
電子記録債権の中でも最も普及しているでんさいは、株式会社全銀電子債権ネットワーク(でんさいネット)が提供するサービスです 。でんさいは手形と同様に期日指定での決済が可能でありながら、印紙税が不要で事務効率が大幅に向上します 。
参考)https://www.kendweb.net/tip/446969/
でんさいの最大の特徴は分割譲渡が可能な点です。従来の手形では紙に記載された金額全体でしか譲渡できませんでしたが、電子記録債権では必要な分だけを分割して譲渡することができるため、資金調達の柔軟性が飛躍的に高まりました 。
参考)https://kikuchi-ssl.securitysite.jp/app-def/S-102/?p=628
電子手形(電手)は、既存の手形システムをベースに電子化したもので、全国の手形交換所を経由して運営されます 。電子手形は従来の手形と同じ取扱いながら、電子化により紛失や盗難のリスクが低減され、期日決済の確実性が向上しています。
ただし、でんさいとは異なり分割譲渡ができない制約があります。これは従来の手形システムとの互換性を重視した結果であり、資金調達の柔軟性ではでんさいに劣る面があります 。
電子手形の利用には手形交換所への参加が前提となるため、地域や業種によって利用できる範囲に制限があることも特徴の一つです。しかし、手形文化に慣れ親しんだ企業にとっては移行しやすいシステムとして位置づけられています。
電子債権記録機関は、金融庁から指定を受けた専門機関であり、2024年10月現在、全国で5社が指定されています 。これらの機関は電子記録債権の発生・譲渡・消滅に関する記録を管理する重要な役割を担っています。
参考)https://www.densai.net/faq/faq_detail.html?id=162
指定されている電子債権記録機関は以下の通りです。
参考)https://www.fsa.go.jp/menkyo/menkyoj/denshisaiken.pdf
でんさいネットは参加金融機関数が最多の493社に達しており、最も普及している電子債権記録機関として機能しています 。
各電子記録債権の種類による違いを理解することは、企業の資金調達戦略を立てる上で極めて重要です。でんさいネット、手形交換所、独自機関方式それぞれに特徴的な機能があります 。
でんさいネットは分割譲渡機能が充実しており、債権の一部を必要に応じて資金化できる点が最大の強みです。手形交換所ベースの電子手形は分割譲渡が不可能ですが、従来の手形システムとの連続性が保たれています。独自機関方式では、各電子債権記録機関の方針により機能が異なるため、利用前の詳細確認が必要です。
印紙税についても種類による差があり、でんさいと独自機関方式では基本的に印紙税が不要となりますが、電子手形では従来の手形と同様の税制が適用される場合があります 。
企業が電子記録債権の種類を選択する際には、単純な機能比較だけでなく、取引先との互換性や業界慣行を考慮する必要があります。建設業界では下請け構造が複雑なため、分割譲渡機能を持つでんさいが資金繰り改善に特に有効です 。
参考)https://biz.moneyforward.com/accounting/basic/77559/
一方、製造業では既存の手形取引が根強く残っているため、電子手形への段階的移行が現実的な選択となることが多いようです。また、地域金融機関との関係性が強い中小企業では、取引銀行が参加している電子債権記録機関を優先的に検討することが重要です 。
参考)https://www.densai.net/faq/faq_detail.html?id=4
さらに、2026年の約束手形廃止方針を受けて、種類選択の緊急性が高まっています。企業は自社の取引特性を分析し、最適な電子記録債権の種類を早期に決定する必要があります 。