
2024年は不動産業界にとって非常に重要な転換点となりました。令和6年度に施行された一連の事業法改正により、不動産取引の透明性向上と市場の健全化が大きく進展しています。特に宅建業界では、これまで任意であった相続登記の義務化や建物状況調査制度の拡充など、実務に直結する重要な変更が多数実施されました。
参考)https://keiyaku-watch.jp/media/hourei/2024-houkaisei/
これらの法改正は、所有者不明土地問題の解決や中古住宅市場の活性化を主目的としており、不動産業界全体の構造改革を促進する内容となっています。宅建業者にとっては業務プロセスの見直しや顧客への説明責任の強化が求められる一方で、市場の信頼性向上につながる重要な制度改正です。
参考)https://www.liq-k.jp/blog/blog20240214/
2024年4月1日から施行された相続登記義務化は、不動産業界における最も重要な法改正の一つです。この改正により、不動産を相続した相続人は、相続したことを知った日から3年以内に法務局へ相続登記の申請を行うことが法的義務となりました。違反した場合は10万円以下の過料が科されるという罰則も設けられています。
参考)https://saitama.zennichi.or.jp/column/inheritance-registration-240401/
従来は任意であった相続登記が義務化されたことで、宅建業者は顧客への適切な説明と手続き支援がより重要になっています。特に注目すべきは、この義務化が法改正以前の相続案件にも遡及適用される点です。2024年4月1日以前に相続した未登記の不動産についても、2027年3月31日までに登記を完了させる必要があります。
参考)https://legacy.ne.jp/knowledge/now/souzoku-tetsuduki/517-souzokutouki-gimuka-keii-tetsuduki/
救済措置として「相続人申告登記」制度も新設されました。この制度により、遺産分割が未了の場合でも、相続人であることを申告することで一時的に義務違反を回避できる仕組みが整備されています。
参考)https://law-bright.com/corporationlaw/contents/company/real-estate-registration-legal-reform/
建物状況調査に関する宅建業法施行規則の改正も、2024年4月から重要な変更が加えられました。従来は調査実施後1年以内の調査結果のみが重要事項説明の対象でしたが、鉄筋コンクリート造または鉄骨鉄筋コンクリート造の共同住宅等については、調査実施後2年以内の結果まで有効とする期間延長が実施されました。
参考)https://www.shigyo.co.jp/post_topics/tatemonozyokyoyousa/
この改正により、マンションなどの共同住宅における建物状況調査の実用性が大幅に向上しています。共同住宅では住戸内と住戸外で異なる調査者が調査を実施することが可能となり、それぞれの調査範囲と責任分担を明確化することで、より柔軟な調査体制が構築できるようになりました。
参考)https://ss-up.net/kaisei2024.html
宅建業者は媒介契約時に建物状況調査のあっせんを「無」とする場合、その理由を明記することが義務付けられました。これにより、売主・買主双方に対する情報提供の充実が図られ、中古住宅市場における取引の安全性向上が期待されています。
参考)https://www.j-anshin.co.jp/column/chuko/a95
2024年度の宅建業法施行規則改正では、不動産取引における情報提供義務の強化が図られています。重要事項説明書への記載項目が拡充され、建物状況調査の実施有無、調査実施年月日、調査実施者の氏名・所属、調査結果の概要について詳細な説明が必要となりました。
告知書の活用促進も重要な改正点です。売主から提供される告知書には、土地関係では境界確定状況や土壌汚染調査の状況、建物関係では増改築履歴や石綿使用の有無調査など、多岐にわたる項目の記載が求められています。これにより、買主がより多くの情報に基づいて購入判断を行える環境が整備されました。
デジタル化の推進も注目される改正内容です。要件を満たしたデジタルサイネージによる標識掲示が許可されるなど、業務の効率化と利便性向上を図る措置も導入されています。
空き家の譲渡所得3000万円特別控除制度の拡充は、不動産市場に大きな影響をもたらす改正です。2024年1月1日以降の譲渡については適用要件が緩和され、売主が売却後に買主が耐震改修や更地化を行う場合でも特例の適用が認められるようになりました。
参考)https://toyokeizai.net/articles/-/723064
この改正により、空き家の流通促進効果が期待されています。従来は売主が耐震改修や更地化を完了してからでないと特例を受けられませんでしたが、買主による改修・解体でも適用可能となったことで、空き家取引のハードルが大幅に下がりました。
一方で、相続人が3人以上の場合は控除上限額が2000万円に引き下げられる変更も実施されており、複数相続人による空き家相続には注意が必要です。宅建業者は顧客に対してこれらの制度変更について適切な説明を行うことが重要になっています。
2024年の事業法改正は、宅建業界のデジタル化と透明性向上を大きく推進する内容となっています。2025年1月からはレインズへの物件取引状況登録が義務化され、いわゆる「囲い込み」防止対策が強化される予定です。これにより、不動産流通市場の公正性がさらに向上することが期待されます。
参考)https://keiyaku-watch.jp/media/hourei/2024-seiritsu-houkaisei/
業者票の記載事項改正や従業者名簿の記載方法見直しなど、業務運営の透明化も段階的に進められています。2025年4月からは宅建業者名簿の閲覧制度運用方法も見直される予定で、業界全体の情報公開がより進展します。
参考)https://keiyaku-watch.jp/media/hourei/takkengyo_kaisei2025/
これらの改正により、宅建業者には従来以上の専門性と説明責任が求められることになります。しかし、市場の信頼性向上と取引の安全性確保により、業界全体の健全な発展が促進されると期待されています。顧客満足度の向上と業務効率化を両立させる新しい業務体制の構築が、今後の成功の鍵となるでしょう。
参考)https://www.businesslawyers.jp/articles/1371