
担保不動産競売は、抵当権や根抵当権が設定された不動産について、債務者が住宅ローンなどの返済を滞納した際に、債権者である金融機関が抵当権を実行して行う競売手続きです。
この制度の最大の特徴は、債権者が裁判を経ることなく競売を申し立てできる点にあります。抵当権という担保権があることで、債務不履行となった時点で直ちに競売手続きを開始できるのです。
申立人となるのは主に以下のような債権者です。
担保不動産競売では、債務名義を必要とせず、抵当権設定契約書と登記簿謄本があれば申立てが可能です。これにより、債権者は迅速な債権回収を図ることができます。
強制競売は、抵当権を持たない債権者が、確定判決や支払督促などの債務名義に基づいて行う競売手続きです。不動産に対する強制執行の一形態として位置づけられ、債務者の意思を問わずに実施されるため「強制」競売と呼ばれています。
強制競売の申立てに必要な債務名義には以下があります。
これらの債務名義は、債権者名・債務者名のほか、給付請求権の存在・範囲を表記した公的文書として、強制執行の根拠となります。
強制競売では、まず債権者が訴訟提起や調停申立てを行い、債務名義を取得する必要があります。その後、裁判所に強制競売の申立てを行うという二段階の手続きが必要です。
両者の申立要件を比較すると、以下のような違いがあります。
項目 | 担保不動産競売 | 強制競売 |
---|---|---|
申立人 | 抵当権者(金融機関等) | 債務名義を有する債権者 |
必要書類 | 抵当権設定契約書、登記簿謄本 | 債務名義、送達証明書 |
事前手続き | 不要(直接申立て可能) | 訴訟・調停等が必要 |
申立て期間 | 債務不履行後即座に可能 | 債務名義取得後 |
対象債権 | 被担保債権(住宅ローン等) | 一般債権全般 |
この表からも分かるように、担保不動産競売は事前の法的手続きが不要で迅速な債権回収が可能な一方、強制競売は債務名義の取得という前段階の手続きが必須となります。
担保不動産競売の実務では、いくつかの重要な注意点があります。
買受申出資格の制限について、民事執行法68条により、債務者には入札資格がないことが定められています。この規定は法188条により担保不動産競売にも準用されており、債務者が落札しても売却不許可となります。
第三取得者の扱いでは、担保権設定後に物件を取得した第三者については、民法390条により買受申出資格が認められています。これは物上保証の場合を想定した規定です。
破産免責との関係では、最高裁令和3年6月21日決定において、破産免責された債務者の相続人の買受申出資格について判断が示されています。担保不動産競売では破産により債務が免責されても担保権による競売は継続可能です。
実務上重要なのは、競売の取消しに関する問題です。国家行政裁判所や一般裁判所への訴訟により、競売の取消しを求めることが可能ですが、その対象は競売調書となります。
強制競売の手続きは、以下の段階を経て進行します:
第1段階:督促・催告期間(4-6ヶ月)
債権者からの督促状や催告状が郵送され、4~6か月の滞納で期限の利益を喪失します。
第2段階:競売申立て
督促や催告を無視すると、債権者が裁判所に強制競売の申し立てを行います。
第3段階:競売開始決定(数週間)
申し立てから数週間で、裁判所から債務者に「競売開始決定通知」が届きます。
第4段階:現況調査(1-2ヶ月後)
執行官や不動産鑑定士が訪問し、物件の現状調査を実施します。
第5段階:入札・開札(3-6ヶ月後)
配当要求終期の告知後、3~6か月後に開札が行われ落札者が決定します。
第6段階:売却許可決定
裁判所が落札者を審査し、許可を出すと売却が確定します。
第7段階:代金納付・引渡し(1ヶ月以内)
落札者は1か月以内に代金を支払い、代金納付により所有権が移転します。
第8段階:立退き・強制退去
物件の引き渡しに応じない場合、強制退去が命じられます。
全体の期間として、競売開始決定から立退きまで約6~10か月を要しますが、競売開始決定から開札までの約6か月間に適切な対応を取れば、事態の改善が可能な場合があります。