利息制限法の上限と遅延損害金の計算方法

利息制限法の上限と遅延損害金の計算方法

利息制限法における上限金利と遅延損害金について、金額別の上限利率や計算方法、個人と業者の違いまで詳しく解説します。不動産関連の契約で適切な利率設定を行うためのポイントとは?

利息制限法の上限と遅延損害金

利息制限法の上限と遅延損害金のポイント
📊
上限利率の区分

元本額により20%、18%、15%に分かれる

⚖️
遅延損害金の制限

上限利率の1.46倍が原則上限

🏢
業者の特例

営業的金銭消費貸借は年20%が上限

利息制限法における上限利率の基本構造

利息制限法は、金銭消費貸借における利息の上限を元本額に応じて3段階に区分して定めています。具体的には、元本が10万円未満の場合は年20%、10万円以上100万円未満の場合は年18%、100万円以上の場合は年15%となっています。これらの制限を超える利息の契約は、その超過部分について無効とされます。
参考)https://hourei.net/law/329AC0000000100

 

この法律は昭和29年に制定され、債務者の保護を目的として設けられました。利息制限法第1条では、金銭を目的とする消費貸借における利息の契約について明確に規定しており、この上限を超える部分は法的に無効となります。
参考)https://www.daylight-law.jp/debt/qa/qa126/

 

宅建業者が関わる不動産売買における手付金や中間金の貸付でも、この利息制限法の適用を受けるため、適切な利率設定が重要です。
参考)https://jichitai-unit.ne.jp/dcms_media/other/%E5%88%A5%E5%86%8A%20%E8%B2%A1%E6%94%BF%E6%B3%95%20%E7%AC%AC%EF%BC%94%E9%83%A8.pdf

 

遅延損害金の上限利率と計算の仕組み

遅延損害金とは、債務者の支払いが遅れた際に発生する損害賠償金のことで、利息制限法第4条により上限が定められています。原則として、遅延損害金の上限利率は利息制限法第1条の上限利率の1.46倍となります。
具体的な計算では、元本10万円未満の場合は年29.2%(20% × 1.46)、10万円以上100万円未満の場合は年26.28%(18% × 1.46)、100万円以上の場合は年21.9%(15% × 1.46)となります。
参考)https://kubotaoffice.com/keiyaku-risoku.html

 

計算方法は「遅延損害金 = 元金残高 × 遅延損害金利率 × 遅延日数 ÷ 365日」の式で求められます。例えば、100万円の債務で利率14.6%、遅延日数100日の場合、100万円 × 14.6% ÷ 365 × 100日 = 4万円となります。
参考)https://www.mizukilaw.com/personal/debt/delayed-damages-14-6/

 

営業的金銭消費貸借における利息制限法の特例

債権者業として行う金銭消費貸借(営業的金銭消費貸借)については、平成18年の改正により特別な規定が設けられました。貸金業者や銀行などの金融業者による貸付の場合、遅延損害金の上限は一律年20%に制限されます。
この特例は、個人が金融業者から借り入れる場合だけでなく、法人が金融業者から借り入れる場合にも適用されます。営業的金銭消費貸借かどうかの判断基準は、貸し手が業務として貸付を行っているかどうかにあります。
一方、個人間の借金など非営業的な金銭消費貸借では、従来通り利息制限法第1条の上限利率の1.46倍が適用されます。

利息制限法違反時の法的効果と過払い金

利息制限法の上限を超える利息を支払った場合、超過部分は法的に無効となり、支払った金額は元本の返済に充当されます。この仕組みにより、制限利率を超えた利息を長期間支払い続けた場合、元本を完済してもなお支払いを続けることで「過払い金」が発生します。
参考)https://www.yokkaichi-bengoshi.com/kabaraikin/

 

過払い金返還請求では、利息制限法所定の利率で「引き直し計算」を行い、本来支払う義務のない分を明確にします。貸金業者は利息制限法に違反していたことを認識していたとみなされるため、過払い金には年5%の利息を付けて請求することが可能です。
参考)https://sapporo.adire.jp/column/1970/

 

宅建業者が関わる不動産取引においても、適切な利率設定を怠り利息制限法に違反した場合、同様の法的リスクが発生する可能性があります。

不動産業界における利息制限法の実務上の注意点

宅建業者が不動産売買の仲介や売主として活動する際、買主への資金融通を行う場合があります。この際、利息制限法の適用を受けるため、貸付金額に応じた適正な利率設定が必要です。
登記手続きや決済までの期間に生じる中間金の貸付についても、利息制限法の規制対象となります。個人間の貸し借りであっても、業として行う場合は営業的金銭消費貸借とみなされ、より厳しい制限を受ける可能性があります。
参考)https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00008.html

 

契約書作成時には、遅延損害金の利率についても適切に記載することが重要です。利息制限法の上限を超える約定は無効となるため、法定範囲内での設定を心がけ、紛争予防に努める必要があります。また、宅建業者は顧客に対して利息制限法の内容について適切に説明し、法令遵守の徹底を図ることが求められます。