
不動産売却における売却益に対する税金は、譲渡所得税として課税されます。この税金は、所得税・住民税・復興特別所得税の3つで構成されており、他の所得とは分離して計算する分離課税方式が採用されています。
譲渡所得の計算式は以下の通りです。
売却価格 -(取得費用 - 減価償却費用 + 売却費用)- 控除金額 = 譲渡所得金額(売却益)
取得費用に含まれる主な項目。
売却費用に含まれる主な項目。
復興特別所得税は東日本大震災からの復興を目的として設けられた税金で、2037年(令和19年)まで所得税の2.1%が加算されます。
不動産売却益にかかる税率は、所有期間によって大きく異なります。売却した年の1月1日時点での所有期間で判定され、5年以下か5年超かで税率が約半分も変わる重要なポイントです。
短期譲渡所得(所有期間5年以下)の税率:
長期譲渡所得(所有期間5年超)の税率:
注意すべき点は、所有期間の判定基準です。例えば2016年6月に購入した不動産を2021年10月に売却した場合、実質的な所有期間は5年を超えますが、売却年の2021年1月1日時点では5年以下となり、短期譲渡所得として扱われます。つまり、2016年6月購入の不動産は、2022年1月1日以降に売却しなければ長期譲渡所得にならないのです。
この税率差は実務上非常に大きな影響があります。例えば売却益が1,000万円の場合。
その差額は193万1,500円にもなります。売却タイミングの調整だけで、これだけの節税効果が期待できるのです。
不動産売却時の税負担を軽減する特例制度が複数用意されています。最も活用頻度の高い特例が、居住用財産の3,000万円特別控除です。
居住用財産の3,000万円特別控除の概要:
この特例を活用すれば、売却益が3,000万円以下の場合は税金がかからず、3,000万円を超える部分のみが課税対象となります。
10年超所有軽減税率の特例:
所有期間が10年を超えるマイホームの場合、3,000万円控除と併用できる軽減税率が適用されます。
買換え特例:
特定の要件を満たすマイホームの買換えでは、売却益への課税を繰り延べることができます。この特例は3,000万円控除との選択適用となるため、どちらが有利かは個別に検証する必要があります。
これらの特例は確定申告で適用を受ける必要があり、売却した翌年の2月16日から3月15日までに手続きを行います。
不動産売却を個人と法人のどちらで行うかによって、税務上の扱いが大きく異なります。実務では、この違いを理解して適切な選択をすることが重要です。
個人の場合:
法人の場合:
損益通算の実務的な活用例:
法人で不動産売却損が1,000万円、事業利益が2,000万円の場合、課税対象は差引き1,000万円となります。一方、個人では不動産売却損を給与所得などと通算できないため、売却損による節税効果は限定的です。
実務での判断ポイント:
この判断には税理士などの専門家との相談が欠かせません。特に大型物件や投資用不動産の場合は、売却前の所有形態変更も含めて戦略的に検討すべきです。
不動産売却により譲渡所得が発生した場合、売却した翌年に確定申告が必要です。申告漏れは加算税や延滞税の対象となるため、適切な手続きを行うことが重要です。
確定申告の基本スケジュール:
例:2025年1月10日に不動産売却 → 2026年2月16日~3月15日に申告・納税
確定申告に必要な書類:
納税方法と注意点:
譲渡所得税は予定納税の対象外のため、売却翌年に一括納税となります。多額の売却益が見込まれる場合は、事前に納税資金を確保しておくことが重要です。
印紙税と登録免許税の即時支払い:
売却時には以下の税金も発生します。
納税の分割払い:
税務署に申請することで、条件を満たせば延納(分割払い)も可能ですが、年利1.6%程度の利子税がかかります。銀行借入の方が金利面で有利な場合が多いため、資金調達方法は慎重に検討すべきです。
国税庁のホームページには詳細な計算方法や申告書の記載例が掲載されているため、事前に確認することをお勧めします。