
新築住宅の売買契約において、宅建業者が自ら売主となる場合、住宅品質確保法(品確法)第95条により10年間の瑕疵担保責任を負うことが法的に義務付けられています。
この責任が適用される対象部分は以下の通りです。
重要なのは、この10年間の責任期間についてこれに反する特約は無効とされていることです。つまり、売主が「5年間のみ責任を負う」といった買主に不利な特約を設けても、法的効力を持ちません。
また、この瑕疵担保責任は無過失責任であり、売主に過失がなくても責任を負うことになります。買主は瑕疵を発見した場合、以下の請求が可能です。
宅建業者にとって、この10年間という長期間の責任は経営上の重要なリスクファクターとなるため、適切な品質管理と資力確保措置が不可欠です。
宅建業法第40条は、宅建業者が自ら売主となる売買契約における担保責任の特約制限を定めています。この規定は、買主保護の観点から設けられた重要な制限です。
基本原則として、宅建業者は目的物の「種類」「品質」に関する契約不適合について、民法よりも買主に不利になる特約をしてはならないとされています。
民法では「買主が不適合を知った時から1年以内に、その旨を売主に通知しないとき」は契約不適合責任を追及できなくなりますが、宅建業者はこれより短い期間を設定することができません。
重要な例外規定として、**「目的物の引渡しの日から二年以上となる特約」**を設ける場合は認められています。この特約により。
この「引渡しから2年」の特約は、宅建業者が積極的に活用したい条項です。ただし、以下の点に注意が必要です。
実務上は、中古住宅の売買において「引渡しから2年」の特約を設けることが一般的となっています。
宅建業法第35条に基づく重要事項説明において、種類・品質に不適合がある場合の担保責任に関する説明事項には特殊な取り扱いがあります。
説明が必要な事項。
具体的な措置の例。
重要事項から除外される事項。
宅建業法では、「宅地又は建物の種類・品質に不適合がある場合の担保責任についての定め」は重要事項から除外されています。これは、契約締結前まで交渉の余地があるため、必ずしも判明していない事項として扱われるためです。
実務上の注意点。
宅建士として重要事項説明を行う際は、保証保険等の措置について正確に説明し、買主の理解を促進することが求められます。特に、措置を講じていない場合は、買主にとってのリスクを明確に伝える必要があります。
住宅瑕疵担保履行法(正式名称:特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律)は、宅建業者が瑕疵担保責任を確実に履行できるよう資力確保措置を義務付けています。
資力確保措置が必要な理由。
品確法により新築住宅の売主に10年間の瑕疵担保責任が課されていますが、実際に不具合が発見された際に宅建業者に資金がない、または倒産している場合、責任が履行されない可能性があります。
資力確保措置の方法(2つの選択肢)。
①住宅販売瑕疵担保保証金の供託
②住宅瑕疵担保責任保険への加入
保険加入による供託免除。
宅建業者が瑕疵担保責任保険に加入し、買主に対してその証明を提供している場合、保証金の供託を免除されます。この制度により、多くの宅建業者が保険加入を選択しています。
対象となる住宅。
保険の有効期間。
住宅販売瑕疵担保責任保険契約は、新築住宅の買主が売主である宅建業者から引渡しを受けた時から10年以上の期間にわたって有効である必要があります。
この資力確保措置により、買主は万が一の場合でも適切な補償を受けることができ、宅建業者も責任履行の確実性を確保できます。
2020年4月の民法改正により、従来の「瑕疵担保責任」から**「契約不適合責任」**へと名称・内容が大幅に変更されました。この改正は宅建業界にも重要な影響を与えています。
改正前の「瑕疵担保責任」。
改正後の「契約不適合責任」。
買主の救済手段の拡充。
従来の損害賠償請求・契約解除に加えて。
宅建業法への影響。
実務上の注意点。
宅建業者への影響。
買主の救済手段が拡充されたことで、宅建業者の責任リスクが実質的に増大しています。特に追完請求権により、買主は修補等を直接請求できるようになったため、より迅速かつ適切な対応が求められます。
契約不適合責任の具体例。
この改正により、宅建業者は契約内容をより明確に定め、引渡し時の確認を徹底することが重要になっています。また、万が一の契約不適合が発生した場合の対応体制を整備し、迅速な解決を図ることが求められています。