災害危険区域とレッドゾーンの基本知識
災害ハザードエリアの区分
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災害レッドゾーン
災害危険区域、土砂災害特別警戒区域、地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域に指定された区域
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浸水ハザードエリア等
浸水想定区域、土砂災害警戒区域、都市洪水想定区域、津波浸水想定区域などに指定された区域
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規制の目的
新規立地の抑制、危険区域からの移転促進、防災まちづくりの推進
災害危険区域とレッドゾーンは、近年増加している自然災害から人命を守るために設けられた区域指定制度です。特に土砂災害は、1999年6月の広島豪雨災害で24名の犠牲者が出たことをきっかけに、土砂災害防止法が策定されました。この法律に基づいて、現在は都道府県が土砂災害警戒区域(イエローゾーン)と土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)の指定を進めています。
災害ハザードエリアは大きく「災害レッドゾーン」と「浸水ハザードエリア等」に分類されます。災害レッドゾーンには、災害危険区域、土砂災害特別警戒区域、地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域が含まれます。一方、浸水ハザードエリア等には、浸水想定区域、土砂災害警戒区域、都市洪水想定区域、津波浸水想定区域などが含まれます。
国土交通省の発表によると、全国のレッドゾーンは約55万ヶ所(2021年3月時点)にも上ります。これらの区域は、土砂災害が発生した場合に、建築物の損壊が生じ、住民の生命や身体に著しい危害が生じるおそれがあると認められる区域です。
災害危険区域とレッドゾーンの指定基準
災害危険区域やレッドゾーンの指定には、具体的な基準が設けられています。土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)は、「急傾斜の崩壊に伴う土石等の移動等により建築物に作用する力の大きさが、通常の建築物が土石等の移動に対して住民の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれのある崩壊を生ずることなく耐えることのできる力を上回る区域」と定義されています。
具体的な指定基準としては、以下のような条件があります:
- 土石流に関する基準:
- 土石流の発生のおそれのある渓流において、扇頂部から下流で勾配が2度以上の区域
- 地滑りに関する基準:
- 地滑り区域(地滑りしている区域または地滑りするおそれのある区域)
- 地滑り区域下端から、地滑り地塊の長さに相当する距離(250mを超える場合は250m)の範囲内の区域
- 地滑りについては、地滑り地塊の滑りに伴って生じた土石等により力が建築物に作用した時から30分間が経過した時において建築物に作用する力の大きさとし、地滑り区域の下端から最大で60m範囲内の区域
- がけ崩れ(急傾斜地の崩壊)に関する基準:
- 急傾斜地(傾斜度が30度以上の土地)で高さが5m以上の区域
- 急傾斜地の上端から水平距離が10m以内の区域
- 急傾斜地の下端から急傾斜地の高さの2倍(50mを超える場合は50m)以内の区域
これらの基準に該当する区域は、土砂災害のリスクが高いとして、レッドゾーンに指定される可能性があります。
土砂災害特別警戒区域の規制内容と制限
土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)に指定されると、様々な規制や制限が適用されます。これらの規制は、住民の安全を確保するとともに、新たな災害リスクの拡大を防ぐことを目的としています。
レッドゾーンにおける主な規制内容は以下の通りです。
- 特定開発行為の許可制:
- 自己用以外の住宅(住宅分譲、マンション、社員住宅)の建築
- 要配慮者利用施設(幼稚園、老人ホーム、病院など)の建築
- これらの開発行為を行う場合は、あらかじめ都道府県の許可を受ける必要があります
- 建築物の構造規制:
- 住宅の新築や改築には建築確認が必要
- 建築物が土石等の移動により想定される力に対して破壊が生じない構造であるかどうかの審査が行われます
- 宅地建物取引における規制:
- 特定開発では、都道府県の許可後でなければ住宅の広告や売買契約を結ぶことができません
- 宅地建物取引業者は、当該宅地または建物の売買等にあたり、特別警戒区域内であること、特定開発行為の許可について重要事項説明を行うことが義務付けられています
- 市街化調整区域における開発規制:
- 2024年4月1日から施行された都市計画法の一部改正により、災害レッドゾーンでの開発行為は原則禁止となりました
- 従来は規制の対象外だった自己業務用施設(店舗、オフィス、病院、社会福祉施設、旅館、工場など)も規制対象となりました
これらの規制は、災害リスクの高い区域での無秩序な開発を防ぎ、住民の安全を確保するための重要な措置です。
災害危険区域における宅建業者の重要事項説明義務
宅地建物取引業者には、災害危険区域やレッドゾーンに関する重要事項説明義務が課せられています。これは宅地建物取引業法第35条に基づくもので、取引の安全と購入者等の利益を保護するための重要な責務です。
宅建業者が説明すべき主な事項は以下の通りです。
- 区域指定の有無と種類:
- 取引対象物件が土砂災害警戒区域(イエローゾーン)内にあるか
- 土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)内にあるか
