
棍抵当権は、不動産を担保として「極度額」という上限金額を設定し、その範囲内で継続的に融資を受けることができる担保物権です。抵当権が特定の1つの債権に対して設定されるのに対し、棍抵当権は将来発生する不特定の債権を担保する点が大きく異なります。
棍抵当権の設定時には以下の要素を定める必要があります。
この仕組みにより、銀行と企業間での事業資金調達において、借入の都度登記を行う必要がなく、効率的な資金調達が可能となります。
抵当権は、債務者または第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利です。住宅ローンの際に最も多く使用される担保権であり、以下の特徴があります:
抵当権設定登記には、担保する債権を限定するため、契約の日付・種類・金額・返済期・利率等の債権の詳細が記載されます。これにより、設定内容が明確に特定され、それ以外の債権は担保しないという仕組みになっています。
棍抵当権の登記は、抵当権とは異なる特徴的な記載内容があります。抵当権の場合、「原因」欄には債権設定の経緯が詳細に記載されますが、棍抵当権では設定の日付のみが記載されます。
登記事項の比較表は以下の通りです。
項目 | 抵当権 | 棍抵当権 |
---|---|---|
原因欄 | 債権設定の詳細経緯 | 設定日付のみ |
債権額 | 具体的な金額を記載 | 極度額を記載 |
債権の範囲 | 特定債権のみ | 債権の種類を記載 |
極度額の設定においては、一般的に予想される債権額の上限額を設定しますが、上限いっぱいまで貸すことは少なく、予想債権額を大幅に上回る設定もありません。実務では、不動産の担保価値を慎重に算出し、適切な極度額を設定することが重要です。
抵当権と棍抵当権では、優先弁済を受けられる範囲に大きな違いがあります。抵当権では、担保の原因となる債権の元本および最後の2年間分の利息・損害金についてのみ優先弁済を受けることができます。
一方、棍抵当権では極度額の範囲内であれば、利息および遅延損害金の期間制限がありません。例えば、100万円の貸付に対して極度額1,000万円の場合、理論的には900万円分の利息および遅延損害金を受けることが可能です。
連帯債務者の取り扱いについても相違があります。
このため、棍抵当権では債務者本人のみが返済義務を負い、連帯保証人を立てる場合は別途保証契約が必要となります。
棍抵当権には「元本確定」という特殊な手続きがあります。元本確定とは、これ以上新たな取引をしないことを前提に債権額を確定させる手続きで、債権を回収するための予備的措置として位置付けられています。
元本確定が行われると、棍抵当権は抵当権と同様の性質に変わります。確定期日をもって担保する債権が具体的に確定し、それ以降の債権は担保しなくなります。ただし、確定した元本に対する利息や損害金は、元本確定後に発生するものでも極度額までは優先弁済の対象となります。
実務での活用場面は以下の通りです。
民法第398条の2から第398条の22までに棍抵当権の詳細な規定が定められており、不動産従事者は これらの法的根拠を理解しておく必要があります。