
マンションの減価償却計算において最も重要なのは、土地と建物の価格を正確に分離することです。土地は年月が経っても価値が減少しないとされるため、減価償却の対象外となります。
建物価格の算定方法は以下の通りです。
建築業従事者の視点では、建築費から算定する方法もあります。新築時の建物価格=建物の標準的な建築価額による建築単価×建物面積として計算し、これに0.9を掛けて償却費計算に使用します。
マンションの減価償却計算は必ず定額法を使用します。定額法とは法定耐用年数の期間中、毎年一定の金額を減価償却費として計上する方法です。
計算式:建物の取得価額×定額法の償却率=年間減価償却費
構造別の法定耐用年数と償却率。
【計算例】
SRC造の新築マンション3,500万円の場合。
3,500万円×0.022=77万円(年間減価償却費)
この計算により、47年間にわたって年間77万円の減価償却費を経費として計上できます。
中古マンションの場合、耐用年数の算定に特別な計算式を使用します。
中古物件の耐用年数計算式。
(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%
【計算例】
築15年のRC造マンションの場合。
(47年-15年)+15年×20%=32+3=35年
非事業用マンションの減価償却費相当額。
建物の購入代金×0.9×償却率×経過年数
この0.9という係数は、居住用不動産の特別な算定方法で、事業用とは異なる計算となります。経過年数は取得から売却までの年数で、6ヶ月以上の端数は1年、6ヶ月未満は切り捨てで計算します。
マンションの減価償却計算において、建物設備を活用した節税効果が注目されています。建物設備は建物本体よりも短い耐用年数で償却できるため、初期の償却額を大きくできる可能性があります。
主な建物設備と耐用年数。
設備部分は総額の1~3割程度を占めるため、適切に分離して償却することで大きな節税効果が期待できます。
一棟所有の場合の追加設備。
ただし、過度な按分は税務リスクを伴うため、専門家に確認しながら行うことが重要です。建築業従事者であれば、工事明細を細かく分類して各設備の取得価額を正確に算定できるため、この手法を効果的に活用できます。
建築業従事者ならではの専門知識を活かした減価償却計算の戦略的活用法について解説します。一般的な不動産投資家とは異なる視点から、より効率的な償却計算を実現できます。
建築原価に基づく精密な算定方法。
建築業従事者は実際の建築コストを把握しているため、標準的な建築価額による算定よりも正確な建物価格を設定できます。これにより適正な減価償却費を計算し、税務調査でも根拠のある説明が可能になります。
工種別按分による設備償却の最適化。
建築工事の各工程(基礎工事、躯体工事、設備工事等)のコスト配分を正確に把握できるため、建物設備部分の金額を精密に算定できます。特に以下の工種について効果的です:
リノベーション投資との連携。
建築業従事者は改修工事を行う際、資本的支出と修繕費の区分を適切に判断できます。資本的支出として処理した部分は新たな減価償却資産として計上し、短期間での償却が可能になる場合があります。
建設業会計との連携活用。
建設業特有の会計処理と不動産投資の減価償却を組み合わせることで、年間の所得調整をより効果的に行えます。特に完成工事高が大きい年度には、減価償却費による所得圧縮効果が大きくなります。
この戦略的活用により、建築業従事者は一般投資家の1.5~2倍程度の節税効果を実現できる可能性があります。ただし、税務上の適正性を保つため、必ず税理士等の専門家と連携して実行することが重要です。