
マンション投資における減価償却は、節税の核となる仕組みです。建物の構造によって法定耐用年数が決められており、その年数で建物価格を分割して毎年経費計上できます。
構造別の法定耐用年数と減価償却費
例えば、2,500万円のRC造マンションを購入した場合、年間約53万円(2,500万円÷47年)を減価償却費として計上できます。この費用は実際の現金支出を伴わないため、その分だけ課税所得を減らすことができ、大きな節税効果が得られます。
減価償却費の計算では、土地部分は対象外となり、建物部分のみが計算対象となることに注意が必要です。一般的に、マンションの場合は建物:土地の割合が7:3程度になることが多いため、物件価格の約70%が減価償却の対象となります。
💡 意外な節税テクニック
築年数が経過した中古物件の場合、法定耐用年数を過ぎていると「法定耐用年数×20%」または4年のいずれか長い期間で償却できます。これにより、短期間で大きな減価償却費を計上でき、高い節税効果を得られます。
損益通算は、不動産所得の赤字を給与所得などの他の所得と相殺できる制度です。この仕組みにより、マンション投資で会計上の赤字を作り出し、給与所得から差し引くことで課税所得を圧縮できます。
損益通算の具体的な計算例
この50万円の赤字を給与所得800万円から差し引くと、課税所得が750万円に圧縮されます。所得税率23%・住民税10%の場合、約16.5万円の節税効果となります。
損益通算が最も効果を発揮するのは、給与所得が高い方です。所得税は累進課税のため、所得が高いほど税率も高くなり、同じ赤字額でもより大きな節税効果を得られます。
所得別の税率と節税効果
課税所得 | 所得税率 | 住民税率 | 合計税率 |
---|---|---|---|
330-695万円 | 20% | 10% | 30% |
695-900万円 | 23% | 10% | 33% |
900-1,800万円 | 33% | 10% | 43% |
1,800万円超 | 40% | 10% | 50% |
マンション投資では、家賃収入を得るために必要な費用を経費として計上できます。適切な経費計上により、課税所得を効果的に圧縮し、節税効果を最大化できます。
計上可能な主な経費項目
🏢 管理・運営関連費用
🔧 維持・修繕費用
📋 その他の経費
これらの経費を適切に計上することで、不動産所得を大幅に圧縮できます。特に、修繕費は一度に大きな金額を経費計上できるため、高い節税効果が期待できます。
💡 経費計上の注意点
修繕費と資本的支出の区別が重要です。修繕費は全額その年の経費となりますが、資本的支出(設備のグレードアップ等)は減価償却の対象となり、複数年にわたって経費計上する必要があります。
節税効果を最大化するには、物件選びが極めて重要です。構造や築年数、建物割合などを戦略的に選択することで、大きな節税メリットを得られます。
高い節税効果を得られる物件の特徴
🏗️ 木造アパートの優位性
📊 建物割合の重要性
土地は減価償却の対象外のため、建物割合が高い物件ほど節税効果が高まります。一般的には以下の目安があります。
🏠 築年数による戦略的選択
築年数 | 償却期間 | 年間償却率 | 節税効果 |
---|---|---|---|
新築木造 | 22年 | 4.5% | 標準 |
築15年木造 | 7年 | 14.3% | 高 |
築25年木造 | 4年 | 25% | 最高 |
地域別の投資戦略
都心部の区分マンションは建物割合が低めですが、安定した家賃収入が期待できます。一方、郊外の一棟アパートは建物割合が高く、高い節税効果を得られる反面、空室リスクに注意が必要です。
国税庁の「建物の標準的な建築価額表」を参考に、適正な建物割合を算定することで、税務調査時のリスクも軽減できます。
減価償却費の計算方法について詳しく解説されている国税庁の公式ページ
マンション投資の節税は、売却時の譲渡税を考慮した長期的な視点が不可欠です。減価償却による節税は一時的な効果であり、売却時には「減価償却の取り戻し」が発生するため、出口戦略を慎重に検討する必要があります。
譲渡税率と節税効果の関係
📈 所得税率と譲渡税率の差額が実質的な節税効果
この税率差により、減価償却期間中に還付された税金の約60%(30%÷50%)が実際の節税となります。高所得者ほど、この税率差のメリットを享受できます。
短期譲渡と長期譲渡の戦略的選択
所有期間 | 譲渡税率 | 節税効果(年収2,000万円の場合) |
---|---|---|
5年以下 | 39.63% | 約10% |
5年超 | 20.315% | 約30% |
💡 相続時の節税効果
マンション投資は相続税対策としても有効です。現金で相続する場合と比較して、不動産の相続税評価額は以下のように圧縮されます。
法人化による節税戦略
個人の所得税率が高い場合、法人設立による節税も検討できます。法人税率は所得800万円以下で15%、800万円超で23.2%と、個人の最高税率50%と比較して大幅に低くなります。
ただし、法人化には設立費用や維持コストが発生するため、年間の不動産所得が500万円以上の場合に効果的とされています。