複製権とは何かわかりやすく解説

複製権とは何か

複製権の法的定義と基本概念

複製権は著作権法第21条により「著作者は、その著作物を複製する権利を専有する」と規定されています 。この権利は著作権制度における最も基本的かつ重要な権利として位置づけられており、「権利の束」と呼ばれる著作権の中核を成しています 。
参考）https://jrrc.or.jp/educational/outline/

複製権は排他独占的権利として、著作者が自己の著作物に対する有形的再製について完全なコントロールを持つことを保障しています 。これにより、著作者は承諾なく著作物を無断で複製されない権利を有し、他人による不正な利用を防ぐことができます 。
参考）https://note.com/copyrights/n/n9a7dd3e551c8

複製権の保護対象は著作権法第10条第1項各号に定められたすべての著作物であり、文芸作品から音楽、美術、映画まで幅広い創作物が含まれます 。この包括性により、現代社会における多様な知的創作活動が法的に保護される仕組みが構築されています。

複製権における複製の定義と具体的行為

著作権法第2条第1項第15号では、複製を「印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製すること」と定義しています 。この「有形的」という要件は、著作物が媒体に固定されることを意味し、「再製」は元の創作的表現物と同一のものを作ることを指します 。
参考）https://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/chosakuken/index/fukuseiken/

具体的な複製行為には以下のようなものが含まれます。

• コピー機による文書の複写
• 講演内容のテープ録音
• テレビ番組のビデオ録画
• 音楽CDのデータをパソコンに保存
• 手書きによる書き写し
• スキャナーによる電子的読み取り

  参考）https://shinohara-law.com/blog/2015/12/07/%E8%A4%87%E8%A3%BD%E6%A8%A9%EF%BC%88%E8%91%97%E4%BD%9C%E6%A8%A9%E6%B3%95%EF%BC%92%EF%BC%91%E6%9D%A1%EF%BC%89/

   

重要な点として、複製の成立には完全な同一性は要求されません 。裁判例によると「既存の著作物に依拠し、その内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製すること」が複製の要件とされており、多少の修正・増減があっても複製にあたる可能性があります 。
参考）https://innoventier.com/archives/2020/05/9896

複製権と他の支分権の関係性

複製権は著作権を構成する12種類の支分権の中で最も基本的な権利として位置づけられています 。他の主要な支分権には上演権・演奏権、上映権、公衆送信権、展示権、頒布権、貸与権、翻訳権、翻案権があり、それぞれが異なる利用形態に対応しています 。
複製権と翻案権の関係では、翻案権が編曲や変形、脚色などの創作的な改変を伴う利用を対象とするのに対し、複製権は原著作物をそのままの形で再製する行為を対象としています 。ただし、両権利の境界は必ずしも明確ではなく、具体的事案において慎重な判断が必要とされます。
参考）https://onm-tm.jp/news/%EF%BD%91%EF%BC%96%EF%BC%8E%E8%A4%87%E8%A3%BD%E6%A8%A9%E3%81%A8%E7%BF%BB%E6%A1%88%E6%A8%A9%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%81%A9%E3%81%AE%E3%82%88%E3%81%86%E3%81%AA%E3%82%82%E3%81%AE%E3%81%8B%E3%80%82%E3%80%80/

出版業界においては、紙媒体の出版には複製権の許諾が、電子出版には自動公衆送信権の許諾がそれぞれ必要となります 。このように、複製権は他の支分権と相互に補完しながら、著作物の包括的な保護を実現しています。

複製権侵害の判例と実務上の注意点

複製権侵害が認められた著名な判例として、「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー事件」があります 。最高裁は複製の成立要件として「既存の著作物に依拠し、その内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製すること」を示し、単なる偶然の一致では複製権侵害は成立しないと判断しました。
建築物の複製権について、著作権法第46条は原則として建築著作物の自由利用を認めていますが、建築による複製は例外的に禁止されています 。これは一般人の通常行動への配慮と建築による完全な複製の区別を図ったものです。
参考）https://fudosandojo.com/c_22/%E5%BB%BA%E7%AF%89%E7%89%A9%E3%81%AE%E3%83%87%E3%82%B6%E3%82%A4%E3%83%B3.html

実務上の注意点として、以下の点が重要です。

• デジタル技術の進歩により、複製の範囲と方法が拡大している
• 写真著作物の無断掲載は複製権侵害にあたる

  参考）https://www.zennichi.or.jp/law_faq/%E7%89%A9%E4%BB%B6%E5%86%99%E7%9C%9F%E3%81%AE%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%96%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%88%E3%81%B8%E3%81%AE%E7%84%A1%E6%96%AD%E6%8E%B2%E8%BC%89/

   

• 企業活動における資料作成時の著作物利用には慎重な検討が必要
• 教育機関においても複製権の制限規定の適用範囲を正確に理解することが必要

  参考）https://www.ndl.go.jp/jp/copy/copyright/index.html

   

複製権保護の社会的意義と現代的課題

複製権は著作者の経済的利益を保護し、創作活動への投資回収を可能にすることで、文化的創作活動の継続と発展を支える基盤的な役割を果たしています 。この権利保護により、著作者は自己の創作物から適正な対価を得る機会が確保され、新たな創作への意欲が維持されます。
現代社会では、デジタル技術の発達により複製が容易になった一方で、複製権の保護がより複雑化しています。インターネット上での著作物の拡散、AI技術による自動的な複製、クラウドサービスでの一時的複製など、従来の枠組みでは対応が困難な問題が次々と生じています 。
参考）http://arxiv.org/pdf/2105.09266v1)%3C%22.pdf

教育分野においては、複製権の適切な理解が重要です。図書館での複写サービスや学校教育での教材作成において、複製権の制限規定を正確に適用することで、教育目的と著作権保護のバランスが図られています 。
これらの課題に対応するため、複製権の概念と適用範囲についての継続的な議論と法制度の整備が求められており、著作権法の現代的な解釈と運用が重要な課題となっています。