

民事再生法と会社更生法は、経済的窮境にある企業の再建を目指す法的手続きですが、適用対象が大きく異なります 。民事再生法は株式会社、有限会社、学校法人、宗教法人、医療法人、さらには個人事業主まで幅広い主体が利用できる制度です 。一方、会社更生法は株式会社のみを対象とした法律であり、特に上場企業や大企業での利用が想定されています 。
参考)https://www.saisoncard.co.jp/credictionary/law/minji_63.html
個人民事再生制度も存在し、住宅ローン以外の債務免除を受けながら住宅を維持できる制度として活用されています 。会社更生法の適用事例として、日本航空(JAL)やエルピーダメモリなどの大企業における再建手続きがあげられます 。申立要件についても、民事再生法は支払不能や債務超過の「おそれ」があれば申立可能である一方、会社更生法は破産手続開始の原因となる事実が生じる「おそれ」がある場合に申立てができます 。
参考)https://biz.moneyforward.com/ma/basic/422/
民事再生法の最大の特徴は、現経営陣が原則として経営権を維持できる点です 。債務者(再生債務者)自らが手続きを進めることができ、財産の処分や再生計画案の作成も既存の経営陣が行います 。ただし、裁判所により監督委員が選任され、一定の行為については監督委員の同意が必要となります 。
参考)https://keiyaku-watch.jp/media/hourei/minji-saisei/
監督委員は通常、民事再生などの手続き経験が豊富な弁護士から選任され、債務者の財産処分や借入行為などを監督します 。経営陣が不適当な行為を行った場合、経営権が管財人に引き継がれる可能性もあるため、監督委員との連携が重要です 。この制度により、迅速な意思決定と事業継続が可能となり、中小企業に適した手続きとして位置づけられています 。
参考)https://www.daylight-law.jp/debt/qa/qa154/
会社更生法では、手続き開始と同時に現経営陣の退任が原則となり、裁判所が選任した更生管財人が経営権を取得します 。更生管財人は会社の財産管理処分権を持ち、更生計画案の作成・提出も行います 。これは経営責任を明確化し、利害関係者への公平性を確保するための制度設計です 。
更生手続き開始前には保全管理人が選任され、会社の財産を維持・管理します 。更生管財人による強いリーダーシップのもとで事業再建が進められるため、抜本的な事業構造改革が可能となります 。日本航空の再建事例では、更生管財人による徹底的な組織改革と事業構造見直しにより、2012年に東京証券取引所第一部への再上場を果たしました 。債権者・株主の利害調整が複雑な大企業においては、この管財人制度が有効に機能します 。
手続期間においては、民事再生法が約6ヶ月程度で完了するのに対し、会社更生法は数年を要するケースが多くなっています 。民事再生法は中小企業を想定して制定されており、利害関係者が少ないため迅速な手続きが可能です 。一方、会社更生法は大企業の複雑な利害関係を調整するため、厳格かつ時間をかけた手続きが必要となります 。
費用面では、民事再生法の予納金が負債額5,000万円未満で200万円からスタートするのに対し、会社更生法は負債額10億円未満でも800万円(自己申立て)と高額になります 。これは手続きの複雑さと期間の長さを反映したものです 。弁護士費用についても、会社更生法の方が専門性と期間の長さから高額となる傾向があります 。企業規模と経営状況に応じた適切な手続き選択が重要です 。
民事再生法では、担保権者は原則として別除権として担保権を自由に行使できます 。これは債権者による競売手続きなどが可能であることを意味し、担保権の実行を完全に制限することはできません 。ただし、事業継続に必要な財産の散逸を防ぐため、担保競売手続きの中止命令や担保権消滅許可制度などの手立ても講じられています 。
債権者との関係では、再生計画案が債権者集会で可決されるため、債権者の理解と協力が不可欠です 。可決要件は債権者数の過半数かつ債権額の2分の1以上の同意が必要であり 、金融機関をはじめとする主要債権者への説明と納得が重要になります 。債権者説明会の開催により、謝罪・再生計画の説明・取引継続の依頼を行うケースが一般的です 。