犯罪収益移転防止法司法書士チェックシートの活用

犯罪収益移転防止法司法書士チェックシートの活用

令和6年4月の犯罪収益移転防止法改正により司法書士の取引時確認が大きく変わりました。チェックシートを活用した本人確認から実質的支配者の確認まで実務に必要な手続きを詳しく解説します。不動産取引におけるマネーローンダリング防止の実効性をどう高められるでしょうか?

犯罪収益移転防止法司法書士のチェックシート活用

犯罪収益移転防止法司法書士チェックシートの全体像
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取引時確認の標準化

チェックシートにより本人特定事項、取引目的、職業の確認を体系的に実施

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実質的支配者の把握

法人取引における25%超の議決権保有者の確認プロセス

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記録保存の義務化

確認記録と取引記録の作成・保存による証跡管理

犯罪収益移転防止法改正による司法書士の確認事項拡大

令和6年4月1日に施行された改正犯罪収益移転防止法により、司法書士による取引時確認の範囲が大幅に拡大されました 。従来の本人特定事項(氏名、住居、生年月日)の確認に加え、新たに取引目的、職業(個人の場合)または事業内容(法人の場合)の確認が義務化されています 。
参考)https://www.ehime-takken.or.jp/topics/20240329/12025/

 

この改正は国際的なマネーローンダリング対策強化の一環として実施され、金融活動作業部会(FATF)の勧告を受けた措置です 。司法書士は不動産売買、商業登記、200万円を超える現金・預金・有価証券等の財産管理における代理・代行業務において、これらの確認事項をチェックシートを活用して実施することが求められます 。
参考)https://moriyamaoffice.com/userblog/index.php?action=viewamp;blog_id=2160722

 

改正法では司法書士による疑わしい取引の届出義務は適用除外とされているものの、各司法書士会による自主的な制度として位置づけられています 。一方で確認記録・取引記録の作成保存義務は継続されており、チェックシートによる体系的な記録管理が重要な役割を果たします。
参考)https://www.shiho-shoshi.or.jp/association/release/resolution_list/1339/

 

司法書士チェックシートの具体的な構成要素

司法書士が使用するチェックシートは、犯罪収益移転防止法に基づく確認事項を漏れなく実施するための標準化されたツールです 。個人の取引時確認では、本人特定事項として運転免許証マイナンバーカード、在留カード等の顔写真付き官公庁発行書類による確認を行います 。
参考)https://www.gunma-takken.or.jp/wp/wp-content/uploads/2024/04/040081af9a7c52faa42307646d3da830.pdf

 

取引目的と職業については申告制となっており、チェックシートには選択項目として「融資返済資金の調達」「住み替え資金の調達」「事業資金の捻出」等が設けられています 。司法書士は申告内容の妥当性を確認するため、必要に応じて追加資料の提示を求めることがあります 。
参考)https://www.gyosei.or.jp/sites/default/files/1737618327/%E8%A1%8C%E6%94%BF%E6%9B%B8%E5%A3%AB%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E7%8A%AF%E7%BD%AA%E5%8F%8E%E7%9B%8A%E7%A7%BB%E8%BB%A2%E9%98%B2%E6%AD%A2%E6%B3%95%20%E5%8F%96%E5%BC%95%E6%99%82%E7%A2%BA%E8%AA%8D%E7%AD%89%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF.pdf

 

法人取引においては、登記事項証明書による名称・本店所在地の確認に加え、定款等による事業内容の確認が必要です 。チェックシートには実質的支配者の確認項目も含まれ、株式会社の場合は25%超の議決権を有する個人の本人特定事項を記載する欄が設けられています 。
参考)https://www.mlit.go.jp/common/001147570.pdf

 

犯罪収益移転防止法における実質的支配者確認の実務

実質的支配者の確認は、改正犯罪収益移転防止法において新たに追加された重要な確認事項です 。株式会社の場合、50%超の株式を保有する個人が存在すればその者が実質的支配者となり、該当者がいない場合は25%超を保有する個人が対象となります 。
参考)https://www.interfax.jp/document/pdf/ident-shihaisya.pdf

 

チェックシートでは議決権の直接保有分と間接保有分を合算して計算する仕組みが採用されています 。間接保有分とは、個人が50%超の議決権を保有する支配法人が申込法人の議決権を保有している場合の、その支配法人保有分を指します。司法書士は代表者からの申告により確認を行いますが、申告内容の疑義がある場合は追加資料の提示を求めることができます 。
実質的支配者が複数存在する場合は、その全員について本人特定事項の確認が必要です 。一方で、国や地方公共団体、上場企業が保有する議決権については、それ以上遡る必要がないとされています。これらの確認事項をチェックシートに体系的に記載することで、法令遵守と記録保存の両立を図ることができます 。

司法書士業務における疑わしい取引の認識とリスク管理

司法書士は犯罪収益移転防止法上の疑わしい取引届出義務の適用外とされていますが、各司法書士会による自主的な制度として疑わしい取引への対応が位置づけられています 。日本司法書士会連合会は「犯罪収益の移転にかかわる取引に司法書士は一切関与しない」との決議を採択しており、業界として高い倫理基準を維持しています 。
参考)https://www.moj.go.jp/content/001415520.pdf

 

チェックシートを活用したリスク管理では、顧客の属性、取引の態様、取引金額等を総合的に勘案して不自然な取引パターンを発見することが重要です 。例えば、取引目的と実際の取引内容に大きな齟齬がある場合や、通常の事業活動では説明がつかない大額の現金取引等が該当します。
参考)https://www.fsa.go.jp/common/paper/2021/zentai/16.pdf

 

司法書士は本人確認・意思確認と併せて、犯罪収益移転防止法上の取引時確認を実施することで、マネーローンダリング防止に貢献しています 。チェックシートによる体系的な確認は、このような疑わしい取引の早期発見にも有効な手段となります。
参考)https://www.dnp.co.jp/biz/column/detail/20172181_4969.html

 

犯罪収益移転防止法チェックシート活用によるコンプライアンス強化

チェックシートを活用したコンプライアンス体制の強化は、司法書士事務所の経営リスク管理において重要な位置を占めています 。令和6年4月の法改正により、確認事項の増加に伴って依頼者の負担も増大しており、チェックシートによる効率的な確認プロセスの構築が求められています 。
参考)https://www.cs.sc.mufg.jp/amlcft/index.html

 

効果的なリスク管理のためには、チェックシートを用いた定期的なコンプライアンスチェックが欠かせません 。司法書士事務所では、契約書への反社条項の盛り込み、取引停止措置、法的措置の検討等の対策を段階的に実施する体制を整備することが重要です 。
参考)https://www.ags.co.jp/nw/column/column03.html

 

従業員への教育・研修実施もコンプライアンス強化の重要な要素です 。チェックシートの適切な使用方法、確認記録の作成・保存手順、疑わしい取引の認識ポイント等について、定期的な研修を通じて知識・技能の向上を図る必要があります。これにより、犯罪収益移転防止法の実効性を高めることができます 。
参考)https://www.gunmabank.co.jp/laundering/