専属専任媒介契約宅建業法規制報告義務

専属専任媒介契約宅建業法規制報告義務

専属専任媒介契約は宅建業法で最も厳格な規制がある媒介契約です。契約期間、報告義務、レインズ登録など宅建業者が守るべき法的要件を詳しく解説し、違反リスクも含めて実務で注意すべきポイントをお伝えします。

専属専任媒介契約の宅建業法規制

専属専任媒介契約の主要規制
📅
契約期間制限

宅建業法により契約期間は3ヶ月以内に限定され、自動更新特約は無効

📊
報告義務

業務処理状況を1週間に1回以上依頼者に報告する法的義務

🏢
レインズ登録

契約締結後5営業日以内に指定流通機構への登録が必須

専属専任媒介契約の契約期間と更新規制

専属専任媒介契約における契約期間は、宅建業法第34条の2第3項により3ヶ月以内に厳格に制限されています。この規制は依頼者保護の観点から設けられており、宅建業者が長期間にわたって依頼者を拘束することを防ぐ重要な役割を果たしています。

 

契約期間に関する重要なポイント。

  • 3ヶ月を超える契約部分は無効:仮に4ヶ月や6ヶ月の契約を締結したとしても、3ヶ月を超える部分のみが無効となり、契約全体が無効になるわけではありません
  • 自動更新特約の禁止:「有効期間満了日において依頼者からの更新拒絶の申出がなければ自動更新される」旨の特約は無効です
  • 更新は依頼者の申出が必要:契約の更新は依頼者からの申し出があった場合にのみ認められ、宅建業者から一方的に更新を求めることはできません
  • 更新後の期間も3ヶ月以内:更新した場合の有効期間も3ヶ月以内となります

この期間制限により、宅建業者は限られた時間内で積極的な販売活動を行う必要があり、依頼者も定期的に契約内容を見直す機会を得ることができます。

 

専属専任媒介契約の報告義務と頻度

専属専任媒介契約では、宅建業法第34条の2第9項により、宅建業者に対して1週間に1回以上の業務処理状況の報告義務が課されています。これは3種類の媒介契約の中で最も厳しい報告頻度となっています。

 

報告義務の詳細。

  • 報告頻度:1週間に1回以上(休業日も含む)
  • 報告方法:電子メール、口頭、文書のいずれでも可能
  • 報告内容:業務の処理状況、販売活動の進捗など

専任媒介契約との比較

  • 専任媒介契約:2週間に1回以上
  • 専属専任媒介契約:1週間に1回以上

また、売買の申し込みがあった場合は、遅滞なくその旨を依頼者に報告しなければなりません。この申し込み報告義務は一般媒介契約にも適用される重要な義務です。

 

報告義務違反のリスク。
宅建業者が報告義務を怠った場合、依頼者からの信頼失墜だけでなく、業法違反として行政処分の対象となる可能性があります。特に専属専任媒介契約では依頼者の拘束が強いため、適切な報告による透明性の確保が法的に求められています。

 

専属専任媒介契約のレインズ登録義務

専属専任媒介契約では、宅建業法第34条の2第5項および宅建業法施行規則第15条の10により、契約締結後5営業日以内指定流通機構(レインズ)への登録が義務付けられています。

 

レインズ登録の詳細。

  • 登録期限:契約締結後5営業日以内
  • 専任媒介契約との違い:専任媒介契約は7営業日以内
  • 登録内容:物件情報、価格、条件等の詳細情報

登録義務の意義
レインズ登録により、他の宅建業者も物件情報を閲覧できるようになり、より多くの購入希望者にアプローチすることが可能になります。これは依頼者にとって売却機会の拡大につながる重要な制度です。

 

登録期限の計算方法。

  • 営業日のカウント:土日祝日は除外して計算
  • 契約締結日を起算日:契約成立日の翌営業日から起算
  • 期限日の考え方:5営業日目の営業時間内に登録完了が必要

登録義務違反の影響。
期限内にレインズ登録を行わなかった場合、宅建業法違反として行政処分の対象となります。また、依頼者から適切な販売活動を行っていないとして契約解除や損害賠償請求を受けるリスクもあります。

 

専属専任媒介契約の自己発見取引制限

専属専任媒介契約では、依頼者が自ら買主を見つけて直接契約することが禁止されています。これは他の媒介契約との大きな違いであり、依頼者に最も強い拘束を課す特徴です。

 

自己発見取引制限の詳細。
契約種別による比較

  • 一般媒介契約:自己発見取引可能
  • 専任媒介契約:自己発見取引可能
  • 専属専任媒介契約:自己発見取引不可

制限の理由
宅建業者が積極的な販売活動を行うインセンティブを確保するため、依頼者は必ず契約した宅建業者を通じて取引を行う必要があります。

 

実務上の注意点

  • 依頼者が知人や親族等に物件を紹介する場合でも、必ず宅建業者を介した取引が必要
  • 直接取引を行った場合は契約違反となり、違約金の支払い義務が発生
  • 宅建業者は依頼者に対して制限内容を十分に説明する義務

例外的なケース
一般的に、契約締結前から依頼者が交渉していた相手方については、契約書に明記することで自己発見取引の対象外とする場合があります。この点は契約締結時に明確にしておくことが重要です。

 

専属専任媒介契約違反時の違約金リスク

専属専任媒介契約では、依頼者と宅建業者双方に違約金のリスクが存在します。特に依頼者側の契約違反については、約定報酬額に相当する金額の違約金を請求される可能性があります。

 

依頼者の契約違反パターン

  • 他の宅建業者への重複依頼:複数の業者に同時に媒介を依頼する行為
  • 自己発見取引の実施:宅建業者を介さずに直接契約を行う行為
  • 正当な理由のない一方的な契約解除:宅建業者に落ち度がないにも関わらず契約を解除する行為

違約金の計算方法

  • 基本的には約定報酬額(仲介手数料)と同額
  • 売買価格の3%+6万円(税別)が上限となるケースが多い
  • 契約書に具体的な違約金額が明記される場合もある

宅建業者側の違反リスク

  • 報告義務違反:定期報告を怠った場合
  • レインズ登録義務違反:期限内に登録を行わなかった場合
  • 善管注意義務違反:適切な販売活動を行わなかった場合

違約金を回避するための対策

  • 契約内容を十分に理解してから締結する
  • 疑問点は契約前に必ず確認する
  • やむを得ない事情がある場合は早めに相談する
  • 宅建業者の義務履行状況を定期的にチェックする

実務での留意点
宅建業者は依頼者に対して契約の拘束力や違約金について十分に説明し、理解を得ることが重要です。また、依頼者の都合による契約解除の場合でも、合理的な理由があれば違約金を減額または免除することで、長期的な信頼関係を築くことができます。

 

専属専任媒介契約は最も拘束力の強い契約形態ですが、その分、宅建業者には高い専門性と責任が求められます。法的義務を適切に履行し、依頼者との良好な関係を維持することが、成功する取引の鍵となります。