瑕疵担保責任 宅建業者必須知識完全解説

瑕疵担保責任 宅建業者必須知識完全解説

宅建業者が知るべき瑕疵担保責任の重要ポイントを網羅的に解説。新築住宅の10年間責任から契約不適合責任への改正まで、実務に直結する知識をお伝えします。あなたの業務に活かせる内容とは?

瑕疵担保責任宅建業法基礎知識

瑕疵担保責任の重要ポイント
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新築住宅10年間責任

構造耐力上主要な部分と雨水侵入防止部分の瑕疵について売主が負う法的責任

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宅建業法40条規制

買主に不利な特約制限と引渡しから2年以内の通知期間設定

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資力確保措置義務

保険加入または保証金供託による責任履行の確保

瑕疵担保責任新築住宅10年間義務

新築住宅の売買契約において、宅建業者が自ら売主となる場合、住宅品質確保法(品確法)第95条により10年間の瑕疵担保責任を負うことが法的に義務付けられています。

 

この責任が適用される対象部分は以下の通りです。

  • 構造耐力上主要な部分
  • 基礎・基礎杭
  • 壁・柱・小屋組
  • 土台・斜材(筋かい、方づえ、火打材等)
  • 床版・屋根版・横架材(はり、けた等)
  • 雨水の侵入を防止する部分
  • 屋根・外壁およびその開口部
  • 戸・わく・建具
  • 屋根や外壁内部、屋内にある排水管

重要なのは、この10年間の責任期間についてこれに反する特約は無効とされていることです。つまり、売主が「5年間のみ責任を負う」といった買主に不利な特約を設けても、法的効力を持ちません。

 

また、この瑕疵担保責任は無過失責任であり、売主に過失がなくても責任を負うことになります。買主は瑕疵を発見した場合、以下の請求が可能です。

  • 契約解除(目的達成できない場合)
  • 損害賠償請求
  • 瑕疵修補請求

宅建業者にとって、この10年間という長期間の責任は経営上の重要なリスクファクターとなるため、適切な品質管理と資力確保措置が不可欠です。

 

瑕疵担保責任宅建業法40条特約制限

宅建業法第40条は、宅建業者が自ら売主となる売買契約における担保責任の特約制限を定めています。この規定は、買主保護の観点から設けられた重要な制限です。

 

基本原則として、宅建業者は目的物の「種類」「品質」に関する契約不適合について、民法よりも買主に不利になる特約をしてはならないとされています。
民法では「買主が不適合を知った時から1年以内に、その旨を売主に通知しないとき」は契約不適合責任を追及できなくなりますが、宅建業者はこれより短い期間を設定することができません。

 

重要な例外規定として、**「目的物の引渡しの日から二年以上となる特約」**を設ける場合は認められています。この特約により。

  • 買主は引き渡しから2年以内に不適合を通知する必要がある
  • 2年を過ぎると契約不適合責任を追及できなくなる
  • 宅建業者にとってはリスク限定の効果がある

この「引渡しから2年」の特約は、宅建業者が積極的に活用したい条項です。ただし、以下の点に注意が必要です。

  • 新築住宅の構造耐力上主要な部分等については品確法の10年責任が優先
  • 買主に不利な特約は原則無効(有利な特約は有効)
  • 特約内容を契約書面に明記する必要がある

実務上は、中古住宅の売買において「引渡しから2年」の特約を設けることが一般的となっています。

 

瑕疵担保責任重要事項説明ポイント

宅建業法第35条に基づく重要事項説明において、種類・品質に不適合がある場合の担保責任に関する説明事項には特殊な取り扱いがあります。

 

説明が必要な事項

  • 保証保険契約の締結その他の措置の有無
  • 措置を講ずる場合は、その措置の概要
  • 措置を講じていない場合は、講じていないことの説明

具体的な措置の例

  • 住宅販売瑕疵担保保証金の供託(新築住宅)
  • 既存住宅売買瑕疵保険の締結(中古住宅)
  • その他の保証保険契約

重要事項から除外される事項
宅建業法では、「宅地又は建物の種類・品質に不適合がある場合の担保責任についての定め」は重要事項から除外されています。これは、契約締結前まで交渉の余地があるため、必ずしも判明していない事項として扱われるためです。

