建築主事指定確認検査機関の役割と業務の違い

建築主事指定確認検査機関の役割と業務の違い

建築主事と指定確認検査機関の違い、確認申請業務の流れ、民間機関の指定要件について詳しく解説します。不動産業界に必須の知識をまとめました。どちらに申請すべきか迷っていませんか?

建築主事と指定確認検査機関

建築確認検査業務の概要
🏢
建築主事(行政)

都道府県や市町村の職員として公務員の立場で建築確認・検査業務を実施

🏛️
指定確認検査機関(民間)

平成11年から民間開放された建築確認・検査業務を行う第三者機関

📋
同等の業務権限

確認済証・検査済証の交付において建築主事と同様の法的権限を持つ

建築主事と指定確認検査機関の基本的違い

建築主事と指定確認検査機関は、どちらも建築基準法第6条に基づく建築確認業務を行う機関ですが、その性格と運営方法に大きな違いがあります。
建築主事は都道府県や人口25万人以上の市に必ず設置される公務員の職位です。一方、指定確認検査機関は平成11年の建築基準法改正により誕生した民間機関で、全国に約130社が存在します。
組織的特徴の比較表

項目 建築主事 指定確認検査機関
性格 行政機関(公務員) 民間企業
設置義務 都道府県・人口25万人以上の市は必置 任意指定
約2,000人(平成10年度) 約130社(民間機関)
業務エリア 管轄する市町村のみ 都道府県単位または全国
営業活動 なし 顧客獲得のための営業活動あり

建築主事の権限と確認検査員の資格要件

建築主事になるには、建築基準適合判定資格者の資格が必要です。この資格は一級建築士として5年以上の実務経験を経て試験に合格することで取得できます。指定確認検査機関で同様の業務を行う職員は「確認検査員」と呼ばれ、建築主事と同等の資格要件が求められます。
建築主事の主な権限。

確認検査員は建築主事と同等の審査能力を有するものの、行政権限は持ちません。ただし、確認済証や検査済証の交付については建築主事と同様の法的効力を持ちます。

建築主事が置かれる特定行政庁の業務範囲

特定行政庁は建築基準法第2条第35号に定められた行政機関で、都道府県知事または建築主事を置く市町村の長を指します。建築主事は特定行政庁に置かれ、その管轄区域内の建築物のみを対象とします。
特定行政庁の設置基準

  • 都道府県:必ず建築主事を設置
  • 人口25万人以上の市:建築主事を置く義務
  • その他の市町村:全部または一部の権限を有する建築主事を置くことが可能

建築主事の業務は公正性と中立性が最優先されるため、営利を目的とした活動は一切行いません。一方、管轄区域が限定されているため、広域的な建築プロジェクトには対応できない制約があります。

 

建築主事の指定要件と民間確認検査機関の選定基準

指定確認検査機関として認定されるためには、国土交通大臣または都道府県知事による厳格な審査を受ける必要があります。指定確認検査機関指定準則により、以下の要件が定められています:
技術的要件

  • 建築基準適合判定資格者(確認検査員)の配置
  • 確認検査業務を他業務から独立した部署で実施
  • 担当役員の設置
  • 監視委員会の設置

経理的基礎

  • 確認検査業務を継続的に実施できる財産的基礎
  • 保険契約の締結(業務賠償責任保険等)
  • 適切な経理区分の実施

公正性の確保

  • 利害関係者からの独立性
  • 兼業制限の遵守
  • 公正な業務実施体制の構築

民間機関の大きな特徴は、複数の都道府県にまたがる業務が可能な点です。国土交通大臣指定機関は全国対応、各地方整備局長指定機関は管轄区域内で業務を行えます。

建築主事と指定確認検査機関の実務上の使い分け

不動産業界では、プロジェクトの特性に応じて建築主事と指定確認検査機関を使い分けることが重要です。

 

建築主事を選ぶべきケース

  • 地域密着型の小規模プロジェクト
  • 行政との継続的な協議が必要な案件
  • 複雑な法的解釈を要する建築物
  • コスト重視のプロジェクト(手数料が比較的安価)

指定確認検査機関を選ぶべきケース

  • 複数県にまたがる大規模開発
  • 審査期間の短縮が重要な案件
  • 専門的な技術審査が必要な建築物
  • 柔軟な対応が求められるプロジェクト

指定確認検査機関は営利企業として運営されているため、顧客サービスの向上に積極的です。審査期間の短縮、相談対応の充実、料金体系の柔軟性などで差別化を図っています。
一方、建築主事は公正性を最優先とし、全ての申請者に対して平等な対応を行います。特に行政指導が必要な違反建築物への対応や、建築基準法の厳格な運用が求められる場面では建築主事の権限が重要な役割を果たします。

 

平成27年6月の建築基準法改正では、従来建築主事のみが行っていた仮使用承認業務の一部が指定確認検査機関にも開放され、「仮使用認定」として民間機関でも対応可能になりました。これにより、建築プロジェクトの選択肢がさらに広がっています。
建築確認制度は建築物の安全性確保という公共性の高い業務でありながら、民間活力を導入することで効率性と利便性の向上を実現している制度です。不動産業に従事する専門家として、それぞれの特性を理解し、プロジェクトに最適な選択を行うことが重要です。