- その他の災害危険区域内にあるか
- 特定開発行為の許可状況:
- レッドゾーン内での特定開発行為の許可の有無
- 許可を受けている場合はその内容
- 建築規制の内容:
- 区域内での建築に関する規制の内容
- 建築物の構造規制に関する情報
- ハザードマップ等の情報提供:
- 物件周辺の災害リスクを示すハザードマップの情報
- 避難場所や避難経路に関する情報
これらの説明を怠った場合、宅建業者は業務停止などの行政処分を受ける可能性があるほか、民事上の責任を問われることもあります。特に2025年以降は、災害リスクに関する説明義務がさらに強化される傾向にあるため、宅建業者は最新の法令や区域指定状況を常に把握しておく必要があります。
宅建業者の災害リスク説明義務に関する詳細情報
レッドゾーン内の物件購入時の注意点と対策
レッドゾーン内の物件を購入検討する際には、様々な注意点があります。宅建業者としては、これらの点を顧客に適切に説明し、リスクを理解した上での判断を促すことが重要です。
購入検討時の主な注意点と対策は以下の通りです。
- 保険加入の制限:
- レッドゾーン内の物件は、火災保険の地震・水害特約などに加入できない場合や、保険料が割高になる場合があります
- 事前に複数の保険会社に見積もりを取り、加入可能な保険の内容と保険料を確認することが重要です
- 融資条件の確認:
- 金融機関によっては、レッドゾーン内の物件に対する住宅ローンの融資を制限したり、条件を厳しくしたりする場合があります
- 購入前に複数の金融機関に融資可能性を確認することをお勧めします
- 将来的な売却時の影響:
- レッドゾーン指定は将来的な売却時の価格や売却のしやすさに影響する可能性があります
- 長期的な資産価値の変動リスクを考慮する必要があります
- 防災対策の検討:
- 土砂災害に備えた建物の補強工事や擁壁の設置など、追加的な防災対策が必要になる場合があります
- これらの対策にかかる費用も含めて購入判断をすることが重要です
- 避難計画の作成:
- レッドゾーン内に居住する場合は、災害時の避難計画を事前に作成しておくことが重要です
- 最寄りの避難所の場所や避難経路、災害時の連絡方法などを確認しておきましょう
宅建業者としては、これらの注意点を購入検討者に丁寧に説明し、適切な判断ができるよう支援することが求められます。また、最新の区域指定状況や法令改正の動向を常に把握し、正確な情報提供ができるよう努めることが重要です。
災害危険区域とレッドゾーンの最新動向と法改正
災害危険区域やレッドゾーンに関する制度は、近年の自然災害の増加や激甚化を受けて、継続的に見直しや強化が行われています。宅建業者は、これらの最新動向を把握し、業務に反映させることが重要です。
2024年以降の主な動向と法改正は以下の通りです。
- 都市計画法の一部改正(2024年4月1日施行):
- 災害レッドゾーンでの開発行為が原則禁止となりました
- 従来は規制対象外だった自己業務用施設(店舗、オフィス、病院、社会福祉施設、旅館、工場など)も規制対象に
- 市街化調整区域における条例区域の指定においても、災害レッドゾーンおよび浸水ハザードエリアを含めることが禁止されました
- 防災・減災のための国土強靱化基本計画の推進:
- 国土強靱化基本計画に基づき、災害リスクの高い区域からの移転促進策が強化されています
- 防災集団移転促進事業や がけ地近接等危険住宅移転事業などの支援制度が拡充されています
- ハザードマップの高度化と普及促進:
- より精緻な災害リスク情報を提供するため、ハザードマップの高度化が進められています
- 不動産取引時におけるハザードマップ等の活用促進のための施策が強化されています
- 宅建業者の説明義務の強化:
- 災害リスク情報に関する宅建業者の説明義務が段階的に強化されています
- 重要事項説明におけるハザードマップ等の活用が義務化される方向で検討が進んでいます
- 災害危険区域の指定拡大:
- 近年の災害発生状況を踏まえ、新たな災害危険区域やレッドゾーンの指定が進められています
- 全国的に見ると、指定区域は増加傾向にあります
これらの動向は、宅建業務に直接的な影響を与えるものであり、常に最新情報を収集し、適切に対応することが求められます。特に、法改正後の移行期間中は、旧制度と新制度の違いを正確に理解し、顧客に適切な説明ができるよう準備しておくことが重要です。
国土交通省による都市計画法改正の概要資料
災害危険区域における不動産価値と資産防衛策
災害危険区域やレッドゾーンの指定は、不動産の価値に大きな影響を与える可能性があります。宅建業者としては、これらの影響を理解し、顧客に適切なアドバイスを提供することが重要です。
災害危険区域指定が不動産価値に与える影響と資産防衛策は以下の通りです。
- 不動産価値への影響:
- レッドゾーン指定により、物件価格が10〜30%程度下落するケースがあります
- 特に新規開発や建替えに制限がある場合、価格下落の影響が大きくなる傾向があります
- 一方で、防災工事が完了している地域では、価格下落が軽微なケースもあります
- 既存不適格建築物の扱い:
- 区域指定前に建築された建物は「既存不適格建築物」として扱われ、そのまま使用することは可能です
- ただし、大規模な改修や建替えの際には新たな規制に適合させる必要があり、追加コストが発生する可能性があります
- 資産価値を守るための対策:
- 土砂災害対策工事(擁壁の設置、法面保護工事など)の実施
- 建物の構造強化(鉄筋コンクリート造への変更、基礎の補強など)
- 災害保険の見直しと適切な補償内容の確保
- 行政の支援制度(住宅・建築物安全ストック形成事業など)の活用
- 売却時の戦略:
- 区域指定の内容と実際のリスクの違いを明確に説明できる資料の準備
- 実施済みの防災対策