 

実務上の注意点

  • 担保責任の特約は37条書面(契約書面)の任意的記載事項
  • 重要事項説明時点では確定していない場合が多い
  • 契約締結時までに具体的な内容を決定する必要がある

宅建士として重要事項説明を行う際は、保証保険等の措置について正確に説明し、買主の理解を促進することが求められます。特に、措置を講じていない場合は、買主にとってのリスクを明確に伝える必要があります。

 

瑕疵担保責任履行法資力確保措置

住宅瑕疵担保履行法(正式名称:特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律)は、宅建業者が瑕疵担保責任を確実に履行できるよう資力確保措置を義務付けています。
資力確保措置が必要な理由
品確法により新築住宅の売主に10年間の瑕疵担保責任が課されていますが、実際に不具合が発見された際に宅建業者に資金がない、または倒産している場合、責任が履行されない可能性があります。

 

資力確保措置の方法(2つの選択肢)。
①住宅販売瑕疵担保保証金の供託

  • 法務局等への保証金供託
  • 一定額の金銭を供託所に預託
  • 買主が直接供託金から補償を受けられる

②住宅瑕疵担保責任保険への加入

  • 保険法人との保険契約締結
  • 保険料の支払いにより保険による保障
  • 瑕疵が発見された場合、保険金で対応

保険加入による供託免除
宅建業者が瑕疵担保責任保険に加入し、買主に対してその証明を提供している場合、保証金の供託を免除されます。この制度により、多くの宅建業者が保険加入を選択しています。

 

対象となる住宅

  • 新築住宅のみが対象
  • 中古住宅は対象外(ただし任意保険は存在)

保険の有効期間
住宅販売瑕疵担保責任保険契約は、新築住宅の買主が売主である宅建業者から引渡しを受けた時から10年以上の期間にわたって有効である必要があります。

 

この資力確保措置により、買主は万が一の場合でも適切な補償を受けることができ、宅建業者も責任履行の確実性を確保できます。

 

瑕疵担保責任契約不適合責任改正影響

2020年4月の民法改正により、従来の「瑕疵担保責任」から**「契約不適合責任」**へと名称・内容が大幅に変更されました。この改正は宅建業界にも重要な影響を与えています。
改正前の「瑕疵担保責任」

  • 「隠れた瑕疵」が要件
  • 売主の無過失責任
  • 買主の救済手段が限定的
  • 雨漏り、シロアリ被害、地中埋設物等が典型例

改正後の「契約不適合責任」

  • 「契約の内容に適合しない」状態が要件
  • 「隠れた」という要件が削除
  • 買主の救済手段が拡充

買主の救済手段の拡充
従来の損害賠償請求・契約解除に加えて。

  • 追完請求権(修補、代替物引渡し、不足分引渡し)
  • 代金減額請求権(追完不能・拒絶時等)

宅建業法への影響

  • 宅建業法第40条の担保責任制限規定は継続適用
  • 「引渡しから2年」の特約設定は引き続き有効
  • 重要事項説明での説明内容も対応が必要

実務上の注意点

  • 契約書面の記載内容見直しが必要
  • 「瑕疵」という用語から「契約不適合」への変更
  • 買主の権利拡充に対応した説明・対応体制の整備

宅建業者への影響
買主の救済手段が拡充されたことで、宅建業者の責任リスクが実質的に増大しています。特に追完請求権により、買主は修補等を直接請求できるようになったため、より迅速かつ適切な対応が求められます。

 

契約不適合責任の具体例

  • 約束した設備が設置されていない
  • 契約で定めた品質基準を満たさない
  • 数量が契約と異なる
  • 種類が契約内容と違う

この改正により、宅建業者は契約内容をより明確に定め、引渡し時の確認を徹底することが重要になっています。また、万が一の契約不適合が発生した場合の対応体制を整備し、迅速な解決を図ることが求められています。