

著作権法は、昭和45年5月6日に制定された法第48号として、著作物とその関連する権利を包括的に保護する法律です 。同法は総則(1条~9条の2)、著作者の権利(10条~78条の2)、出版権(79条~88条)、著作隣接権(89条~104条)、私的録音録画補償金(104条の2~104条の10)、紛争処理(105条~111条)、権利侵害(112条~118条)、罰則(119条~124条)の8つの章から構成されています 。
参考)https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000048?tab=cited
著作権法における権利は、大きく3つのカテゴリーに分類されます 。第一に著作権(財産権)は、著作物を経済的に利用する権利であり、複製権や公衆送信権など11種類の支分権から構成されています 。第二に著作者人格権は、著作者の名誉や人格的利益を保護する権利で、譲渡することができない一身専属権です 。第三に著作隣接権は、著作物の創作には直接関与していないものの、著作物の伝達や普及に重要な役割を果たす実演家、レコード製作者、放送事業者等に付与される権利です 。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%91%97%E4%BD%9C%E6%A8%A9%E6%B3%95
著作権(財産権)は、著作物の利用形態に応じて細分化された11種類の支分権から構成されています 。複製権(第21条)は著作物を有形的に再製する権利で、印刷、複写、録音、録画、デジタルファイルのダウンロードなどが該当し、著作権の中核をなす権利です 。上演権・演奏権(第22条)は劇や音楽を公に上演・演奏する権利、上映権(第22条の2)は映画やビデオを公に上映する権利を規定しています 。
参考)https://www.authense.jp/komon/blog/ip/2805/
公衆送信権(第23条)は放送やインターネット配信などで著作物を公衆に送信する権利で、デジタル時代において特に重要性が高まっています 。展示権(第25条)は美術作品や未発行の写真の原作品を公に展示する権利、譲渡権(第26条の2)は著作物の原作品や複製物を譲渡により公衆に提供する権利です 。貸与権(第26条の3)は複製物を貸与により公衆に提供する権利で、書籍やCD・DVDのレンタル業において重要な権利となっています 。
参考)https://www.jepa.or.jp/ebookpedia/201612_3331/
翻訳権・翻案権(第27条)は著作物を翻訳、編曲、変形、脚色、映画化などする権利で、二次的著作物の創作に関わる権利です 。二次的著作物の利用権(第28条)は、原著作物の著作権者が二次的著作物の利用についても権利を持つことを定めた権利です 。これらの支分権は、著作物の種類や利用形態に応じて組み合わせて行使されることが多く、例えば電子出版では自動公衆送信権と複製権の両方が関係します 。
著作者人格権は、著作者の人格的利益を保護する権利として、公表権、氏名表示権、同一性保持権の3つの権利から構成されています 。公表権は、著作者が自分の著作物を公表するかどうか、いつ公表するかを決定する権利で、著作者の意に反した公表を防ぐ重要な権利です 。氏名表示権は、著作物を公表する際に著作者名を表示するかどうか、どのような名前で表示するかを著作者が決定する権利です 。
参考)https://kigyobengo.com/media/useful/837.html
同一性保持権は、著作者が著作物の内容や題号の同一性を保持する権利で、著作者の意に反した変更、切除、その他の改変を受けない権利です 。この権利は著作物の本質的な価値や著作者の思想・感情を保護する核心的な権利とされています 。著作者人格権には名誉声望を害する方法での利用を禁止する権利も含まれており、著作者の社会的評価を保護する機能も果たしています 。
参考)https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000048
著作者人格権の最も重要な特徴は、著作権法第59条により譲渡することができない一身専属権であることです 。これは著作者の名誉や作品への思い入れといった人格的要素は他人に譲渡できるものではないという考え方に基づいています 。そのため、著作権(財産権)を譲渡した場合でも、著作者人格権は常に著作者に残り続けます 。
著作隣接権は、著作物の創作には直接関与していないものの、著作物の公衆への伝達において重要な役割を果たす者に付与される権利です 。実演家の権利(第91条~95条)には、実演の録音・録画権、放送権・有線放送権、送信可能化権、譲渡権、貸与権などが含まれます 。実演家は、演奏家、歌手、俳優、ダンサーなど、著作物を実演によって表現する者を指します 。
参考)https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/06319700506048.htm
レコード製作者の権利(第96条・97条)は、レコードの複製権、送信可能化権を中心とし、音楽産業の基盤となる重要な権利です 。放送事業者の権利(第98条~100条)には、放送の同時再放送権、複製権、放送を受信して行う有線放送権が含まれます 。有線放送事業者にも同様の権利が付与されており、ケーブルテレビなどの事業運営に必要な権利を保護しています 。
これらの著作隣接権の保護期間は、実演・レコードの発行から70年、放送・有線放送の実施から50年と定められています 。著作隣接権は著作権と異なり、より限定的な権利内容となっていますが、文化産業の発展と多様な関係者の利益バランスを図る重要な役割を果たしています 。
著作権法は権利侵害に対する厳格な罰則を定めており、故意による著作権侵害は親告罪として刑事処罰の対象となります 。著作権、出版権、著作隣接権を侵害した者に対しては、10年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方が科される重い処罰が規定されています(第119条第1項)。2025年6月1日からは刑法改正により従来の「懲役刑」が「拘禁刑」に変更されています 。
参考)https://kigyobengo.com/media/useful/2118.html
著作者人格権の侵害についても同様の罰則が適用され、5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金が科されます 。法人が著作権侵害を行った場合は、両罰規定により法人に対して3億円以下の罰金が科される場合があります 。これらの厳しい罰則は、知的財産権の重要性の高まりと、デジタル技術の発達による著作権侵害の容易化に対応したものです 。
参考)https://tachikawa.vbest.jp/columns/general_civil/g_lp_indi/6493/
近年の法改正では、インターネット上の海賊版対策が強化されており、令和2年改正ではリーチサイト対策や侵害コンテンツのダウンロード違法化が導入されました 。令和5年改正では立法・行政・司法のデジタル化に対応した権利制限規定の整備が行われ、時代の変化に応じた著作権制度の見直しが継続的に実施されています 。
参考)https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/r02_hokaisei/
著作権法第10条第1項では、保護対象となる著作物を9種類に分類して例示しています 。言語の著作物(第1号)には小説、脚本、論文、講演などが含まれ、最も基本的な著作物類型です 。音楽の著作物(第2号)は楽曲や歌詞を対象とし、舞踊・無言劇の著作物(第3号)は日本舞踊、バレエ、パントマイムなどの身体表現を保護します 。
参考)https://hourei.net/law/345AC0000000048
美術の著作物(第4号)は絵画、版画、彫刻を、建築の著作物(第5号)はビル、タワー、神社などの建築構造物を対象とします 。図形の著作物(第6号)には地図や学術的図面、図表、模型が含まれ、映画の著作物(第7号)は劇場用映画、アニメ、ゲームソフトなど動的映像作品を保護します 。写真の著作物(第8号)とプログラムの著作物(第9号)は、それぞれ写真表現とコンピュータープログラムを対象とした現代的な著作物類型です 。
参考)https://keiyaku-watch.jp/media/hourei/chosakubutsu/
ただし、事実の伝達にすぎない雑報や時事報道は著作物に該当せず(第10条第2項)、憲法その他の法令、国や地方公共団体の告示・訓令、裁判所の判決・決定などは権利の目的とならない著作物として除外されています(第13条)。この分類体系により、創作性を有する様々な表現形式が著作権法の保護対象として包括的にカバーされています 。
参考)https://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/access/copyright/0818_copyrightlaw/chapter02_01.html