ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの違い

ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの違い

ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの会計処理や判定基準にはどのような違いがあるのか?宅建業界で知っておくべきリース取引の基本知識について詳しく解説します

ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの違い

リース取引の基本分類
📊
ファイナンス・リース

実質的に購入と同様の取引で所有権移転リスクを伴う

🏢
オペレーティング・リース

賃貸借契約と同様の取引で使用権のみを得る

⚖️
判定基準

解約可能性とフルペイアウト基準により決定される

リース取引は、企業が設備や不動産などの資産を取得する際の重要な選択肢の一つであり、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの2種類に大別されます 。両者の最も根本的な違いは、リース物件の経済的実質における所有権の移転リスクを負うかどうかという点にあります 。この分類は会計処理方法を決定する上で極めて重要で、宅建業界においても不動産の賃貸借契約や設備リースを扱う際に深く関わってきます 。
参考)https://www.manegy.com/news/detail/8887/

 

ファイナンス・リースの所有権移転と会計処理

ファイナンス・リース取引は、リース期間終了後に所有権が移転する「所有権移転ファイナンス・リース」と、所有権が移転しない「所有権移転外ファイナンス・リース」に細分化されます 。所有権移転ファイナンス・リースでは、借手はリース契約開始時にリース資産とリース債務を貸借対照表に計上し、実質的に売買取引と同様の会計処理を行います 。具体的には、リース資産100万円に対してリース債務100万円を計上し、その後はリース料支払時に元本返済と利息相当額に分けて処理します 。
参考)https://www.keihi.com/column/5590/

 

減価償却については、リース資産をリース物件の経済的使用可能予測期間を耐用年数として、自社所有資産と同様の償却方法で実施します 。これにより、ファイナンス・リースはオフバランス化できない取引として、財務諸表上に資産と負債が明確に表示されるのです 。宅建業界では、事務所や店舗の設備リースでファイナンス・リースを選択した場合、このような処理が求められることになります。
参考)https://human-trust.co.jp/ht-finance/column/tips/b-finance-lease/

 

オペレーティング・リースの中途解約と経費処理

オペレーティング・リース取引は、ファイナンス・リース以外のすべてのリース取引を指し、契約期間中の中途解約が可能であるか、または借手がリース物件に係るすべての費用を負担しない取引です 。会計処理では、通常の賃貸借契約と同様にリース料支払時に単純に費用計上するだけで、資産・負債の計上は行いません 。具体的には、月額5万円のリース料を支払った場合、「リース料5万円/現金5万円」という単純な仕訳のみで済みます 。
参考)https://boki.funda.jp/blog/article/lease-transaction

 

中途解約が発生した場合には、未払いリース料を「リース解約損」として一括計上し、違約金がある場合は「雑損失」として別途処理します 。例えば、未払いリース料80万円と違約金10万円が発生した場合、「リース解約損800,000円、仮払消費税80,000円、雑損失100,000円/普通預金980,000円」という仕訳を行います 。この処理方法により、オペレーティング・リースはオフバランス処理が可能で、財務指標への影響を最小限に抑えることができます 。
参考)https://www.cosmo-mycar.com/column/carlease/085/

 

ファイナンス・リースの判定基準とフルペイアウト

ファイナンス・リース取引に該当するかどうかは、「解約不能」と「フルペイアウト」の2つの要件を満たすかで判定されます 。解約不能とは、リース期間中において中途解約が一切認められない契約条件を意味します。フルペイアウトの判定には「現在価値基準」と「経済的耐用年数基準」の2つの基準があり、いずれか一方を満たせば要件を満たしたことになります 。
参考)https://biz.moneyforward.com/accounting/basic/57536/

 

現在価値基準では、リース料総額の現在価値がリース物件の見積現金購入価額のおおむね90%以上である場合にフルペイアウトと判定されます 。経済的耐用年数基準では、解約不能のリース期間が物件の経済的耐用年数のおおむね75%以上である場合にフルペイアウトと判定されます 。宅建業界で扱う不動産関連設備のリース契約では、これらの基準を正確に把握することで、適切な会計処理方法を選択できるのです。

オペレーティング・リースの減価償却と新リース基準

従来のオペレーティング・リース取引では減価償却の概念は存在せず、リース料は単純に各期の費用として処理されていました 。しかし、2019年1月1日以降に事業年度が開始される企業には新リース会計基準(IFRS16号)が適用され、オペレーティング・リースも原則としてオンバランス化が求められるようになりました 。新基準では「使用権資産」と「リース負債」を計上し、使用権資産については通常の固定資産と同様に減価償却を実施します 。
参考)https://biz.moneyforward.com/accounting/basic/53550/

 

新リース基準の適用により、従来オフバランスであった多くのリース取引が貸借対照表に計上されることとなり、総資産や負債の増加によってROAや自己資本比率などの財務指標に影響を与えます 。ただし、短期リース(12ヶ月以下)と少額資産のリース(新品価額が5,000ドル以下)については従来通りの処理が認められる免除規定も設けられています 。宅建業界でも、オフィス賃貸や設備リースを扱う企業は、この新基準への対応が必要になっています。
参考)https://www.biz-integral.com/feature-column/column/ifrs16_3/

 

ファイナンス・リースにおける不動産取引の特殊性

不動産のファイナンス・リース取引では、土地と建物で判定基準が異なるという特殊性があります 。土地には経済的耐用年数が存在しないため、土地の賃貸借契約については所有権移転がある場合のみファイナンス・リースとみなし、それ以外はすべてオペレーティング・リースに区分されます 。一方、建物については通常のリース判定基準(現在価値基準と経済的耐用年数基準)が適用されます。
参考)https://note.com/kkkkk3333/n/n83c1f0dbc98c

 

土地と建物を一括してリースする場合には、リース料を合理的な方法で土地部分と建物部分に分割し、それぞれ別々にファイナンス・リース判定を行う必要があります 。例えば、定期借家契約で土地・建物をリースする場合、建物がファイナンス・リースに該当しても、土地は所有権移転がないためオペレーティング・リースとなることがあります。このような複雑な判定が求められるため、宅建業界では不動産リース取引において高度な専門知識が必要とされています。
リース会計に関する詳細な判定基準や実務手続きについては、公益社団法人リース事業協会の公式サイトで確認できます。

 

リース会計基準の概要 - 公益社団法人リース事業協会
新リース会計基準IFRS16号の詳しい解説と実務への影響については、会計専門サイトで確認できます。

 

IFRS第16号とは?新リース会計基準の徹底解説と実務への影響