
特定行政庁は建築基準法第2条第35号に規定される重要な概念です。建築主事を置く市町村の区域については当該市町村の長、その他の市町村の区域については都道府県知事が特定行政庁となります。
特定行政庁の主要な権限には以下があります。
建築主事は建築基準適合判定資格者の資格を持つ専門職で、建築に関する法的判断を行う権限を有しています。この建築主事が配置されている自治体の長が特定行政庁として、最終的な決定権を持つ仕組みになっています。
限定特定行政庁制度は昭和45年の建築基準法改正により創設されました。この制度の目的は、財政規模が小さい市町村でも建築行政を容易にするための過渡的措置として位置づけられています。
限定特定行政庁の権限は以下に限定されています。
特に注目すべきは、東京都の特別区(23区)も限定特定行政庁に該当することです。世田谷区のような人口94万人の大規模自治体であっても、特別区は地方自治法上、市よりも下位に位置づけられており、権限が制限されています。
建築確認申請を行う際の管轄区分は複雑な仕組みになっています。同一の市町村内であっても、建築物の規模や用途によって管轄する行政庁が異なる場合があります。
東京都特別区の場合。
限定特定行政庁の市町村の場合。
これらの管轄区分により、建築基準関係規定である条例の手続きや地区計画等の事前協議先も変わってきます。特に住宅中心に業務を行っている設計事務所が、初めて非住宅の建築物を扱う際に混乱が生じることが多い実情があります。
2025年4月施行の建築基準法改正により、限定特定行政庁の業務範囲が大幅に見直されました。この改正の背景には、4号特例の廃止と建築確認審査対象建築物の規模見直しがあります。
主な改正内容。
千葉県では限定特定行政庁の業務範囲見直しについて詳細な資料を公開しており、実務担当者にとって重要な参考資料となっています。
不動産業に従事する方にとって、特定行政庁と限定特定行政庁の違いを理解することは極めて重要です。この理解不足は以下のような問題を引き起こす可能性があります。
売買契約における影響。
開発事業における影響。
全国建築審査会協議会では特定行政庁一覧を定期的に更新しており、最新の情報確認が可能です。また、埼玉県のように各都道府県で建築行政の窓口案内を詳細に公開している自治体もあります。
さらに、みどり市のように平成28年10月1日から限定特定行政庁に移行した事例もあり、行政庁の区分は時代とともに変化していることも理解しておく必要があります。
全国建築審査会協議会の特定行政庁一覧では、最新の特定行政庁・限定特定行政庁の指定状況が確認できます
千葉県の限定特定行政庁業務範囲見直し資料では、2025年改正の詳細な内容が解説されています