
事業用定期借地権は、借地借家法第23条に規定される定期借地権の一種で、宅建試験において頻繁に出題される重要な分野です。
基本的な要件は以下の通りです。
存続期間については、10年以上50年未満という幅があることが特徴的です。この期間設定により、短期から中期的な事業展開を想定した土地活用が可能となります。
他の定期借地権との比較では、一般定期借地権が50年以上、建物譲渡特約付借地権が30年以上となっており、事業用定期借地権は最も短期間での設定が可能です。
用途制限が厳格で、「もっぱら事業の用に供する建物」に限定されています。従業員の社宅として従業員の居住用に供する場合でも、居住用建物に該当するため事業用定期借地権を設定することはできません。
事業用定期借地権の設定には、公正証書による契約が法的に義務付けられています。これは他の定期借地権とは異なる重要な特徴です。
契約方式の比較。
定期借地権の種類 | 契約方式 |
---|---|
一般定期借地権 | 書面契約(公正証書以外でも可) |
建物譲渡特約付借地権 | 書面契約不要(口頭でも有効) |
事業用定期借地権 | 公正証書契約必須 |
公正証書契約が必要な理由は、事業用定期借地権が比較的短期間であり、確実な契約終了を担保するためです。宅建試験では「書面又は電磁的記録によって適法に締結することができる」という誤った選択肢が頻出するため注意が必要です。
公正証書作成時には以下の事項が明記される必要があります。
実務上の注意点として、公正証書作成には時間と費用がかかるため、契約締結のスケジュールを十分に検討する必要があります。
事業用定期借地権は、様々な事業用建物で活用されており、特にロードサイド店舗や大規模施設での利用が多く見られます。
主な活用事例。
大規模施設
ロードサイド店舗
特にホームセンターでの活用が多い理由は、建物規模が大きく、敷地が複数地権者にまたがることが多いことから、借地の方が出店しやすいという事業上のメリットがあります。
活用に適した土地の特徴。
一方で、対象外となる建物も明確に定められています。
これらの区別は宅建試験でも頻出のポイントとなっているため、用途制限を正確に理解することが重要です。
宅建試験における事業用定期借地権の出題傾向は非常に高く、毎年のように関連問題が出題されています。
頻出の出題パターン。
① 用途制限に関する問題
従業員社宅や賃貸アパートなど、居住用建物との区別を問う問題が多出しています。「事業の用に供する建物の所有を目的とする場合であれば、従業員の社宅として従業員の居住の用に供するときであっても、事業用定期借地権を設定することができる」といった誤った記述を見抜く必要があります。
② 契約方式に関する問題
「存続期間を10年以上20年未満とする短期の事業用定期借地権の設定を目的とする契約は、公正証書によらなくとも、書面又は電磁的記録によって適法に締結することができる」という誤った選択肢が頻出します。
③ 存続期間に関する問題
期間50年の設定で一般定期借地権と事業用定期借地権のどちらも選択可能な場合の判別や、期間設定による契約の有効性を問う問題があります。
過去問での重要判例。
平成22年問11では、従業員社宅が事業用定期借地権の対象外であることが明確に示されました。また、平成28年問11では、居住用建物を目的とする30年契約では定期借地権を設定できないことが確認されています。
試験対策のポイント。
事業用定期借地権には、地主と借地人の双方にとって特有のメリットと注意すべきポイントがあります。
地主側のメリット。
借地人側のメリット。
注意すべきポイント。
地主側の注意点
借地人側の注意点
実務での活用における工夫。
実際の事業展開では、建物の耐用年数と契約期間のバランスを考慮した事業計画が重要となります。例えば、20年契約の場合、建物投資を20年以内で回収できる事業モデルの構築が必要です。
また、契約期間の延長については、新たな事業用定期借地権契約として再契約することは可能ですが、自動更新はないため、事前の協議が重要となります。
事業用定期借地権は、土地の有効活用と事業展開の両面で優れた制度ですが、契約条件や法的要件を正確に理解して活用することが成功の鍵となります。