
鉱業権とは、鉱業法に基づき、一定の区域において鉱物のある地層から鉱物を採掘し、取得することができる権利です。この権利は、許可を受ければ直ちに成立するものではなく、鉱業原簿という台帳に登録されて初めて効力を発揮します。鉱業権は、期間に限定のない「採掘権」と期間が限定されている「試掘権」の二種類によって構成されています。
参考)https://www.tohoku.meti.go.jp/s_shigen_ene/kougyo/about.html
鉱業権の性質として重要なのは、土地所有権とは別個の独立した権利であることです。つまり、土地の所有者であっても、鉱業権がなければ地下資源を採掘することはできません。一方で、鉱業権者が鉱業を実施する際は、土地使用の権利を別途取得する必要があります。
参考)https://www.hkd.meti.go.jp/hoknk/info_kougyo/outline.htm
日本の鉱業法では「無主の鉱物は国に属する」という大陸法系の法体制を採用しており、これにより国が鉱業権を特定の者に免許するという仕組みになっています。鉱業権は先願主義(早い者勝ち)を採用しており、同一地域では二重の設定はできません。
参考)https://oilgas-info.jogmec.go.jp/termlist/1000652/1000670.html
採掘権は、鉱業権の一種類で、本格的な採掘事業を行うための権利です。登録を受けた一定の区域(鉱区)において、登録を受けた鉱物およびこれと同種の鉱床中に存在する他の鉱物を採取し、取得する権利として定義されています。
参考)https://oilgas-info.jogmec.go.jp/termlist/1000769/1000777.html
採掘権の最も大きな特徴は、無期限の権利であることです。存続期間の定めがなく、放棄するか取消されるまで存続します。これは試掘権が2年間(石油の場合は4年間)という期間制限があることとは対照的です。
参考)https://www.weblio.jp/content/%E6%8E%A1%E6%8E%98%E6%A8%A9
採掘権が成立するためには、その区域における目的とする鉱物の量や品位等から見て商業ベースに乗るだけの採掘に適するものであることが前提となります。このため通常は、まず試掘権を設定してボーリング等の探鉱・試掘を行い、採掘に適するだけの鉱物の量や品位等があるかを調査した上で採掘権を取得するのが一般的な流れです。
参考)https://note.com/hideki_mizunaga/n/naad3a819d886
鉱業権には、試掘権と採掘権の2種類があります。試掘権は、鉱物の探査(鉱物の有無、品質、鉱量、稼行の適否等の調査探鉱)をするための権利で、採掘権の準備的行為として位置づけられています。
参考)https://www.tohoku.meti.go.jp/s_shigen_ene/kougyo/seido.html
試掘権の特徴。
参考)https://kotobank.jp/word/%E9%89%B1%E6%A5%AD%E6%A8%A9-61752
採掘権との法的取り扱いの違いとして、採掘権は抵当権や租鉱権を設定できること、鉱区の分割・合併が可能であること、採掘権者には土地の収用が認められることなどが挙げられます。また、出願手数料や登録免許税、鉱区税などが試掘権のほぼ倍額となっています。
不動産取引や土地開発において、鉱業権の存在は重要な確認事項となります。鉱業権が設定されている土地であっても、地上権と鉱業権は別個の権利であるため、土地所有者が宅地等を造成するための切土・盛土等は土地所有権に基づいて単独で行うことができます。
しかし、鉱業権者が鉱業を実施する場合、土地の表面を使用する権利を土地所有者から取得する必要があり、これが土地利用に制約を与える可能性があります。特に宅建業者が関与する不動産取引では、鉱業権の存在により将来的な土地利用に影響が生じる可能性を買主に説明する義務があります。
現在の日本国内で目に見えて分かる鉱業権設定場所は石灰石鉱山です。過去に鉱山があった場所などには現在でも鉱業権が設定されている場合があり、鉱業権の設定状況は鉱業原簿と鉱区図の閲覧により確認できます(有料)。
また、鉱業権が設定されている区域であっても、鉱物ではなく岩石を採取する場合には、採石法に基づく都道府県知事の許可が必要となります。
鉱業権の理解を深める上で重要なのが租鉱権制度です。租鉱権とは、設定行為に基づき、他人の鉱区において鉱業権の目的となっている鉱物を掘採し、取得する権利です。これは採掘権の鉱区の一部で、採掘権者と契約した第三者が設定できる権利です。
参考)https://chester-tax.com/academy/blog/hyouka/%E7%A7%9F%E9%89%B1%E6%A8%A9%E3%81%AE%E8%A8%AD%E5%AE%9A%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E9%89%B1%E5%B1%B1%E3%81%AE%E9%89%B1%E6%A5%AD%E6%A8%A9%E3%81%AE%E7%9B%B8%E7%B6%9A%E7%A8%8E%E8%A9%95-14692
租鉱権は主として残鉱の掘採を経済的・合理的に行うために設定される権利で、鉱業法上の規制は採掘権と同様に適用されます。存続期間は10年を限度として、1回(5年限度)の延長が可能です。
この制度により、採掘権者が全ての鉱物を採取しきれない場合でも、第三者が効率的に残存鉱物を活用できるようになっています。不動産関係者にとっては、土地に設定されている権利関係がより複層的になる可能性があることを理解しておく必要があります。
東北経済産業局の鉱業権に関する詳細な解説
九州経済産業局による鉱物資源と鉱業権の包括的説明
北海道経済産業局の鉱業権手続きに関する実務情報