
不動産投資で不労所得を得る最も基本的な仕組みは、収益物件を購入して入居者に貸し出すことで家賃収入を得ることです。例えば、5000万円のアパートを購入し、年間500万円の家賃収入を得る場合を考えてみましょう。
年間の必要経費が150万円、金融機関への返済が280万円だった場合、手元に残る70万円が「キャッシュフロー(税引前)」となります。このキャッシュフローがプラスであれば、毎月の副収入を得られている状態です。
不動産投資の大きな特徴は、株式投資やFX投資と異なり、不動産という現物資産を担保にして金融機関から融資を受けられることです。条件によっては頭金ゼロのフルローンも可能で、特に公務員や大手企業勤務のサラリーマンは銀行からの信頼も厚く、融資が受けやすいとされています。
不動産投資には「貯蓄効果」という重要な側面があります。先ほどの例で金融機関への返済が年間280万円とした場合、返済が進むにつれて残債が減少し、返済期間終了時には5000万円のアパートが借入のない資産として完全に手元に残ります。
これは見方を変えれば、年間280万円を貯蓄しているのと同じ効果があり、この貯蓄を入居者からの家賃で行えるため、「借入を利用して他人のお金で貯蓄ができる」という不動産投資独特の貯蓄効果を享受できます。
さらに、不動産投資では以下のような複合的な効果も期待できます。
月20万円の不労所得を得るための具体的な投資計算を見てみましょう。不動産投資では「返済後利回り」という指標が重要で、これは経費を引いて最終的に手元に残る家賃収入をもとに計算します。
返済後利回り(%)=(年間家賃収入 ー 年間の必要経費 ー 投資用ローン返済額)÷ 物件価格 × 100
返済後利回りの理想は2%以上とされており、この数値を基に月20万円の不労所得を得るために必要な投資金額を計算すると、物件価格が1億2,000万円となります。
しかし、この金額は一般的なサラリーマンには現実的ではありません。そこで推奨されるのが段階的な投資拡大戦略です。
段階的投資拡大の例
複数の収益物件を所有することで、それぞれの物件価格を抑えながらリスクも分散できるため、より安定した賃貸経営が可能になります。
不動産投資の収益性を正確に把握するためには、表面利回りだけでなく実質利回りを理解することが重要です。表面利回りは単純に「年間家賃収入÷物件価格×100」で計算されますが、実際の収益性を測るには各種経費を考慮した実質利回りを見る必要があります。
不動産投資の主な経費項目
東京都内のワンルームマンション投資の具体例を見てみましょう。
投資条件
年間支出
この場合、年間収支は96万円 - 121万円 = -25万円となり、ローン返済期間中は赤字となります。しかし、ローン完済後は年間支出が30万円となり、収入との差額61万円が純粋な不労所得となります。
不動産投資における税務戦略は、不労所得の実質的な収益性を大きく左右する重要な要素です。不動産所得は総合課税の対象となり、給与所得と合算して所得税が計算されるため、高所得者ほど節税効果が大きくなります。
主な節税効果
特に減価償却費は実際の現金支出を伴わない「帳簿上の経費」であるため、キャッシュフローを悪化させることなく所得税を軽減できる優れた節税手法です。
減価償却の計算例(RC造マンション)
この32万円は毎年経費として計上でき、所得税率30%の場合、年間約9.6万円の節税効果があります。
ただし、減価償却費は建物の取得価額を限度とするため、永続的な節税効果ではないことに注意が必要です。また、売却時には減価償却費相当額が譲渡所得の計算で調整されるため、出口戦略も含めた総合的な税務プランニングが重要です。
国税庁の不動産所得に関する詳細な税務取扱いについては、以下のリンクで確認できます。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1370.htm
「不動産投資は不労所得」という認識は、現実とは大きく異なります。近年の不動産業界では、不労所得で稼げるという考えは幻想に近いとされています。入居者対応や空室対策、設備工事や出口戦略など、不動産オーナー自身が決断を迫られる機会が随所にあります。
不動産投資の主なリスク要因
家賃収入を得る場合、日常的な管理業務はほとんどを管理会社に委託できますが、はじめから何もせずに収入を得られるわけではありません。収入を得られる物件の選定や不動産の契約・管理会社の選定などは、自分で時間をかけて行う必要があります。
また、日常の管理業務を委託できても、管理会社との連絡や収支の把握、物件の状況確認などは必要です。何もせずに管理会社に丸投げしていると、物件の維持ができていない場合や入居者を確保できない可能性もあります。
現実的な不動産投資の管理業務
不動産投資を成功させるためには、これらの管理業務を適切に行い、長期的な視点で物件価値を維持・向上させる努力が不可欠です。