

人格権とは、個人の人格的利益を保護するための権利で、生命・身体・自由・名誉・プライバシーなどの人格に密接に関わる利益を包括的に保護する権利概念です 。憲法上の人格権は、憲法第13条の「個人の尊重」と「幸福追求権」を根拠として導き出される権利であり、基本的人権の一つとして理解されています 。
参考)https://chigai.site/14348/
人格権は絶対権としての性質を持ち、天下万人に対して主張できる権利である点が特徴的です 。また、人格権は一身専属性を有し、譲渡や相続の対象とならない性質を持っています 。これらの特徴により、人格権は個人のアイデンティティと密接に関連する権利として法的に保護されています。
参考)https://www.mc-law.jp/kigyohomu/27248/
憲法第13条の幸福追求権から導き出される具体的な権利として、プライバシー権、肖像権、名誉権、氏名権などが判例上確立されており、これらは人格権の具体的な現れとして機能しています 。特に最高裁は、プライバシーの権利としての肖像権について、憲法上保障される権利として明確に認めています 。
参考)https://gyosyo.info/%E5%B9%B8%E7%A6%8F%E8%BF%BD%E6%B1%82%E6%A8%A9%EF%BC%88%E6%86%B2%E6%B3%9513%E6%9D%A1%EF%BC%89%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%90%E3%82%B7%E3%83%BC%E6%A8%A9%E3%81%AA%E3%81%A9/
人権(基本的人権)は、日本国憲法第11条に規定されており、「侵すことのできない永久の権利」として全ての国民に保障されています 。憲法第97条では、基本的人権を「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果」として位置づけ、その普遍的価値を強調しています 。
参考)https://www.pref.nagano.lg.jp/jinken-danjo/kurashi/jinkendanjo/jinken/main/horitsu.html
人権の概念は国際的な枠組みにも支えられており、1948年に国際連合で採択された世界人権宣言が重要な基盤となっています 。世界人権宣言では、「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である」と宣言され、人権の普遍性と生来性が確認されています 。
参考)https://www.city.kyotanabe.lg.jp/0000012554.html
日本の憲法体系では、人権は自由権、平等権、社会権、参政権などに分類され、それぞれが具体的な権利として体系化されています 。これらの人権は、「公共の福祉」による内在的制約を受けながらも、個人の尊厳を基礎とした最大限の保障が図られています 。
民法上の人格権は、憲法上の人格権とは異なり、私人間における人格的利益の保護を目的とした私法上の権利として機能します 。具体的には、名誉毀損行為や肖像権侵害などに対する法的責任の実質的根拠として人格権が位置づけられています 。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%BA%E6%A0%BC%E6%A8%A9
人格権の具体的な内容として、まず名誉権があります。これは個人の社会的評価を保護する権利であり、他人から名誉を毀損されない権利として機能します 。次に肖像権があり、これは自己の容貌等を勝手に撮影されたり公表されたりしない権利です 。判例では、「みだりにその容貌・姿態を撮影されない自由」や「撮影された写真をみだりに公表されない人格的利益」として保護されています 。
参考)https://kotobank.jp/word/%E4%BA%BA%E6%A0%BC%E6%A8%A9-81378
氏名権も重要な人格権の一つで、「その個人の人格の象徴であって、人格権の一内容を構成する」ものとして判例上認められています 。プライバシー権についても、私生活上の自由の一つとして人格権に含まれると解されています 。これらの権利は、いずれも個人の人格的価値を保護するという共通の目的を持っています。
参考)https://www.ieice.org/jpn/books/kaishikiji/2007/200702.pdf
人格権の重要な特徴の一つは、侵害に対して差止請求権が認められることです 。人格権に基づく差止請求は、通常の不法行為に基づく差止請求権とは異なる特殊な性質を持っています 。
参考)https://japanknowledge.com/contents/nipponica/sample_koumoku.html?entryid=518
人格権に基づく差止請求は、人格権の侵害という観点から不法性が大きく、それを放置することが社会正義に照らして許容されないレベルの場合にのみ認められます 。この場合、侵害者の故意または過失について立証責任を要しないという特徴があります 。これは、人格権の侵害が特別重大な不法行為であることを前提とした法的構成です。
具体的な適用例として、名誉毀損記事の発表差止めや、騒音による生活妨害の差止め、肖像権侵害の差止めなどがあります 。これらの差止請求権は、金銭賠償では回復困難な人格的利益を事前に保護するという重要な機能を果たしています 。
参考)http://meiji-law.jp/wp/wp-content/uploads/2018/02/e2fc9f1a3d6ef13e98824624afbce349.pdf
人権と人格権は、適用される場面と法的効果において明確な違いがあります 。人権は主として国家権力からの自由を保障する垂直的関係で機能するのに対し、人格権は私人間の水平的関係における権利保護として機能します 。
参考)https://niigata-u.repo.nii.ac.jp/record/2881/files/21_43-54.pdf
憲法上の人権は、立法者に対する制約として機能し、法律による人権制限には厳格な基準が適用されます 。一方、民法上の人格権は、私人による人格的利益の侵害から個人を保護することを主たる目的としています 。この違いは、権利の保護メカニズムと救済手段の違いにも現れています。
人権侵害の場合、憲法訴訟や行政訴訟などの公法的救済が中心となりますが、人格権侵害の場合は、損害賠償請求や差止請求などの私法的救済が主となります 。また、人格権侵害では、精神的損害に対する慰謝料請求が重要な救済手段として機能します。
現代社会では、インターネットやSNSの普及により、人格権侵害の形態が多様化しており、名誉毀損、プライバシー侵害、肖像権侵害などが複雑に絡み合うケースが増加しています 。これに対応するため、人格権の概念も時代とともに発展を続けており、新たな人格的利益の保護が課題となっています。
参考)https://www.ichiben.or.jp/data/0428shiryo1.pdf