昇降機とエレベーターの違いと宅建士が知るべき建築基準法の規定

昇降機とエレベーターの違いと宅建士が知るべき建築基準法の規定

宅建試験で頻出の昇降機とエレベーターの違い、建築基準法での分類、設置義務について詳しく解説します。宅建士として押さえておくべき法的根拠を理解していますか?

昇降機とエレベーターの違いと建築基準法上の分類

昇降機とエレベーターの基礎知識
🏢
昇降機の種類

エレベーター・エスカレーター・小荷物専用昇降機に分類

⚖️
法的定義

建築基準法と労働安全衛生法で規定が異なる

📏
設置基準

かごの床面積と天井高で区分が決まる

昇降機の法的定義と基本概念

昇降機は建築基準法第2条において、動力を使って人や物を上下または水平に移動させる設備として定義されています 。一方、エレベーターは昇降機の一種であり、「人または人及び物を運搬する昇降機、並びに、物を運搬する昇降機でかご(搬器)の水平投影面積が1.0㎡を超え、又は、天井の高さが1.2mを超えるもの」と規定されています 。
参考)https://nextech-sapporo.jp/elevator/

 

昇降機は建築物の一部として設置され、建物の機能を維持するために必要な「建築設備」に分類されます 。これに対し、工場や作業場で使われる生産設備など、建築物の機能に関係なく独立して動く機械設備は含まれません。
建築基準法では、昇降機を以下の3つに分類しています。

  • エレベーター:かご床面積が1㎡を超える、または天井の高さが1.2mを超えるもの
  • エスカレーター:動力で動く階段状または歩道状の設備
  • 小荷物専用昇降機:かご床面積が1㎡以下、かつ天井の高さが1.2m以下のもの

エレベーターの種類と用途別分類

エレベーターは用途により複数の種類に分類されます。建築基準法施行令第129条3項に基づく分類では、以下のような種類があります :
参考)https://matehan.jp/elevator/elevatortype/

 

人を運搬するエレベーター

  • 乗用エレベーター:主に人の輸送を目的とする一般的なエレベーター
  • 人荷用エレベーター:人と荷物の両方を運搬できるが、法律上は乗用と同じ扱い
  • 寝台用エレベーター:医療施設や福祉施設でストレッチャーを運搬

荷物を運搬するエレベーター

  • 荷物用エレベーター:荷物の輸送専用で、運転者以外の人は乗車禁止
  • 自動車用エレベーター駐車場などで自動車を運搬、運転手以外は乗車禁止

労働安全衛生法では、積載荷重1トン以上のエレベーターを「特定機械等」として規定し、年1回の性能検査と月1回の自主検査を義務付けています 。ただし、この規定は労働基準法別表第1に規定する事業所に設置されたものが対象となります。
参考)https://aiwaok.jp/law/maintenance

 

昇降機設置における建築基準法上の義務

建築基準法第34条では、昇降機の設置義務について具体的に規定しています。最も重要な規定は、高さ31メートルを超える建築物には非常用昇降機(非常用エレベーター)を設けなければならないという点です 。
参考)https://aiwaok.jp/articles/elevator-building-obligation

 

この31メートルという基準は、7~10階建てのビル・マンションに相当し、火災発生時に消防隊が消火・救出活動に使用する設備として位置づけられています 。非常用エレベーターは平常時には乗用エレベーターまたは人荷用エレベーターとして使用されます。
高齢者の居住の安定確保に関する法律では、原則として3階建て以上の共同住宅サービス付き高齢者向け住宅)にエレベーターの設置が義務付けられています 。この規定により、高齢者が安心して生活できる環境の整備が図られています。
地方公共団体の条例によっても設置義務が定められる場合があり、例えば大阪府では建築物の規模と用途によって2階以上の建築物にエレベーター設置が必要になる可能性があります 。

昇降機の定期検査と保守点検制度

昇降機には建築基準法第12条第3項に基づく定期検査報告が義務付けられています。この制度では、検査者(一級建築士、二級建築士、または昇降機等検査員)が概ね6ヶ月~1年ごとに検査を実施し、国土交通大臣が定める基準に適合しているかを調べます 。
参考)https://aiwaok.jp/articles/elevator-inspection

 

定期検査では以下の項目が判定されます。

  • 要是正:安全上問題があり、即座に改善が必要な状態
  • 要重点点検:注意深く監視が必要な状態
  • 指摘なし:基準に適合している状態

検査結果は定期検査報告書として特定行政庁に報告し、検査記録は3年以上保管することが義務付けられています 。これは一般住宅に設置されたホームエレベーターは除外されますが、労働安全衛生法に基づく性能検査を受けているエレベーターも報告対象外となります 。
参考)https://www.tsak.jp/report/

 

保守点検では、月1回の自主検査(点検)と年1回の性能検査が義務付けられており、積載荷重1トン以上のエレベーターについては労働基準監督署長または指定機関による厳格な検査が必要です 。

小荷物専用昇降機と垂直搬送機の特殊規定

小荷物専用昇降機(ダムウェーター)は、エレベーターと似た構造を持ちながらも異なる規定が適用される特殊な昇降機です。建築基準法では「かご床面積が1㎡以内、かつ天井の高さが1.2m以内」と規定され、人が乗ることは一切禁止されています 。
参考)https://konimotsusenyou-syoukouki.com/column/487

 

この昇降機は500kg以下の荷物を対象とし、最大積載量は500kgを限度としています 。用途としては飲食店での料理運搬、病院での医療器具運搬、学校給食の配送などに活用され、コンパクトタイプでは据付工事が1日で完了するスピード納品も可能です 。
参考)https://konimotsusenyou-syoukouki.com/column/1815

 

一方、垂直搬送機は建築基準法における昇降機としての扱いを受けません 。これは主に工場や倉庫、製造ラインでの効率的な物流をサポートする設備として位置づけられ、法律上ではエレベーターとは全くの別物として扱われています。
参考)https://aiwaok.jp/articles/vertical-conveyor-elevator

 

階段昇降機も昇降機の一種として建築基準法の適用を受けます。いす式昇降機や段差解消機も含まれ、これらは住宅のバリアフリー工事で活用され、椅子に座ったまま安全に階段を昇降できる設備として注目されています 。設置には階段の補強工事が不要で、工事期間は約1日、使わない時は折りたたんで収納可能です。
参考)https://www.micro-ev.jp/product/isushiki/