され、建築物所有者にとってより利用しやすい制度となっています。
不動産業界では、これらの制度変更を十分に理解し、クライアントに対して最適な耐震化プランを提案することが重要です。特に大規模建築物や義務付け対象建築物を取り扱う際は、国土交通省の最新制度情報を常に把握し、効果的な活用方法を提示することが求められています。
耐震診断から改修まで一貫した支援体制が整備されており、建築物の安全性向上と地震リスク軽減に向けた包括的な取り組みが推進されています。