

財団債権とは、破産法2条7項において「破産手続によらないで破産財団から随時弁済を受けることができる債権」と定義されています 。破産手続開始後も通常の配当手続きを経ることなく、破産財団から優先的に弁済を受けることができる特別な債権です 。
参考)https://vs-group.jp/lawyer/hasan/8309
財団債権は破産債権に先立って弁済されるため(破産法151条)、最も優遇された地位を有します 。この制度により、破産手続の円滑な遂行と債権者全体の共同利益の実現が図られています 。
参考)https://saimuseiri.esora-law.com/hasan/classification
本来的財団債権は破産法148条1項に列挙されており、主に破産手続の遂行に必要な共益費用が該当します 。第1号として「破産債権者の共同の利益のためにする裁判上の費用の請求権」があり、破産手続申立ての費用、公告・送達費用、債権者集会開催費用などが含まれます 。
参考)https://grace-hasan.com/column/456/
第2号は「破産財団の管理、換価及び配当に関する費用の請求権」で、破産管財人の報酬、財産目録・貸借対照表の作成費用、換価のための各種手続き費用が該当します 。第4号には「破産財団に関し破産管財人がした行為によって生じた請求権」として、管財人が第三者と締結した契約に基づく債権や不法行為による損害賠償請求権が含まれます 。
参考)https://saimuseiri.esora-law.com/hasan/zaidan
破産手続開始前3か月間の破産者の使用人の給料の請求権は、破産法149条1項により財団債権とされています 。給料の請求権には、退職金を除き、賃金、給与、手当その他名称の如何を問わず、使用人が労働者に対し労働の対価として支払うものすべてが含まれると解されています 。
参考)https://terabelaw.com/280/50032/
退職手当については、破産手続の終了前に退職した使用人の退職手当の請求権のうち、退職前3か月間の給料の総額(その総額が破産手続開始前3か月間の給料の総額より少ない場合は、破産手続開始前3か月間の給料の総額)に相当する額が財団債権となります 。それ以外の労働債権は優先的破産債権として扱われ、一般の先取特権により他の破産債権に優先して配当を受けることができます 。
公租公課の財団債権該当性は、具体的納期限を基準として判断されます 。破産手続開始前の原因に基づいて生じた公租公課のうち、破産手続開始当時、具体的納期限が未到来または具体的納期限から1年を経過していないものが財団債権となります 。
参考)https://www.hasan-c.com/06qa17.html
具体的には、所得税、法人税、消費税、住民税、固定資産税、自動車税などの国税・地方税のほか、健康保険料、厚生年金保険料、国民健康保険料、労働保険料、下水道料等の公課も含まれます 。これに対し、納期限から1年以上経過している公租公課は優先的破産債権とされ、破産財団の管理・換価に関する費用に該当しない破産手続開始後の公租公課は劣後的破産債権となります 。
参考)http://morita.kokoro.la/2017/10/post-680.html
破産手続において双方未履行の双務契約が存在する場合、破産管財人は履行を選択するか解除を選択するかの判断権を有します(破産法53条)。破産管財人が履行を選択した場合、相手方の権利は財団債権となります(破産法148条1項7号)。
参考)https://saimuseiri.esora-law.com/hasan/53
一方、破産管財人が解除を選択した場合、相手方の原状回復請求権は取戻権または財団債権として扱われますが、損害賠償請求権については破産債権として処理されます 。この制度により、破産財団の価値最大化と相手方の保護の両立が図られており、実務上重要な意味を持っています。
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