
2020年1月、東京高等裁判所で不動産業界に大きな衝撃を与える判決が下されました。東急リバブルが賃借人から受け取った仲介手数料1ヶ月分のうち、半月分の返還を命じる判決です。
この裁判の発端は、家賃月額24万円の賃貸住宅において、東急リバブルが借主から仲介手数料として家賃1ヶ月分を受け取ったことでした。借主は後に「法律で定められている仲介手数料の上限は半月分だ」と主張し、差額の半月分約12万円の返還を求めて提訴したのです。
裁判の争点となったポイント:
一審では請求が棄却されましたが、二審の地方裁判所で賃借人が勝訴。東急リバブルは上告しましたが、高裁は二審と同じ判決を下し、半月分約12万円の返還を命じました。
東急リバブルの仲介手数料は、法律で定められた上限額に基づいて計算されます。売買の場合と賃貸の場合で異なる仕組みとなっています。
売買仲介手数料の計算方法:
例えば、3,000万円の不動産売却の場合。
賃貸仲介手数料の原則:
居住用賃貸物件の場合、法律上は貸主・借主がそれぞれ0.5ヶ月分を負担することが原則です。ただし、事前に承諾を得ている場合に限り、どちらか一方から1ヶ月分を受け取ることが可能とされています。
東急リバブルでは紹介制度も設けており、紹介された人の仲介手数料は10%割引になります。130万円の仲介手数料の場合、13万円の割引となり、紹介者には5万円分の商品券が贈られます。
東急リバブルでは、さまざまな方法で仲介手数料の値引きが可能とされています。しかし、実際の交渉においては慎重なアプローチが必要です。
値引き交渉のポイント:
ただし、仲介手数料の値引きには注意点もあります。仲介手数料は不動産会社にとって重要な収入源であり、大幅な値引きによってサービスの質が低下するリスクがあります。
値引き交渉時の注意事項:
実際に、仲介手数料が半額や無料になることで、優先度が下がったり、やる気が削がれたりして、売却に時間がかかり、結果的に売値が下がってしまうケースも報告されています。
東急リバブルの仲介手数料裁判は、不動産業界全体に大きな波紋を広げています。この判決により、業界の慣行が見直しを迫られる状況となっています。
業界への主な影響:
多くの不動産会社では、これまで慣習的に「仲介手数料は1ヶ月分です」と伝えているだけで、詳細な法的根拠について説明していませんでした。しかし、今回の判決を受けて、より丁寧な説明が求められるようになっています。
業界の対応策:
一方で、仲介手数料を法律通り0.5ヶ月分に設定した場合、特に低額物件では事業として成り立たないという課題も浮上しています。賃料10万円以下の物件で手数料0.5ヶ月分では、人件費や諸経費を考慮すると採算が合わないのが実情です。
東急リバブルの仲介手数料問題は、不動産業界の構造的な課題を浮き彫りにしました。今後の業界動向を予測し、適切な対策を講じることが重要です。
今後予想される変化:
既に一部の不動産会社では、仲介手数料半額や無料のサービスを提供しています。エイブルやミニミニ、リブマックスなどは0.5ヶ月分(50%)の仲介手数料を設定しており、顧客の初期費用負担を軽減しています。
不動産業界従事者への提言:
宅地建物取引業法の仲介手数料に関する規定を正確に理解し、顧客に適切な説明ができるよう準備する
仲介依頼時の承諾取得方法を明確化し、後日のトラブルを防ぐ仕組みを構築する
仲介手数料に見合うサービス内容を提供し、顧客満足度を高める取り組みを強化する
類似の訴訟リスクを回避するため、社内規程の整備と従業員教育を実施する
技術革新による業界変化:
これらの技術革新により、従来の労働集約型から効率的なサービス提供が可能となり、仲介手数料の在り方も変化していく可能性があります。
東急リバブルの事例は、業界全体にとって重要な転換点となりました。法的コンプライアンスを遵守しながら、顧客価値を最大化する新しいビジネスモデルの構築が求められています。不動産業界従事者は、この変化を機会と捉え、より透明で公正なサービス提供を目指すべきでしょう。