宅建業法 適用除外の概要
宅建業法の適用除外は、宅地建物取引業法が適用されない特殊なケースを指します。これらの知識は、宅建資格試験でも頻出の重要トピックです。適用除外には主に3つのパターンがありますが、それぞれ適用除外の範囲が異なるため、注意が必要です。
国や地方公共団体は全面的に宅建業法の適用が除外されますが、業者間取引や信託会社・信託銀行の場合は、一部の規定のみが適用除外となります。これらの違いを正確に理解することが、宅建資格取得の近道となるでしょう。
宅建業法の適用除外 一問一答
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宅建業法 適用除外の対象となる国・地方公共団体
宅建業法第78条第1項によると、国および地方公共団体は宅建業法の適用から完全に除外されています。これには、国とみなされる都市再生機構や、地方公共団体とみなされる地方住宅供給公社なども含まれます。
具体的な適用除外の対象は以下の通りです:
- 国
- 地方公共団体
- 独立行政法人都市再生機構
- 地方住宅供給公社
これらの機関は、宅建業の免許を取得する必要がなく、また宅建業法の規制も受けません。ただし、これらの機関と取引を行う一般の宅建業者には、通常通り宅建業法が適用されることに注意が必要です。
宅建業法 適用除外の業者間取引の特徴
業者間取引における適用除外は、宅建業者が自ら売主となる宅地または建物の売買で、買主も宅建業者である場合に適用されます。この場合、以下の8つの規定が適用除外となります:
- 他人物売買の制限
- クーリング・オフ
- 損害賠償額の予定等の制限
- 手付の額の制限
- 瑕疵担保責任の特約
- 手付金等の保全
- 割賦販売の契約解除等の制限
- 所有権留保の禁止
これらの規定が適用除外となる理由は、取引の両当事者が不動産取引に精通している宅建業者であるため、一般消費者保護のための規制が不要と考えられるからです。
宅建業法 適用除外の信託会社・信託銀行の特例
信託業法による一定の免許を受けた信託会社や、信託業務を兼営する金融機関(信託銀行など)は、宅建業法の免許に関する規定が適用除外となります。具体的には、以下の規定が適用除外となります:
- 第3条から第7条まで(免許に関する規定)
- 第12条(免許の有効期間)
- 第25条第7項(更新の登録)
- 第66条および第67条第1項(監督処分)
ただし、これらの機関が宅建業を営む場合は、国土交通大臣に届出を行う必要があります。また、免許に関する規定以外の宅建業法の規定は適用されるため、業務停止処分などを受ける可能性があることに注意が必要です。
宅建業法 適用除外の具体的な事例と注意点
宅建業法の適用除外には、いくつかの具体的な事例があります。以下に代表的なものをまとめます:
- 宅地でない土地の取引
- 用途地域外の農地や山林の取引(建物の敷地に供する目的がない場合)
- 土地や建物の管理業務
- 賃貸管理業務(アパート、マンション、ビル)
- 分譲マンションの管理人業務
- 駐車場の管理人業務
- 自ら貸借する行為
- 宅建業者が自ら所有するマンションを賃貸する行為
- 宅建業者がマンションを一括借上げして転貸する行為
- 宅地や建物の貸借とはいえない契約に係る媒介や代理行為
- 駐車場や車庫の利用契約
- ホテルや旅館の利用契約
- デパート等の出店契約
- 運動場等の利用契約
- 老人ホーム等の各種施設の利用契約
- 外国の土地に関する取引
- 日本の統治権外での取引
これらの行為には宅建業法が適用されないため、宅建業者がこれらの業務で問題や紛争を生じさせても、宅建業法違反にはなりません。重要事項説明や契約書に関する規制も受けません。
宅建業法が適用されない不動産取引の詳細についてはこちらを参照
宅建業法 適用除外の意外な落とし穴と対策
宅建業法の適用除外には、意外な落とし穴が存在します。特に注意が必要なのは以下の点です:
- 国・地方公共団体との取引
国や地方公共団体は宅建業法の適用除外ですが、これらの機関と取引を行う宅建業者には通常通り宅建業法が適用されます。つまり、国や地方公共団体を相手に取引する場合や、これらの機関から依頼を受けた場合は、宅建業法を遵守する必要があります。
- 業者間取引の範囲
業者間取引の適用除外は、宅建業者が自ら売主となる場合のみに適用されます。宅建業者が買主の場合や、媒介・代理の場合には適用されないので注意が必要です。
- 信託会社・信託銀行の特例
免許に関する規定は適用除外となりますが、その他の規定は適用されます。業務停止処分などのリスクがあることを忘れてはいけません。
- 宅地の定義
用途地域内の土地は、目的を問わず宅地に該当します(ただし、道路、公園、水路を除く)。また、市街化調整区域内の土地も、建物建設が可能な場合があるため、宅地に該当する場合が多いです。
- 借地権と地上権の取り扱い
借地権と地上権の売買や譲渡を媒介(代理)する行為には、宅建業法が適用されないという主張がありますが、実際には適用されると考えるべきです。
これらの落とし穴を避けるためには、以下の対策が有効です:
- 取引の相手や内容を慎重に確認し、適用除外に該当するかどうかを判断する
- 適用除外に該当する場合でも、宅建業法の精神に則った対応を心がける
- 疑問がある場合は、所管の行政機関や弁護士に相談する
宅建業法第78条(適用の除外)の詳細解説はこちらを参照
宅建業法の適用除外は、一見単純に見えて実は複雑な側面があります。宅建資格取得を目指す方は、これらの細かい点にも注意を払い、正確な理解を心がけましょう。適用除外の知識は、実務においても非常に重要となるため、しっかりと身につけておくことをおすすめします。