
機械式宅配ボックスは、電気を使用しないダイヤル錠やボタン錠で施錠・解錠を行うタイプです。不動産オーナーにとって最も導入しやすい種類として人気を集めています。
機械式の主な特徴
機械式宅配ボックスの最大のメリットは、ランニングコストが0円という点です。電気代がかからず、定期的なメンテナンス費用も最小限に抑えられるため、長期的な運用コストを重視する不動産オーナーに適しています。
設置に関しても、電気工事が不要なため設置場所の自由度が高く、屋外設置にも対応しやすい特徴があります。特に既存物件へのリフォーム導入では、大掛かりな工事を避けられる点が大きなメリットとなります。
ただし、配達業者が暗証番号を誤って記入したり、記入した紙を紛失した場合には、管理者による非常解除キーでの対応が必要になる場合があります。また、経年劣化によるテンキーや施解錠機構の不具合が発生する可能性もあるため、定期的な点検は必要です。
電気式宅配ボックスは、コンピューターで制御するタイプで、コンピュータ式やオンライン式とも呼ばれます。タッチパネルやカードキー、非接触型キーでの操作が特徴的で、機械式よりも高いセキュリティ性能を誇ります。
電気式の主な機能
電気式宅配ボックスの最大の特徴は、防犯性の高さです。デジタル技術を活用したセキュリティシステムにより、暗証番号の頻繁な変更が可能で、不正アクセスのリスクを大幅に軽減できます。
また、オンライン管理機能により、荷物の長期間滞留管理やトラブル時の迅速な対応が可能です。管理センターとの連携により、入居者からの問い合わせにも素早く対応できるため、入居者満足度の向上に直結します。
一方で、24時間電気を使用するためランニングコストが発生し、電気工事が必要なため設置費用も高額になる傾向があります。機器トラブル時には専門業者による対応が必要となるため、維持管理の複雑さも考慮する必要があります。
宅配ボックスの設置タイプは、建物の構造や設置場所の制約によって選択が決まります。それぞれのタイプには独自のメリットがあり、物件の特性に応じた適切な選択が重要です。
主な設置タイプ
据え置きタイプは、施工が簡単でリフォームに向いている特徴があります。地面への固定により安定性が高く、大容量の宅配ボックスも設置可能なため、ファミリー向け物件に適しています。
壁掛けタイプは、限られたスペースでも設置できるコンパクト性が魅力です。小さな荷物を多く受け取る単身者向け物件に最適で、リフォーム時の導入も容易です。
埋め込みタイプは、外観がスッキリ見えるのが最大のメリットで、建物の美観を損なわずに設置できます。ただし、新築時や大規模リフォーム時での設置が前提となります。
ポール建てタイプは、取り出しやすい高さに設置できるため、高齢者や車椅子利用者にも配慮した設計が可能です。バリアフリー対応を重視する物件には特に有効です。
宅配ボックスの鍵システムは、セキュリティレベルと使いやすさのバランスを考慮して選択する必要があります。主要な鍵システムには、それぞれ異なる特徴とセキュリティレベルがあります。
主要な鍵システム
ダイヤルキータイプは、機械式宅配ボックスの代表的な鍵システムです。回転式のダイヤルを使用するため、電気が不要で故障リスクが低い特徴があります。ただし、ダイヤルの回転が重くなったり、数字が見えにくくなったりする経年劣化の問題があります。
デジタルキータイプは、セキュリティ性が非常に高く、暗証番号を頻繁に変更することで安全性を強化できます。操作が迅速かつ簡単で使いやすさも優秀ですが、バッテリーや電源が必要で、電池切れや停電時のリスクがあります。
プッシュキータイプは、ボタン式で直感的な操作が可能です。視覚的にわかりやすく、高齢者でも使いやすい設計が特徴です。ただし、ボタンの摩耗や故障が発生しやすく、定期的なメンテナンスが必要です。
セキュリティ強化のポイント
宅配ボックスの導入は、単なる利便性向上だけでなく、不動産価値の向上と空室対策に大きな効果をもたらします。2021年ヒット予想15位にランクインした宅配ボックスは、賃貸住宅市場で注目される設備となっています。
入居者ニーズの変化と宅配ボックス需要
全国賃貸住宅新聞の2020年人気設備ランキングでは、「この設備があれば周辺相場より家賃が高くても決まる」設備として、宅配ボックスが単身向け物件で3位、ファミリー向け物件で2位にランクインしています。これは、EC市場の拡大と在宅ワークの普及により、宅配便の受け取り頻度が大幅に増加したことが背景にあります。
アットホームの加盟店を対象とした「お金をかけてでも付けたい設備」ランキングでは、マンション編の2位に宅配ボックスがランクインしており、不動産業者からも高く評価される設備であることがわかります。
家賃アップと入居率向上の実現
宅配ボックス設置により、以下の効果が期待できます。
特に、コロナ禍以降のライフスタイル変化により、非対面での荷物受け取りニーズが急激に高まっています。宅配ボックスがない物件では、入居者が再配達の手間や不在時の不便さを感じるため、物件選択の重要な判断基準となっています。
投資回収期間の短縮
宅配ボックス導入による家賃アップ効果を考慮すると、初期投資の回収期間は意外に短いことが多いです。例えば、月額家賃を2,000円アップできれば、年間24,000円の収入増となり、3〜5年程度で初期投資を回収できる計算になります。
さらに、入居者の満足度向上により退去率が下がれば、原状回復費用や仲介手数料などのコストも削減でき、総合的な収益性向上が期待できます。