破産債権と貸倒引当金の基本と実務

破産債権と貸倒引当金の基本と実務

破産債権と貸倒引当金の会計処理と税務上の取扱いについて、計算方法や法的手続きから実務上の注意点まで詳しく解説します。適切な処理方法をご存知ですか?

破産債権と貸倒引当金の基本

破産債権と貸倒引当金の基本概要
📊
破産債権の定義

破産手続開始決定前に生じた財産上の請求権

💰
貸倒引当金の役割

将来の債権回収不能に備えた損失の事前計上

⚖️
法的位置づけ

会計基準と税法の要件に基づく処理方法

破産債権の分類と特徴

破産債権は、破産手続開始決定前に生じた財産上の請求権として定義され、債権者平等の原則に基づいて処理されます 。一般の破産債権は債権額に応じて按分で配当を受ける仕組みとなっており、優先的破産債権と劣後的破産債権に区分されることもあります 。
参考)https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000075

 

破産債権者が手続きに参加するためには「債権届出」の手続きが必要で、この届出がなければ破産財団から配当を受けることができません 。債権届出書の提出期間は、破産手続開始決定から約2週間~4か月の間に定められるのが一般的です 。
参考)https://www.chiyodachuo-jurist.com/blog/corporate-bankruptcy/claims/

 

優先的破産債権には、租税債権、労働債権、日用品供給の請求権などが含まれ、一般の破産債権よりも優先的に配当を受けることができます 。これらの優先順位は法律で明確に定められており、債権回収の確実性を高める仕組みとなっています。
参考)https://vs-group.jp/lawyer/hasan/9279

 

貸倒引当金の会計処理方法

貸倒引当金の計算は、債権を一般債権、貸倒懸念債権、破産更生債権等の3つに分類して行います 。一般債権については貸倒実績率を用いた計算方法が採用され、過去の貸倒実績に基づいて合理的な基準で貸倒見積高を算定します 。
参考)https://biz.moneyforward.com/accounting/basic/44259/

 

破産更生債権等については財務内容評価法を用いて、債権額から担保の処分見積額及び保証による回収見込額を減額した残高について、債務者の支払能力等の状況を考慮して貸倒見積高を算定します 。この場合、簡便法として残額の50%を貸倒引当金とする方法も認められています 。
参考)https://www.ey.com/ja_jp/technical/corporate-accounting/glossary/glossary-ha/hasankoseisaikentou

 

貸倒懸念債権については、財務内容評価法とキャッシュ・フロー見積法の選択適用が可能です 。キャッシュ・フロー見積法では、将来キャッシュ・フローの見積額を使って回収困難と見込まれる貸倒引当金の額を計算します 。
参考)https://www.ey.com/ja_jp/technical/corporate-accounting/commentary/financial-instruments/commentary-financial-instruments-2013-05-24

 

破産債権の税務上の取扱い

税務上の貸倒引当金については、適用対象法人に該当しない場合には損金の額に算入されず、繰入時に申告調整(加算・留保)し、戻入時に認容減算する処理が必要です 。取引先について会社更生手続開始の申立て、民事再生手続開始の申立て、破産の申立て、特別清算開始の申立てをした場合には、債権額の50%相当額について貸倒引当金を設定することができます 。
参考)https://www.city-yuwa.com/glossary/16248/

 

破産手続の場合は、事実上の貸倒れに該当すると解釈できるため、損金経理をしない限り、所得を減額することはできません 。法人税法上の貸倒損失として処理できる場合には、法律上金銭債権が消滅する場合、回収不能な金銭債権の貸倒れ、一定期間取引停止後弁済がない場合の3つの要件があります 。
参考)https://www.ht-tax.or.jp/topics/kashidaore-shori/

 

中小法人については、貸倒実績率を用いる方法に代えて、税法で定められている法定繰入率を用いて計算することができ、この法定繰入率は業種に応じて定められています 。
参考)https://keiriplus.jp/tips/kashidaore_keisan/

 

破産更生債権等の財務内容評価法

財務内容評価法は、経営破綻または実質的に経営破綻に陥っている債務者に対する債権について適用される評価方法です 。この方法では、債権額から担保の売却見込み額または保証の回収見込み額を差し引いた金額をもとに、債務者の財務状態やビジネスの実績を考慮して貸倒見積高を計算します 。
参考)https://blog.uriho.jp/?p=1302

 

具体的な計算式は「貸倒引当金額=債権金額-(担保の売却見込み額または保証の回収見込み額)」となります 。担保の処分見積額及び保証による回収見込額等といった確実に回収できると想定される金額については貸倒見積高からは除かれる仕組みです 。
財務内容評価法では、債務者の現在の支払能力等の状況(資金繰りの状況や、貸借対照表の純資産の金額の程度、流動資産と流動負債の比率等)を総合的に考慮して評価を行います 。正確な見積もりが困難な場合には、残額に50%を乗じた額を貸倒引当金とする簡便法も用いられています 。

債権管理と早期対応の重要性

取引先の破産申立案内が来た際の早期対応は、債権回収の成功率を大きく左右します 。破産債権届出書の提出期限を厳守し、手元にある資料を可能な限り添付した上で債権届出を行うことが重要です 。請求書がない場合でも、破産管財人破産者において保管されている資料や事情聴取を行い、総合考慮の上で債権の存否を判断します。
参考)https://www.legato-ta.jp/news/1440.html

 

中小企業にとって取引先の倒産による連鎖倒産を避けるため、中小企業基盤整備機構の「経営セーフティー共済(中小企業倒産防止共済制度)」への加入も検討すべき対策の一つです 。この制度により、取引先の倒産によるリスクを軽減することができます。
参考)http://www.kanjyoukamoku.com/hasannkouseisaiken.html

 

投資家保護の観点では、証券化における倒産隔離の仕組みにより、優先的に配当を受けられる約定劣後破産債権の制度も活用されています 。これらの制度を理解し、適切な債権管理を行うことで、破産債権の回収可能性を高めることができます。
参考)https://www.nishimura.com/sites/default/files/images/f_070117_hau_tks.pdf