

電気工事士法では、昭和62年の法律改正により自家用電気工作物が新たに規制対象として追加されました 。同法第2条第2項において、自家用電気工作物は「電気事業の用に供する電気工作物及び一般用電気工作物以外の電気工作物であって、政令で定めるものを除く」と定義されています 。
参考)https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000139
具体的には、ビルや工場等の発電・変電設備、需要設備等が該当し、特に最大電力500kW未満の需要設備が主な規制対象となっています 。この規制は、中小ビル等の状況変化を踏まえた安全確保の観点から導入されたものです 。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/law/files/koujisichikujyou.pdf
電気事業法上の自家用電気工作物すべてが電気工事士法の対象となるわけではなく、発電所、変電所、最大電力500kW以上の需要設備、送電線路(附属する開閉所を含む)及び保安通信設備については規制対象から除外されています 。これらの施設では設置者が十分な電気保安知見を有し、事故発生率も低いためです 。
参考)https://nega.or.jp/publication/press/2009/pdf/2009_02_08.pdf
電気工事士法施行規則第1条の2では、法の適用除外となる自家用電気工作物を詳細に規定しています 。除外対象には以下の施設が含まれます:
参考)https://laws.e-gov.go.jp/document?lawid=335M50000400097
参考)https://www.safety-kinki.meti.go.jp/electric/jikayou/jikayoudennkikousakubutu.html
参考)https://www.eei.or.jp/first-class/magazine_pdf/magazine_vol40.pdf?231205
これらの除外規定は、設置者の技術的専門性と安全管理体制の確実性に基づいています 。大規模設備の設置者は電気保安に関する十分な知見を有し、電気工事業者の選定を含めて適切な保安体制を確保できると判断されているためです 。
第一種電気工事士は、自家用電気工作物、一般用電気工作物及び小規模事業用電気工作物の工事を行うことができます 。具体的には、電力会社から高圧で受電するビルや工場に設置する受電電力500kW未満の電気設備が対象となります 。
参考)https://www.eei.or.jp/column/archives/161
第一種電気工事士の作業範囲には、受電した高圧電気をキュービクルで低圧に変換し、屋内配線や配電盤を通じて照明器具、情報機器、エレベータ、空調設備、製造設備などに電気を供給する工事が含まれます 。ただし、ネオン工事や非常用予備発電装置工事などの特殊電気工事は除外されます 。
参考)https://nega.or.jp/publication/press/2012/pdf/2012_12_08.pdf
免状交付には実務経験要件があり、第一種電気工事士試験合格後、大学等での電気工学課程修了者は3年以上、その他は5年以上の実務経験が必要です 。また、免状交付後は5年ごとの定期講習受講が義務付けられています 。
認定電気工事従事者は、電気工事士法第4条の2第4項に基づき経済産業大臣が認定する資格で、自家用電気工作物の簡易電気工事に従事できます 。簡易電気工事とは「電圧600V以下で使用する自家用電気工作物に係る電気工事(電線路に係るものを除く)」と定義されています 。
参考)https://www.meti.go.jp/information/license/c_text27.html
この資格は国家試験ではなく、以下の要件を満たす者に交付されます。
認定電気工事従事者制度により、第二種電気工事士資格者が仕事範囲を拡大したり、第一種電気工事士試験合格者が実務経験不足で免状取得前の期間に工事従事できるようになります 。
参考)https://rakuoh.jp/contents/knowledge/what-certified-electrical-worker.html/
自家用電気工作物の電気工事では、工事段階での不完全施工による感電や火災等の事故防止が重要な目的となっています 。電気工事士法は、こうした災害防止を目的として資格制度と義務規定を設けています 。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/sangyo/electric/detail/koji.html
実際の運用では、最大契約電力500kW未満の自家用電気工作物において、通常の電気工事は第一種電気工事士が、簡易な工事は認定電気工事従事者が担当する体制となっています 。特殊電気工事については、非常用予備発電装置工事では特種電気工事資格者(非常用予備発電装置)、ネオン設備工事では特種電気工事資格者(ネオン工事)が必要です 。
参考)https://todenkyo.or.jp/files/libs/4339/20250124130537288.pdf
近年の技術革新により、太陽光発電設備や風力発電設備などの分散型電源の普及が進んでおり、これらの設備についても出力規模に応じて一般用電気工作物または自家用電気工作物として分類されます 。宅建業界においても、不動産開発や建物管理において電気設備の適切な施工と保安管理体制の理解が重要性を増しています。
参考)https://denki-no-shinzui.com/denkijigyoho/