地すべり等防止法と地すべり防止区域の指定要件

地すべり等防止法と地すべり防止区域の指定要件

地すべり等防止法により指定される地すべり防止区域の概要と指定要件、行為制限について詳しく解説します。不動産取引での重要事項説明における注意点もお伝えしましょうか?

地すべり等防止法による地すべり防止区域

地すべり防止区域の基本情報
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地すべり等防止法の概要

地すべりとぼた山崩壊による被害を防止・軽減し国土の保全と民生の安定を図る法律

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防止区域の指定権者

国土交通大臣または農林水産大臣が都道府県知事の意見を聞いて指定

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行為制限の目的

地すべりを助長・誘発するおそれのある行為を制限して被害を防止

地すべり等防止法の制定背景と目的

地すべり等防止法は、昭和33年3月31日に法律第30号として制定された法律で、地すべりおよびぼた山の崩壊による被害を除却または軽減することを目的としています 。この法律は、地すべりを防止し、もって国土の保全と民生の安定に資することを基本理念としています 。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0%E3%81%99%E3%81%B9%E3%82%8A%E7%AD%89%E9%98%B2%E6%AD%A2%E6%B3%95

 

地すべりとは、土地の一部が地下水等に起因してすべる現象またはこれに伴って移動する現象のことを指します 。近年の異常気象により台風や局所的大雨が頻発しており、洪水や土砂災害の危険性も高まっている状況下で、この法律の重要性は増しています 。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/journalcpij/56/3/56_743/_article/-char/ja/

 

主務官庁は、国土交通省水管理・国土保全局砂防部砂防計画課と農林水産省農村振興局整備部防災課が共同で所管しており、内閣官房副長官補室、経済産業省、総務省消防庁など他省庁と連携して執行されています 。

地すべり防止区域の指定要件と基準

地すべり防止区域の指定要件は、地すべり等防止法第3条に明確に定められています 。指定を要する区域は、以下の2つの区域を包括する地域(「地すべり地域」と総称)で、公共の利害に密接な関連を有するものです 。
参考)https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sabo/zisuberiboushikuiki.html

 

地すべり区域の要件:

  • 地すべりしている区域
  • 地すべりするおそれのきわめて大きい区域

隣接区域の要件:

  • 地すべりを助長・誘発している地域
  • 地すべりを助長・誘発するおそれがきわめて大きい地域

指定の具体的基準として、地すべり地域の面積が5ヘクタール以上(市街化区域においては、市街化区域及び市街化調整区域に関する都市計画が定められていない都市計画区域にあっては、その都市計画区域)であることが条件とされています 。
参考)https://www.mlit.go.jp/notice/noticedata/sgml/061/78000337/78000337.html

 

地すべり防止区域における制限行為の詳細

地すべり防止区域内では、地すべり等防止法第18条に基づき、地すべりの発生を助長・誘発するおそれのある一定の行為が制限されています 。これらの行為を行う場合は、都道府県知事の許可が必要です 。
参考)https://www.pref.shiga.lg.jp/ippan/shigotosangyou/nougyou/nousonshinkou/18571.html

 

主な制限行為:

  • 地下水を誘致し、又は停滞させる行為で地下水を増加させるもの(政令で定める軽微な行為を除く)
  • 地下水の排水施設の機能を阻害する行為その他地下水の排除を阻害する行為
  • 地表水を放流し、又は停滞させる行為その他地表水のしん透を助長する行為
  • のり切又は切土で政令で定めるもの
  • ため池、用排水路その他の地すべり防止施設以外の施設又は工作物の新築又は改良で政令で定めるもの

一方で、日常生活に必要な軽易な行為については許可が不要とされており、水道管やガス管の埋設、日常生活用の地表水の放流などは制限の対象外となっています 。
参考)https://www.pref.aichi.jp/soshiki/toyotakamo-kensetsu/0000063161.html

 

地すべり防止区域の具体的事例と地域特性

全国各地に指定されている地すべり防止区域の具体例として、滋賀県の雄琴地区と上仰木地区があります 。雄琴地区は昭和35年9月13日に指定され、指定面積は336.21ヘクタールに及びます 。この地区は雄琴、千野、苗鹿、木の岡、坂本、日吉台、仰木の里東、雄琴北の8つの区域に細分化されています 。
参考)https://www.pref.shiga.lg.jp/ippan/shigotosangyou/nougyou/nousonshinkou/18569.html

 

上仰木地区は昭和39年3月9日に指定され、指定面積は64.34ヘクタールとなっています 。これらの地区は農林水産省農村振興局の所管として指定され、農政水産部農村振興課が担当しています 。
地すべり防止区域の管理は、所管省庁によって異なり、国土交通省所管のもの、農林水産省農村振興局所管のもの、農林水産省林野庁所管のものに分かれています 。地域の特性や土地利用状況に応じて、適切な省庁が管理を行っています。
参考)https://nlftp.mlit.go.jp/ksj/gml/datalist/KsjTmplt-A46-v1_0.html

 

地すべり防止区域の不動産取引における重要事項

不動産取引において、地すべり防止区域の存在は重要事項説明の対象となります 。宅地建物取引業者は、取引物件が地すべり防止区域にかかっているか否かを現地の標識確認や都道府県の砂防・林野・農地担当部局での調査により確認する必要があります 。
参考)https://note.com/nagoya_kokusyo/n/n617da4de4124

 

重要事項説明においては、地すべり等防止法に基づく制限行為の内容と許可の必要性について詳細に説明することが求められます 。特に、建築工事や土地の形状変更を伴う開発行為を計画している場合は、事前に制限行為に該当するかどうかの確認が不可欠です 。
参考)https://chiou.jp/jisubei/

 

地すべり防止区域の確認方法として、国土数値情報のデータベースや各都道府県の情報マップが活用できますが、最終的な判断は所管の県土整備事務所や農林事務所での確認が推奨されます 。法改正により、2020年9月の都市再生特別措置法施行令改正で、地すべり防止区域は災害レッドゾーンとして居住誘導区域から原則除外されることが明記されており、都市計画上の重要な考慮要素となっています 。
参考)https://sogo-bousai.pref.fukuoka.lg.jp/sabo/sabousanpou/