
財産差し押さえは、債権者が債務者から確実に債権を回収するための法的手段として位置づけられています。強制執行の対象となる財産は主に以下の3つに分類されます:
強制執行を申し立てるためには、債務名義(判決書、公正証書など)、送達証明書、執行文の3つの書類が必要不可欠です。特に重要なのは、相手の住所と差し押さえ可能な財産が特定できていることです。
財産差し押さえの手続きは以下のステップで進行します:
STEP1: 債権執行の申立て
債権者が裁判所に対して債権差押命令の申立書と添付書類を提出します。申立書の書式や必要書類は各裁判所のホームページで確認できます。
STEP2: 差押命令の発令
裁判所が申立てを受理すると、債務者と第三債務者(銀行や勤務先など)へ債権差押命令が送付されます。この時点で財産の処分が禁止されます。
STEP3: 取立権の発生
差押命令が送達されてから1週間経過後、債権者に取立権が発生します。
STEP4: 第三債務者からの取り立て
銀行口座の場合は預金の取り立て、給与の場合は会社からの毎月の支払いという形で回収が実行されます。
給与差し押さえでは手取り額の4分の1まで(養育費の場合は2分の1まで)が上限となっています。
効果的な財産差し押さえを実行するためには、事前の財産調査が極めて重要です。調査方法には以下のような手段があります:
不動産の調査
不動産登記簿を取得することで、土地や建物の所有状況を確認できます。ただし、抵当権が設定されている場合は、抵当権者が優先的に回収権を持つため注意が必要です。
弁護士会照会
弁護士に依頼して弁護士会を通じ、金融機関や保険会社に対して財産の有無を調査する手続きです。金融機関ごとに個別の手続きが必要となります。
財産開示手続き
令和2年4月から運用されている制度で、債務者を裁判所に呼び出して財産目録の提出と質問を行います。無断欠席や虚偽答弁には6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
第三者からの情報取得手続き
登記所に対する不動産調査や、養育費・損害賠償事案では市町村や年金事務所への勤務先調査が可能です。
債務者が差し押さえを免れようとする行為には、厳しい刑事罰が設けられています。
強制執行妨害目的財産損壊等罪
これらの行為は債権回収を困難にするだけでなく、債務者自身が刑事責任を負うリスクがあるため、適切な法的対応が重要です。
差し押さえを受ける側としては、任意での支払いや債務整理手続きの検討が現実的な選択肢となります。破産手続開始決定後は個別の強制執行が中止されるため、早期の法的相談が推奨されます。
不動産従事者として特に注意すべき実務上のポイントがあります。
費用対効果の検証
差し押さえる財産の価値が低い場合、手続き費用の方が回収額を上回る「費用倒れ」のリスクがあります。事前の十分な調査と cost-benefit 分析が不可欠です。
他の債権者との競合
複数の債権者が存在する場合、強制執行による回収は早いもの勝ちまたは按分配当となります。他の債権者の存在を事前に調査し、回収見込みを正確に把握することが重要です。
執行停止・取消しのリスク
債務者が破産手続きや民事再生手続きを申し立てた場合、進行中の強制執行が停止される可能性があります。このタイミングを見極めた戦略的な判断が求められます。
不動産の特殊事情
賃貸不動産の場合、賃料債権の差し押さえと建物本体の競売では回収効率が大きく異なります。また、共有持分の差し押さえでは持分のみの競売となるため、想定より大幅に安い価格での落札となる可能性があります。
民事執行法の改正により、令和2年4月から財産調査の手段が拡充されましたが、それでも財産隠しや海外移転などの新たな妨害手法も出現しており、常に最新の法制度と実務動向への注意が必要です。
専門的な財産調査や強制執行手続きについては、経験豊富な弁護士との連携により、確実かつ効率的な債権回収を実現できます。
裁判所公式サイトの民事執行手続についての詳細な説明
札幌弁護士会による財産調査の実務解説